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海外から眺める「日本人ファースト」:ヨーロッパと日本のいま

日本で「日本人ファースト」を掲げる政党が登場。欧州ではここ10年ほど、移民や社会の分断を背景に右派ポピュリズムが広がっている。欧州の状況と日本の現状を軽く比べながら、参考になりそうなことはないかと思い、少し書いてみた。

まとめ

最近、びっくり。こっちのニュースで「日本にトランプ出現!? ジャパンファーストを叫ぶ政党出現」と耳にして、思わず二度聞きした。

その「参政党」、彼らの主張はこんな感じだ。

  • 「税金は日本人のために」

  • 「外国人、難民や移民より日本人を優先せよ」

  • 「外国に頼らず自給自足できる国を目指す」

さらに、主張は国民の個人選択にまで踏み込む。

  • 「日本人は結婚し、女性は国のために子を産むべし」

しかも、これを叫んでいるのは自分より若い政治家たち。第一印象はただ「え、この時代に日本でポピュリズム?」という驚きだった。

英ガーディアン紙による分析:右翼ポピュリズムの台頭は
日本の(米値)インフレや経済懸念に焦点があてられている

こういう主張は、すべてドイツの右翼ポピュリストAfD党や、同じくイギリスの右翼党Reform UKとそっくり。

AfD党のフェイク・フェミニズム」と題された国営放送サイトより引用
一見フェミ風、でも中身はあやしい | この保守的家族政策の結果はこのポストの終盤に。

上の写真は、2017年に批判を浴びたドイツ右翼AfD党のポスター「Neue Deutsche? Machen wir selber.(新しいドイツ人? 自分たちだけで作ろう)」。移民や外国人を拒み、ドイツ人女性に出産を促す排外的なメッセージ。また、女性の価値を母としての役割に限定。

また、この右翼による保守的家族政策の結果がどうなったのかは、2016〜2024年のドイツ連邦統計局の公式データをもとに、ポストの終盤に掲載。

AfD内で血統主義を掲げる極右政治家、ビヨルン・ヘッケ
2020年から連邦憲法擁護庁にネオナチ系極端主義者として監視されている 
(引用:ドイチェ・ヴェレ紙・AfD政治家による過激発言集より

欧州では、英国、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、さらにはリベラルだったスウェーデンまで、右派ポピュリストが雨後のタケノコ状態。この10年で空気は一変した。原因はやはり2015年の欧州難民危機だろう(日本語リンク)。

日本もいよいよ、この風が吹き始めたのか?

私は日本を離れてほぼ30年、欧州永住がデフォで帰国はオプション。そんな立場で日本を欧州目線で批判する気は全くない。

むしろ、欧州で移民問題やポピュリズムをことごとくシビア、リアルに体験してきたからこそ、日本の方々に何か参考になる視点を届けたいと思う。以前、移民による犯罪の被害にもかなり遭っている(前ポスト)。

実際、日本でも参政党をめぐってデモやプラカードを掲げた人々がぶつかり合っているよう。欧州ではよくある光景だ。こうした分断は民主主義の副作用。

独裁なら分断は表に出ず、北朝鮮のように力で消される。それを思うと「ヘルシーな社会の証拠」なのかもしれない。

…が。

欧米ではここ10年、ネオ右翼 vs. 左派リベラル(移民・LGBTQIA+支持)によるカルチャー戦争が燃え続け、人々は疲弊中、(前のポストでもちょっと触れたが)。「マヨネーズかタコスソースを選ぶだけでポリコレ炎上」なんて笑えないネタが出るほど。どこかの欧米ニュース動画のコメント欄で読んで同感した。

自分もベルリン在住の頃、名物ケバブを「ちょっと苦手」と口にして、トルコ系同僚の目を気にして慌ててフォローした経験がある。「あ、ちゃんとしたトルコ料理店のMezzo風サラダなら、かなり好きだけど…。」あの時、空気が一瞬ピリッとした。

