三題噺ショートショート_ホームベース
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「ホームベース」まいりましょうか。

哲は、唯一無二のスピードスターだった。
哲の拘りは、絶対に塁に出て三塁までは必ず陥れること。そして、八割、生還することだった。
哲は、いつも言っていた。人生における3つの袋は、靴袋と手袋と胃袋だと。これがベストな走りのための全てなのだと。
四年秋のリーグの最終戦。優勝がかかった9回裏。同点でツーアウト、ランナー無し。
打席に入る哲に、監督が大声で言った。
「ホームまで帰ってこい!」
ミッションインポッシブルに、チーム全員が震え、そして、祈った。
哲は、2球で三塁まで陥れ。投げられた3球目、完璧なウエストボールを収めたキャッチャーミットは、哲に触れることすら無く、試合は終了した。
あれから何十年にもなる。
哲は華と結婚し、母校の監督をやっている。
華は女子マネの中では、本当に目立たない存在だったが、料理の腕は抜群らしい。
母校はこの前、大学選手権を四連覇した。
それでも哲は言う。
「通過点だよ。俺はまだ、一塁キャンバスを踏んでいるんだ」

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?ヤスさんの?書いたの?また、下手くその?読みに来たみんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

