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【密なる自己対話#17】未来へ飛ぶ心の結び目

こんにちは。ピアノ講師・メンタルコーチの One Heart です。


この場所に立ち寄ってくださること。
スキやフォロー、マガジンへの追加など、それぞれのかたちで文章を受け取ってくださること。あらためて、ありがとうございます。


『密なる自己対話』では、いま「執着」というテーマについて書いています。


答えを急いで出すためでもなく、
正しい在り方を身につけるためでもなく、
いま、内側で起きていることに、そっと気づいていくための連載です。


今回のテーマは、未来への執着


まだ起きていないことなのに、
気づけば心だけが先にそこへ行ってしまう。
そんなことはありませんか?


そこまで強い不安として感じていなくても、
ふと先のことを考えて、心が少し落ち着かなくなる日もあるように思います。


未来のことを考えるのは、悪いことではないはずなのに、
考えすぎるほど、なぜか“いまここ”の自分が見えにくくなることがある。


まだ来ていない先のことに、心が引っぱられすぎてしまうと、
いま目の前にある時間や感覚が、少しずつ遠のいてしまうのかもしれません。


今回はそんな、
まだ来ていない明日に、心が少し結ばれてしまうときのことを、
静かに見ていきたいと思います。


✧✧✧


まだ起きていないことに、心はすぐ反応してしまう

わたしたちは、起きたできごとに反応するだけではなく、
まだ起きていないことにも、意外と大きく心を動かされています。


たとえば、少し先の予定。
返事を待っていること。
これからどうなるのか、まだわからないこと。


何かが実際に起きたわけではないのに、
頭の中ではもう何通りもの場面が始まっていて、
気づけば、それだけで少し疲れてしまうことがあります。


「こうなったらどうしよう」
「うまくいかなかったらどうしよう」
そんなふうに、心が先回りするのは、ある意味とても自然なことなのだと思います。


人によって中身は違っても、これからの暮らしのこと、身体のこと、家族のこと、仕事のこと、お金のことなど。
先のことをまったく考えずに生きるほうが、むしろ難しいのかもしれませんね。


だからこそ、
まだ何も起きていない段階で、心が反応してしまう。
それもまた、無理のない反応なのかもしれません。


未来に備えようとしていたはずなのに、
いつのまにか、未来に疲れている。


そんなことが、わたしたちには案外よくあるのかもしれません。


✧✧✧


未来を考えることと、未来に結ばれることは違う

先の予定を立てること。
必要な備えをしておくこと。
これからのことを見通そうとすること。


そうした行為そのものは、暮らしの中でとても大切なこと。


けれど、未来を見つめることと、
まだ来ていない未来に心を預けすぎてしまうことは、少し違います。


たとえば、予定を立てたあとも、頭の中で何度もその先をシミュレーションしてしまう。
今やるべきことより、まだ決まっていない先のことばかりが気になってしまう。


そんなふうに、未来を考える時間が、
ただの準備ではなく、心をしばるものになっていくことがあります。


執着という言葉を聞くと、
強い欲や、激しい感情を思い浮かべるかもしれませんが、
日常の中では、もっと静かで、もっと見えにくいかたちで現れることもあります。


まだ起きていないことなのに、
そこに気持ちが引っぱられ続けてしまう。


それもまた、ひとつの心の結び目なのかもしれません。


未来への執着は、未来を持つことではなく、
未来に心を握られすぎてしまうこと。


そう考えると、「先のことを考えてしまう自分はダメだ」と責めるよりも、
いま自分の心がどこに引っぱられているのかに、
静かに気づいていくことが大切なのだと思います。


✧✧✧


心が未来へ飛ぶと、“いまの自分”が少し留守になる

未来のことを考えているとき、
わたしたちの心は、まだ来ていない時間の中にいます。


もちろん、それ自体は自然なことで誰にでもあること。
先のことを思う力があるからこそ、備えることもできるし、暮らしを整えることもできます。


けれど、その時間が長くなりすぎると、
少しずつ“いまここ”とのつながりが薄くなっていくことがあります。


たとえば、目の前のことをしているのに、どこか上の空になっている。
休んでいるつもりなのに、頭の中では先のことがずっと動き続けている。
身体は今日を生きているのに、心だけが明日やその先へ行ったままのような感覚です。