日本も、ついにカルチャー戦争の国になってしまうのか…。

そう考えるとちょっとゲンナリする。日本では、最近はダイバーシティ(多様化)も進んできたし、英国籍の配偶者と子供と一緒に、いつかは帰国しようかなと考えていたが、正直ためらう気持ちも出てきた。

さらに、日本のポピュリストが仕掛けるカルチャー戦争の核心は、結局のところ「移民問題」。これは、欧州とまるっきり同じ構図。

…とはいえ、日本では、移民はまだ全体の3%ほど。

90年代にわたしたたちが移住したロンドンは、すでに街の2〜3割が外国人だった。2016年に去る頃には、白人イギリス人は4割を切り、残りの6割以上は外国出身者やマイノリティー。それが良いとか悪いとかではなく、ただそういう場所になっていた。

一方で、日本はまだその段階には遠く、そもそも大英帝国の過去を持つイギリスとは歴史の土台から違う国

しかも、日本語というハードルの高い言語がある。英語圏に比べたら、日本への移民は「マイノリティ中のマイノリティ」だ。こっちで観察していると、第3世界の難民、または経済移民はまず英語圏を目指すようだ。まずは、カナダ、アメリカ(トランピズムで下火)、オーストラリア、イギリスといったところか。

そこで日本の現状を探ってみると、移民そのものより、むしろ日本人の「感情的な疲れ」が前面に出ているように見える。

特にオーバーツーリズムや、一部の移民カルチャーに対するモヤモヤ。これは理解できる。でも、それは「日本の危機」なのだろうか。ほんとうの危機は、物価高と経済問題、高齢化、そのうえ人口減少によって納税者にのしかかってくる社会保障の重さではないだろうか。欧州でもこれは同じ。

ここから、リアリティチェックをしてみる。ここ10年ほどのヨーロッパの動きと、日本の現在地を、少し並べてみてみよう。まずは、オーバーツーリズムから。これは、移民とは別の話。まずは欧州の例から。

スペインでも今、オーバーツーリズムと観光客に対する反発が大激化。今年に入ってから、市民たちがプラカードを掲げ、ついには水鉄砲でツーリストを撃ちはじめる(!)という事態まで発生している(リンク)。正直、これではお互い気分が悪くなるだけだ。

水鉄砲でツーリストを撃つスペインの住民ら、この光景がシンボル化。

さらに掘り下げてみると、問題の核心は観光客そのものではなく、実は「住宅問題」だった(リンク)。

民泊やAirbnbなどで儲けるために家を買い漁り、観光客に高額で貸す。このような不愉快な奴らがたくさん現れているという。結果、地元の家賃が爆上がりし、昔から住んでいる人が街を追い出される。

スペインも、ドイツのベルリンも、この構図で揉めた。

ベルリンでは2016年頃、この流れにブチ切れた無愛想ベルリナー(左派&反資本主義がデフォ)が「Airbnb禁止令」をあっという間に制定(リンク)。もしどうしても民泊に使うなら市に申請、許可証が必要。しかも、理由が弱いと却下。もちろん、きっちり課税される。違法民泊はゼロではないが、これはかなり効果があった。

2016年のベルリンでのAirBnB反対運動の記事より
(ベルリナー・タァゲシュ・シュピーゲル紙)

当時、過去10年間で家賃が2倍となった

しかも、ベルリン流、不法がバレたら高額罰金が課せられる(当時でも、日本円で2〜300万円という派手な罰金制度)。その上、ブチギレした市民による「告げ口」サイトまで設定、という徹底ぶり。

東京や京都も、こうしたルールを真似したほうが市民のためになると思う。税収も増えるし。罰金もバカにならない立派な都市収入源。

右翼支持者のインタビューを見ると「外国人が日本の不動産を買い漁って民泊で荒稼ぎしている」という声が多い。ならば、このベルリン式の規制を導入するだけでだいぶ解決するのでは?

