三題噺ショートショート_絶品
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「絶品」まいりましょうか。

仁は、途轍もなく速い球を投げた。
だが。
コントロールがカラッキシで。背番号はゾロ目の11番だった。
俺は正捕手だったが。仁の球のせいで左親指を骨折。ベンチ外になった。
マウンドにトンボをかけながら仁が言う。
「枕草子あんじゃん」
「あー」
「あれさぁ、季節ごとに好きなもの書いてんだけど。ぶっちゃけ、夏秋が夜で。冬春が早朝なんだよ」
「あ?」
「俺たちさぁ、いつも朝練から居残り練だろ。わかるんだよ。その季節の一番が、夜と早朝ってのが。清少納言って、野球部だったんじゃね?」
「んなわけねぇだろ」
仁はお袋さんを早くに亡くし。父ひとり子ひとりで。時々、ヤツの晩ご飯を食べさせてもらったが、これが無双の旨さで。
「お前、手先が器用なのに球の制御が効かんのは何故だ?」
そう、不思議がったものだ。
仁は大学を卒業し、一般企業に就職したものの。直ぐに弟子入りし、やがて料理人になった。
今日も仁の店にいる。
いつも同じもので締める。
思い出のたまご焼き、で。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?ヤスさんの?書いたの?また、下手くその?読みに来たみんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。