そうなると、“いまの自分がどう感じているか”よりも、
“まだ起きていない何かがどうなるか”のほうに意識が向きつづけるんです。


不安は、できごとそのものよりも、
そのことを頭の中で何度も先回りしているうちに、大きくなっていくことがあります。


まだ何も起きていない。
でも、心の中ではもう何度も起きている。


そうやって未来の中で過ごす時間が増えるほど、
目の前にある小さな安心は見えにくくなっていきます。


脳は放っておくと、過去や未来へ飛びやすい。
飛ぶこと自体が悪いのではなく、飛んだまま、“いまの自分”から離れてしまうことが、しんどさにつながるのだと思います。


✧✧✧


大事なのは、飛ばないことではなく、戻れること

心は気づけば、すぐに未来へ飛んでいきます。
そういうもの、です。


「こうなったらどうしよう」
「この先、大丈夫だろうか」


そんなふうに先のことを考えるのは、
人として自然なはたらきなのだと思います。


だからこそ、未来へ飛んでしまう自分を責めすぎなくていいんです。


本当に大切なのは、飛ばないことではなく、
飛んだことに気づいて、戻れることなのだと思います。


「いま、自分は先のことを考えているな」
と気づけた瞬間、ほんの少しでも、今ここに戻る扉が開きます。


たとえば、ひと呼吸してみる。
足の裏が床に触れている感じに意識を向ける。
「いま、わたしはお茶を飲んでいる」
「いま、わたしは椅子に座っている」
そんなふうに、今していることを心の中で言葉にしてみる。


どれも、とても小さなことですが、こうした感覚は、
未来に引っぱられていた心を、少しずつ今へ連れ戻してくれます。


ここで大事なのは、不安をなくそうとしなくていい、ということです。


「考えないようにしよう」と力を入れるほど、
かえってそのことが頭から離れなくなることもあります。


そうではなくて、ああ、また心が先へ行っていたな。と、気づく。
そして、やさしく戻す。


そのくり返しでいいのだと思います。


差取りで書いてきたことも、結局はこの「気づいて戻る」ということにつながっています。


脳は過去や未来へ飛びやすい。
でも、飛んだことに気づいたら、
また“いまここ”へ戻ってくることができる。


それは特別なことではなく、
日々の中で何度でもできる、小さな自己対話なのかもしれません。


✧✧✧


未来を手放すのではなく、未来との距離を整える

何度も書いてきていますが、
これからのことを思う。
備える。
見通しを持つ。
そうしたことは、現実を生きるうえで自然なことですし、ときには必要なことです。


だから、「未来を考えることは執着だから、やめたほうがいい」と、
そんなふうに単純に言えるものではないのでしょう。


ただ、未来のことを思うたびに、心までそちらへ預けすぎてしまうと、
まだ来ていない時間に、今の自分が振り回されやすくなってしまいます。


未来そのものが苦しみをつくるのではなく、
未来との距離が近くなりすぎたときに、
心は少しずつ疲れていくのかもしれません。


だから必要なのは、未来を消すことではなく、
未来との距離を整えることなのだと思います。


先のことは気になる。
でも、そのことだけで心をいっぱいにしない。
まだ来ていないものに心を預けすぎず、
いまここにある時間にも触れていく。


そんなふうに、未来との距離が少し整うだけで、
心の息苦しさはやわらいでいくのかもしれません。


執着がゆるむというのは、何かを完全に手放すことではなく、
それに飲み込まれない位置に、自分を戻してあげることなのかもしれません。


✧✧✧


心はまた飛ぶ。でも、そのたびに戻ればいい

わたしたちの心は、これからもきっと未来へ飛んでいくのだと思います。


まだ起きていないことが気になったり、
先のことを考えて落ち着かなくなったり、
気づけば、明日やその先の時間の中に心が入り込んでいる。
そんなことは、きっと何度でもあります。


でも、それは失敗ではないのでしょう。


ここで何より大切なのは、飛ばないことではなく、
飛んだことに気づいて、また戻ること。


「いま、ここ」に戻る。
呼吸や身体の感覚に戻る。


その小さな積み重ねが、
未来に結ばれすぎた心を、少しずつほどいていくのだと思います。


もし今日、心がまた先へ行っていたとしても、
そのことに気づけたなら、もうそれだけで十分です。


そこからまた、静かに戻ってくれば大丈夫。


そしてもし、ほんの少し立ち止まれるなら、
ふと、こんなことを思ってみてもいいのかもしれません。


いま、あなたの心は、どこへ飛んでいますか?


✧✧✧


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