さらにドイツは、英国と違って「不動産投資を国レベルであまり推奨しない」文化だ。ちなみに、英国のターボ資本主義は、海外投資家が大好きでロンドンの地価が爆上がりしても野放し(大汗)。

ドイツは逆で、テナント権利を守る団体や政治ロビーが強く、終身賃貸で安く暮らせる基盤がある。これには、プラカードを持って戦う人たちに大感謝だ。

そのせいか、ドイツでは、不動産での短期売買による利益に厳しい課税がある(リンク)。購入から10年未満の売却では、基本25%のキャピタルゲイン税に加え、連帯税や他の税を含めると年収次第でほぼ半額の約40%、またはそれ以上にまで達することもある。

ただし、自宅としてのみ、2年以上使用していれば非課税となる例外もある。しかし、絶対に民泊用ではだめ。短期滞在や民泊向けに購入して高額売却を狙う人は注意。ドイツでは外国人も自国民も関係なく、不動産投機で簡単に儲けさせない仕組みが整っている。

イギリスからドイツに移った友人は、この仕組みを知らずにイギリス感覚で不動産に手を出して痛い目に遭っていた。

日本も、外国人の不動産買い占めを抑えたいなら、このように短期売買や不動産投機に対する厳しい課税と民泊規制を組み合わせるべきだろう。これがないと、投機的な買い占めはなかなか止まらないかもしれない。これらの規制は住民のためになるはずだ。

また、皆がナーバスになっている「移民問題」といえば、日本はまだ全体の3%。まだ「始まったばかり」という感じ。とはいえ、ヨーロッパで長年問題になっている「ゲットー化」が、早くも日本のメディアで話題になり始めている。川口市のケースが象徴的。

これは国全体の移民問題というより、特定の都市で特定移民が集中してしまった「局地的なゲットー化」の現象。

これを言い換えると「パラレル・ソサエティー」。こちらでは、前例が多いため、きちんと言語化されている。滞在国とまったく同化せず、独自の文化圏で閉じてしまうコミュニティのことを指す。

デンマークでは10年前にこの現象が深刻化し、「ゲットー撲滅法」を作った。今年になってEU内で「差別的ではないか」と炎上しているが…(記事リンク)、彼らが定義する「ゲットー」の基準はなかなかリアルだ。下に貼っておく(原文:リンク)。

  • 住民のうち、非西洋系の移民やその子孫が50%を超える。

  • 18〜64歳の住民で、仕事も学校も行っていない人が過去4年平均で40%を超える。

  • 18歳以上1万人あたり、刑法・武器法・薬物法違反で有罪判決を受けた人数が270人を超える(4年平均)。

ヨーロッパにはこういう悲しい「火薬庫」がいくつもある。フランスのパリ郊外の暴動はその象徴であり(リンク:毎年のように起こる暴動)、ベルギーやイギリスにもこのようなゲットーが点在している。知らずに足を踏み入れるとトラブルに巻き込まれることもあるので、欧州都市では土地に関しての情報を得て「ストリート・ワイズ」でいることが安全戦略のひとつ。

一方でドイツは、こうしたゲットーが少ない(注:全くないわけではない、が…)。

理由は歴史にある。ナチス時代にユダヤ人をゲットーに閉じ込めて虐殺キャンプに送った過去からか、ゲットー化そのものに強烈なアレルギーがある。連邦制をうまく使い、移民を州ごとに分散配置することで「ゲットーの芽」を入り口で摘んでいる。

さらにドイツが優れているのは、移民向けのインテグレーション(同化)クラスを整備している点(ドイツ政府リンク)。永住権や滞在許可の条件にもなっていて、100時間程度のドイツ語・文化講座をレベル別に受講できる。料金はほぼ無料に近く、条件を満たせば返金もされる仕組み。

