宴会乾杯発声前待ち時間配布資料 その4
宴会が始まるまでの待ち時間、皆さまがお集まりになり、お飲み物が揃うまでの間に、ちょっとした読み物があればと思い、作成そして配布した資料を再編しました。これは、その宴会に集われる方々にふさわしいと信じる内容をまとめたものです。
「その4」は、2026年1月18日(日)開催の岡本篤彦コルネット・リサイタル終演後の宴会に向けて用意しました。
(札幌市中央区北1条西3丁目25 荒巻時計台前ビル 地下1階「海鮮個室酒場 伊まり 札幌駅時計台前店」)
響きの系譜:日本の吹奏楽がいかにして形作られたか
私たちが親しんでいる吹奏楽。その重厚で華やかな音色は、一体どこから来たのでしょうか。日本の吹奏楽の歴史を辿ると、それは異文化を吸収し、独自の感性へと昇華させてきたダイナミックな「融合の物語」であることがわかります。
1. 産声:横浜・妙香寺と薩摩バンド
日本の吹奏楽の出発点は、幕末から明治維新へと時代が激変する1869(明治2)年に遡ります。指導に当たったのは、イギリス海軍歩兵隊の軍楽隊長ジョン・ウィリアム・フェントン。そして、その門を叩いたのが「薩摩バンド」と呼ばれた薩摩藩の若者たちでした。横浜の妙香寺で始まった訓練は、五線譜すら知らない状態からのスタートでした。楽譜を読み、息を合わせ、隊として音を鳴らす。この「調和」の精神こそが、日本における西洋音楽受容の第一歩となりました。
2. 欧州の系譜:ハイブリッドな土壌の形成
明治政府が軍楽制度を本格的に整備する際、日本は特定の国に偏らず、欧州各国の音楽文化を貪欲に吸収しました。 陸軍ではフランスからダグロンやルルーを招き、合理的で体系的な教本を導入。吹奏楽を国家の「統制と教育」を象徴する制度音楽へと磨き上げました。一方、海軍ではドイツ出身のエッケルトが、厳格な構築美と音楽理論を伝えます。彼は国歌「君が代」の吹奏楽編曲も手がけ、日本の音楽文化に象徴的役割を果たしました。 イギリスの端緒に始まり、フランスの華やかさ、ドイツの堅牢さを飲み込んだ日本の吹奏楽は、世界でも類を見ない「ハイブリッドな音楽文化」として土台を築いたのです。
3. 転換点:戦後のアメリカ化と教育吹奏楽
しかし、第二次世界大戦を境に潮流は一変します。戦後、壊滅した軍楽隊に代わって流れ込んできたのは、ダイナミックな「アメリカ式吹奏楽」でした。 占領軍がもたらした明るく開放的なサウンドは、復興を目指す日本人に希望を与えました。1950年代以降、アメリカのスクールバンド・モデルが導入されたことで、主役は「軍」から「学校(教育)」へと移行します。現在、私たちがコンクールや演奏会で親しんでいる大編成の華やかなスタイルは、この戦後のアメリカ文化によって決定づけられたものなのです。
4. 歴史を知り、新しい音を選ぶ
現代の日本は世界有数の吹奏楽大国ですが、私たちが「標準」とする形は歴史の一断面に過ぎません。世界を見渡せば、サックスと金管が織りなすオランダの「ファンファーレオルケスト」や、金管のみで構成される英国の「ブリティッシュ・ブラスバンド」など、多様な編成が存在します。
先人たちが多様な音を受け入れてきたように、この重層的な歴史を知ることは、奏者に新しい「表現の選択肢」を与えてくれます。私たちが奏でる一音には、明治の情熱も、欧州の伝統も、戦後の希望も宿っています。その深さを意識することで、日本の吹奏楽はさらに豊かな可能性を切り拓いていくはずです。
ここまでが印刷・配布した内容
宴会の参加者は小学校の先生方でしたので、皆さんが日々取り組んでいるブラスバンド活動を、歴史的な大きな流れの中で捉えていただくことに意義があると考え、この資料をお配りしました。
コルネットリサイタルin Sapporo
本公演の主催実行委員会は、札幌市内の小学校スクールバンドを指導する先生方によって組織されています。岡本氏が札幌の小学生を対象とした金管楽器講習会の講師を務めているご縁から、今回のコルネットリサイタルの開催へと結びつきました。


岡本氏が北海道内でリサイタルを開催するのは今回で9回目となりますが、これまでは網走市・遠軽町・美幌町・女満別町といったオホーツク管内での開催が中心でした。そのため、札幌市での公演は今回が初めてとなります。
岡本氏とオホーツク地域とのご縁は、1995年にさかのぼります。ブージー&フォークス社のコルネット講師として、小学校・中学校・高等学校の各バンドにおいて、トランペットやコルネットをはじめとする金管楽器全般の指導に携わっていたことが始まりでした。
1999年以降は、網走(オホーツク)管内小学校管楽器研究会が主催する年1回の児童向け金管楽器講習会において、それぞれの講習会において唯一人の講師として指導にあたってきました。現在に至るまで、毎回それぞれ数十名に及ぶ小学生金管楽器奏者に基礎奏法を丁寧に伝え続け、オホーツクにおける金管楽器奏法の礎を築く重要な役割を果たしています。
近年、北海道スクールバンド連盟札幌支部での講習会も開催されるようになり、今回のリサイタル開催に結びつきました。今回の演奏会では、札幌支部の指導者の中の金管楽器奏者がスペシャルアンサンブルメンバーとして、コンサートを盛り上げました。
プログラム
第一部 コルネットとピアノ
「調子の良い鍛冶屋」による変奏曲 G.F.ヘンデル
Aria con Variazioni G.F.Handel / B.Fitzgerald
春の日の花と輝く アイルランド民謡
Believe me, if all those endearing young charms Traditional Irish / D.Hunsberger
コンサート・ワルツ T.ハンセン
Concert Waltz Thorvard Hansen
我が花は赤い薔薇の如く W.ウェルド
My love is like a red, red rose Traditional Scottish / William Welde
第二部
無伴奏コルネット
シランクス C.ドビュッシー
Cyrinx Claude Debussy
以下金管五重奏
メイド・オブ・ザ・ミスト H.L.クラーク
Maid of the Mist Herbert L. Clarke / D.Marlatt
金管五重奏のための組曲 E.グリーグ
Suite for Brass Quintet Edvard Grieg / Alan Civil
アンコール
金管五重奏+ピアノ
ホラ・スタッカート G.ディニク
Hora staccato Grigoraş Dinicu /
時計台ホール
札幌のシンボルである札幌市時計台の2階部分は、閉館後(17:30~21:00頃)にコンサート会場としても利用されています。
「札幌時計台」は明治11年(1878)に建築された旧札幌農学校(現北海道大学)の演武場で、クラーク博士の提案で建てられました。兵式訓練や式典に使われました。周囲のビルに囲まれているため、観光客に「がっかり」という声もありますが、現存する日本最古の時計塔であり、重要文化財にも指定されている歴史的価値は非常に高く、ライトアップされた夜景も観光客に人気です。


演奏会では、奏者がクラーク博士像に後方から見守ってもらいながら開催されます。
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