ズル休み
半日有給を使って午後から会社を休んだ。
今年の夏前に私たち夫婦の一軒家が建つ予定だ。昨日は着工日だった。
せっかくなら、2人で午後から有給を取って、工事1日目の様子を見に行こう…!ということになった。
家を建てるなんてことは、もう二度とできないだろうしね。
私はまだ自分の家を持つことの実感がわかない。
結婚してからは、自分の足で生きてる心地がしなくなった。夫婦2人のことはどうしても自分事のような気がしない。
現在の賃貸の契約も、光熱費も、結婚式の契約も、今回の家の契約も。全部夫名義だ。
大事な契約の場には必ず私も立ち会うが、話し手が見ているのは、いつも夫のほう。
私はずっと彼らの目を見ているのに、目が一向に合わない。私だけが蚊帳の外。
結婚して初めて自分が女性であることを痛感した。
珍しいからと気に入っていた苗字も手放した。
妊娠や出産を意識した職場選び。
家事は女性が〜といった未だうっすら残る固定概念。
もちろん結婚して幸せだ。夫のことも大好きだ。
それとは別に、白く濁ったモヤモヤとした感情がいつも付き纏ってくる。
しかし、今の私は、そういう負の感情も、時間の流れとともに少しずつ回収できるようになってきた。つもりだ。
工事の様子を見てるのが楽しくて、しばらく見入ってしまった。私は昔から建築関係に縁があるが、家ができあがっていく様子を見るのは初めてだった。
職人さんってすごい。
私の気持ちみたいにでこぼこした土地が、みるみるうちに綺麗に整えられていく。
こんな風に人間の感情も簡単に整地できたらいいのに。
作業をしてくれていた職人さんに、「この作業は何のための作業なのか」を聞くと、今日は本格的な基礎工事をしやすくするための仮どめをしていたらしい。
工事は全ての工程に理由がある。
結婚に対する負の感情も「何かのため」なのだろうか。
工事1日目の様子を見届けて、私たちは近くのドトールに行った。最近私たちはドトールにハマっている。
私はブラックコーヒーは飲めない且つお腹が弱いので豆乳ラテ派だ。
いつもなら絶対に豆乳ラテを頼むが、今日は豆乳ティーにした。
新婚旅行を終えてから、ついに妊活が始まった。
現在絶賛妊活中だ。
毎朝基礎体温を測って、体の状態を確かめる。
子供がほしいから妊活を始めたのに、生理がきたら安心する。子供ができることも、子供を産むことも、産んだ後のことも、今は怖くてたまらない。
妊活中はカフェインはできるだけ控えた方がいいらしい。
だから今日は豆乳ティーだ。
あぁ…妊活、妊娠、出産に伴う制約が多すぎる。
まだ妊娠できたわけではないのに、不安ばかりが募る。
そんな中、夫は何の迷いもなくブラックコーヒーを頼んでいた。
あ、まただ。負の感情。回収できたはずの感情は、小さなきっかけによってすぐにまた顔を出す。
女性だけが大変なわけではないことはわかっている。
わかってるけど…
我慢してる私の前でブラックコーヒーを飲んでもいい。いいのだけれど…いいのだけれど…
よくないのだ……
私だけが寂しい。私だけが苦しい。
ふとした時に、そんな気分になる。
家が建ったら、私の気持ちも少しは追いついてくれるだろうか。覚悟が生まれるのだろうか。
そんなことを考えながら、豆乳ティーを飲む。
豆乳の柔らかな豆の香りが口いっぱいに広がる。
夫にこの気持ちを共有するべきか迷った。
しかし私は、平日のお昼過ぎ、ドトールで、2人ひとやすみしていることについて、
「なんかズル休みみたいだね」と笑った。
ドトールにいたのは、女子会で盛り上がっているマダムたちばかり。男性がいないのは、きっとみんな働いているから。
そう、女性だけが大変なわけではない。
女性特有の負の感情も、いつか夫に話せるようになるだろうか。
20代後半。迷っている。
迷っているけど、こんな感情も今しか味わえない。特別で大切な感情だ。
いつかこんなズル休みの話を夫としよう。
↓結婚生活のモヤモヤ