加えてドイツの大学は無料だから、難民や移民2世代目以降が成功するチャンスも十分にある。社会の階層移動(ソーシャル・モビリティ)がとても高い。

デンマークと比較すると、ドイツの方がはるかに先手を打っている。前戦争のトラウマから学んだことがプラスに働いたよう。一方デンマークは動きが遅れ、いまさら修正を加えようとしてポリコレで大炎上。

また、こういった「パラレル・ソサエティー」が根を張ると、必ずといっていいほど出てくるのが移住者密輸や人身取引

こちらでは「スマグリング」や「トラフィッキング」と呼ばれていて、権利のない移住者を安い労働力として酷使したり、命がけで国境を越えさせる悪質不法ビジネスが蔓延している。

国連による解説リンクはこちら、(英リンクはこちら、下、国連による動画)。

特に地中海や英国海峡を渡るルートは悪名高い。小舟での横断を多額の金で「パッケージ販売」し、事故が起きて移民が溺れ死んでも知らん顔、という冷酷なケースも多い。

また、皮肉なことに、イギリスがEU離脱した後、中東やアフリカなどの第三世界からの移民の密航がむしろ大急増したこと。かつてはEU「ダブリン規約」があって、移民が初めに入国した国に送り返すことができた。しかし、EUを離脱してしまったため、このルールが使えなくなった。

結果、「EU離脱をすれば移民は減る」と煽っていたポピュリスト右翼のプロパガンダは完全な嘘だったと後で批判されることになったが、時すでに遅し。

右翼ポピュリストのEU離脱派による象徴的ポスター「ブレーキングポイント」(ウィキペディア大量移民の恐怖を煽り議論と告訴問題を招いたが、離脱後に減ったのは欧州からの移民だけで、南アジア・中東・アフリカからは逆に大急増した

実際、EU離脱が発効した2021年1月から、下のBBCの比較チャートにもあるように、英国海峡を渡る不法移民数は目に見えて大増(リンクはこちら)。

EU離脱が発効した2021年1月から、
英国海峡を渡る第三世界からの移民の数は目に見えて大急増

それからほぼ5年。ようやくスターマー首相がドイツと正式な協定を結び、ドイツに拠点を置く英国向け密輸グループの摘発に本腰が入った。最近の逮捕劇は、ドイツ、ベルギー、フランスの警察、さらにユーロポルまで動員された大規模なものだった(参考リンク)。

断固としてEU離脱反対派、反右翼ポピュリズム派側であった労働党のスターマー首相が、このようにEU離脱後の混乱した英移民問題の対処をさせられる羽目になっている…。これには、とほほ、だ。

この詳しいBBCのレポート(必読)によると、摘発された密輸ギャングのひとつ、自らも移民バックグラウンドを持つドイツ人2人組。彼らは「英国行きボートパッケージ」を€15,000(約260万円)で販売し、大儲けしていたよう。もちろん、途中で命を落とした移民も少なくない。かなり悪質なビジネスだ。

また、なぜこれほど移民がイギリスを目指すのか。いくつか理由は考えられるが、個人的に大きいと思うのは、イギリスの市民管理制度の緩さ」。右翼が叫んだところで不法移民は減らない彼らも必死だから。しかし、ドイツには日本の住民票制度に近い、厳格な住所登録やID登録があり、すべての住民がきちんと把握される。

プロイセン時代から続くこのビューロクラシーは、移民からするとかなり面倒、苦情も多いと聞く。だが、移民政策や管理にはむしろ有効のよう。イギリスには住民票も国民IDカードもなく、管理はほとんど自己申告ベースのみ。だからこそ、非公式の移民にとっては「入りやすい国」になってしまっている。

さて、今の日本の現状。移民政策はまだスタートライン。全国的な「移民問題」と呼ぶには早いけれど、川口や観光地で見られる「プチ・パラレルソサエティー」や、オーバーツーリズム、外国人による不動産投機ネタがメディアでどんどん目立ち始めている段階。

また、この「パラレルソサエティ」の一部が、もし閉じた不法コミュニティ化しているなら、移住者密輸や人身取引など、闇の犯罪構造が根を張ってる可能性もゼロじゃない。

これらは、国連レベルでも警鐘が鳴らされている問題なので、国際的な告訴の枠組みが整備されているはず。現存の自治体がきちんと地道に調べて、対応するべきだろう。

こういうときに必要なのは、地に足のついた行政と自治体の粘り強さであって、怒鳴り声の大きい右翼ポピュリズムじゃない。むしろそっちに振れると、社会が「分割」して面倒な方向に行きがち。…と、著名なアメリカの日系政治学者、フクヤマ先生もおっしゃってた気がする。(そう、こちら。)

そして「分割して制せよ(Divide and conquer)」は、ローマや大英帝国の「定番」古典芸。大英帝国時代にヒンズーとイスラムを分けてパキスタンを独立させたのも、反英支配で団結されるのを防ぐため。みんなで反対されるより、内輪もめしててくれた方がラクだった。これぞ植民地クラシック。

また、イギリスのEU離脱後、EUの結束が一時的に揺らいだタイミングでロシアのウクライナ侵攻が始まったことも、偶然ではないと指摘する声がある。いまだに「EU離脱はロシアによる工作の一部だった」という噂が絶えないのも、その背景を考えれば納得がいく部分がある。

話を戻すと、日本の人口減少を考えれば、質の高い移民を戦略的に迎えるのは悪くない選択。ただ、長く単一文化でやってきた国が、急に多文化社会にジャンプするのはやっぱり難しい。実際、ヨーロッパでもうまくいかなかった例は多い。

ここは、ドイツみたいに、国主導でインテグレーションクラス(社会同化プログラム)をしっかり整備するくらいの準備は必要だと思う。

移民政策に比較的成功しているドイツやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドには学べる成功例も多い。(注:また、最近のドイツ右翼ポピュリズムは、若干、欧州の他国と同じ文脈では語れない気がする考えはここ)。

また、今の円安状況を考えると、正攻法の移民政策は、逆にハードルが高い、かもしれない。そもそも経済移民は、まず欧米みたいに賃金が高い国を目指すのが普通。今の為替レートで「反移民!」と叫ぶのは、ちょっとズレてる感じも…(申し訳ない、けれど)。残念ながら、日本は今のところ経済移民にとっては第一希望の国じゃない、という悲しい現実がある。

むしろ、そんな状況でも「日本で暮らしたい」と言ってくれる外国人こそ、積極的に応援すべき存在ではないだろうか(下、3年前の賃金比較データ)。

G7圏での賃金比較、イタリアと日本が一番低い(2022)
ーさらに、近年は円安が深刻化、英フィナンシャルタイムズ紙より

それから、もし右翼ポピュリズムが勢いづいてしまうと、国内のリベラル層だけでなく、穏健な中間層の有権者までが日本を離れてしまう可能性もある。実際、イギリスやアメリカでも似たような動きがある。人口減少が進む日本にとって、こうした「人材流出」はかなりリスキーだと思う。

しめくくりにもうひとつヨーロッパの実例を。ドイツでは国外だけでなく、連邦国内でもこの「人材流出」が起きているよう。

このポストの初めにふれた極右政治家ビヨルン・ヘッケが実質的に仕切るチューリンゲン州では、移民が地域を離れる懸念が増している。ドイツ全体で約40万人のハイスキル移民が不足しているなか、極右翼AfD党の影響が地域の足を引っ張っているようだ(AP通信によるレポート)。

旧東(旧共産圏)ドイツの色を濃く残すこの州は賃金が全国平均を下回り、大手民間企業も少ない。若い世代、特に女性はよりリベラルで良い環境を求めて西へ流れ続け、ベルリンの壁崩壊以来、この「国内人材流出」は止まらない。極右の連邦政権下で、この傾向はますます悪化しているのが現状だ。

冒頭でふれた極右政治家ビヨルン・ヘッケが実質的に仕切る
チューリンゲン州では、近年出生率も大きく低下している
引用:Mitteldeutscher Rundfunk(ミッテルドイツ放送)
ARD(ドイツ公共放送連盟)加盟局

さらに今年に入ってからは、州での極右の影響力拡大とともに人口減少が加速し、幼稚園閉鎖のニュースが大急増。(上チャート、チューリンゲン州の出生率グラフ)。

右翼AfD党の行政主導下のチューリンゲン州では、2016年からの8年間で、
ドイツ連邦統計局データによると、出生率が30〜36%も大減少

冒頭の妊婦ポスター(2017年)に見られる保守的な家族重視政策とは裏腹に、現実は厳しい

しかしながら、ここまでひどい出生率の大減少。冒頭の妊婦ポスター、あの「演出」、なかなか強烈だったけど…(大汗)。まさかここまで裏目に出るとは。逆効果だったようだ。

人間って、そんなに都合よく誘導されてくれないもの、と、このニュースに見入ってしまった。誘導されないどころか、むしろ、冷めきっている。いや、これはもはや「ドン引き状態」…。

日本のポピュリスト「参政党」も、若い女性に出産を強く期待するような不適当な発言を繰り返してるとか。保守的家族観の押し付け+国家目線の出産促進、これは人権的にもかなりギリギリ。個人の尊厳や憲法の価値観とズレはじめている。しかも、これでは効果などないだろう。

これについては、逆に女性が子どもを産みたくなるような社会について、いろいろと考えた投稿もしてみた(下)。

2025年11月アップデート: ちなみにウルトラ保守トランプ政権下のアメリカに違和感を抱き、欧州へ移住する米国女性たちの独仏共同ドキュメンタリーARTE/テレビ)を視聴して、個人的な感想と考察をまとめたポストもこちら

また、かれらが国内で「うちは右翼ポピュリストじゃない」と言い張っても、「日本人優先」「若い女性は産め」「女性は働きすぎ」では説得力ゼロ。こちらでは、フツーに「排外的・極右ポピュリスト」と容赦なく報道されている。和風のシュガーコートは、国外では全く効かないようだ。

日本で、今大事なのは、感情に任せてこの右翼ポピュリズムなどに傾く前に、いま起きていることをちゃんと言語化して、落ち着いて対策を考えること
かもしれない日本には、まだそれをする時間と余白が残っている。

この、ヘイトを旗印にした政党に傾く前に、ちょっと深呼吸してみるのもいいかもしれない。「うちはヘイトでもない」とも反論されても、「日本人ファースト」などというスローガンをきっぱり掲げる時点で、線引きはされている。正直に「パッシブ・ヘイト」と呼ぶべき。

ちなみに、政治的ヘイトって、ほんとうにお肌にも悪い(苦笑)。怒りっぱなしだと、毛穴も人生もつまる(いやほんとに)。脳内で怒りのアドレナリンが出っぱなし。それって結構、本気で健康に悪い。そして、顔のない「誰か」に怒り続ける無限ループにハマっていく。

昔、そういうヘイトにハマったことがある。自分でも恥ずかしいけど、これは本当のこと。だから、他人事じゃなく、とてもシビア。

でも、大手術を受けたときに、手を握ってくれて、そばで支えてくれたのが優しい移民の看護師さんだった。あれで我に返った。もしあの手術で、何かあったらとしたら。自分の偏見への取り返しのつかない後悔とともに終わっていたかもしれない…。

正直、揺れることもある。皆、葛藤だらけだいろんな経験を経て思うのは、社会がどっちに転ぶかなんて読めないということ。でも、自分がどこに立つかは選ぶことができる。


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