見出し画像

【展覧会レポ】地中美術館:足裏で体感する、建築x作品x環境の見事な融合

【#297、約4,400文字、写真約30枚】
香川県・直島にある地中美術館に初めて行きました。その感想・レビューを書きます。

▶︎ 結論

地中美術館を体験するためだけに、直島に行く価値のある美術館でした!それは主に、1)作品、建築、環境の見事な融合、2)3つの作品だけのためにつくられた、自然光のみを使った独特な展示空間、3)モネの部屋の「床」に感動したためです。不便な場所にあるからこそ「よく生きる」活力を得られました。アートに少しでも興味がある人は、死ぬまでに1度は行くべきです。

注意点としては、1)事前予約必須、2)晴天必須であること。

おすすめ度:★★★★★
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★★★☆
場所:地中美術館
休館日:月曜日
開館時間:10:00 ~ 17:00
住所:香川県香川郡直島町3449−1
アクセス:宮浦港から自転車で約20分
入場料(一般):2,500円
事前予約:必須
所要時間:約1時間
撮影:ミュージアムストア以降、すべて不可
巡回:ー
URL:こちら


▶︎ 訪問のきっかけ

香川県に2泊3日で一人旅の際に行った際、地中美術館は、安藤忠雄の設計による直島で最も有名な美術館なため、マストだと考えていました。

▼ 安藤忠雄の展覧会@VS.(大阪)

▶︎ アクセス

地中美術館は、数カ月前に時間指定の予約がマスト

レンタル自転車は時間帯によっては大混雑(要予約)
借りた自転車

宮浦港から自転車で約20分。歩いても約30分ですが、坂道が非常にキツいため、バスか自転車がオススメです。自転車で行く場合は、宮浦港でレンタルしましょう。

注意点は、直島にあるもう1つの港・本村港にはレンタル自転車がないこと!直島でさまざまな美術館やパブリックアートを鑑賞する予定なら、まずは宮浦港に行き、自転車を借りる必要があります。

自転車で直島を走り回っていると、とても気持ちが良かったです。バスや徒歩よりも自転車を利用するのが、断然オススメです。

▶︎ 地中美術館とは?

地中美術館は「自然と人間との関係を考える場所」として、2004年に設立されました。瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設され、館内には、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が安藤忠雄設計の建物に恒久設置されています。地下でありながら自然光が降り注ぎ、一日を通して、また四季を通して作品や空間の表情が刻々と変わります。

公式サイトより

✔️ 直島で4つ目の安藤建築

直島には、安藤忠雄が手がけた建物が10あります。その中で、4番目にできたのが地中美術館。1〜3番目につくられた施設は、ベネッセハウスミュージアム(1992年)、ベネッセハウスオーバル(1995年)、南寺(1999年)です。今年の5月には、10番目の直島新美術館もオープンしたばかりです。

▼ 直島新美術館の感想

✔️ 98.6%が地下

地中美術館は、ほぼ全てが地中に埋まっています。約2,500㎡の延床面積に対して地上に出た建築面積は35㎡!(全体の1.4%

上空から見た様子(画像引用

なぜほぼ全てが地下にあるのか?

それは、福武總一郎(ベネッセアートサイト直島代表)が「建築については、人間の心や精神の大切なところが表には出ないように、外から見えないものにしたい」と考えた上で、安藤忠雄に設計を依頼したためです。作品鑑賞においても、自然光しか使っていません

美術館は、外観のインパクトが最重要です。それが美術館の顔となり、その情報が拡散されて、人も寄ってきます。そして、その外観に、建築家は頭を悩ませるのではないでしょうか。それが存在しないとは!

建設は、豊島美術館と同様に鹿島建設によるもの。一度、地面を掘り起こして、コンクリートで建物をつくり、またそれを地面に埋め直すという、美術館としては考えられないプロセスを経ています。

▼ 豊島美術館の感想

北海道の「頭大仏あたまだいぶつ」は、安藤忠雄の「これは見せすぎだ、埋めてしまえばいい」という発想から設計されています。これは、地中美術館などのプロジェクトの経験が活かされた結果なのかもしれません。

✔️ 作品は恒久展示3つだけ

地中美術館の特徴の1つが「パーマネント」(展示を入れ替えない)であること。しかも、展示作品数はたった3つ。その上、行きづらい場所にあり、開業から今年で約20年がたつものの、いまだに新規・リピーターともに、人々を魅了し続けるのは、とんでもない魅力がある証左です。

安藤さんの動画も参考になります(17分30秒から)。安藤さんらしい語り口には、たまに笑ってしまいつつも、熱意をもらえるインタビューです。

「塀があったら、塀を乗り越えていけ。職員の隙間をぬって、スッと入っていけ。必ず相手が困りますと言うと。それを乗り越えていくのが人生や

地中美術館チケットセンター

✔️ 遅刻する時は連絡を

当日、私は予約していた時間を忘れてしまい、直島新美術館から先に訪問してしまいました。地中美術館に電話したところ「まずはチケットセンターに来てください」と案内されました。そこで臨時のチケットを発券していただきました(ありがとうございます)。

臨時の手書きチケット
睡蓮

美術館へ行く途中「地中の庭」があります。そこには、モネが造園したジヴェルニーの庭に植えていたものをお手本にして、約200種類の草木が植えられています。

直島のネコは人に動じない
地中美術館 入口
ミュージアムストア以降、すベて撮影不可

コンクリートの通路をぐるっと回って、ミュージアムストアへ。その先は、撮影不可です(地中カフェを除く)。

▶︎ 感想

気持ちがいい青空
(酷暑で死にそうだった)

壁から地面まですべてがグレーのコンクリート。無駄なものが何1つありません。まるで、NINTENDO 64のポリゴンの世界、映画『CUBE』の世界に入ったような感覚でした。

コンクリートの壁は、メンテナンスがあるのでしょうか?地中に埋まっちゃっているし、配線などの細かな修理や、増改築も難しそうだと疑問に思いました。

コンクリートだけの空間では、とても音が響きます。館内は撮影禁止で、シャッター音も聞こえません。また、ケータイの電波も届きません。そのため、頭の中から雑音が消え、神経が研ぎ澄まされる感覚でした。ただのコンクリートの空間なのに、まるで古代神殿に入ったような気持ちがしました。

作品配置(画像引用

展示作品は、モネ、タレル、マリアの3つだけ。その中央に、吹き抜けの三角形の庭とスロープが配置されています。この三角形をはじめ、韓国にある安藤忠雄が設計したMuseum SANそっくりな場所がいくつもありました。

三角形の空間(@Museum SAN、2025年2月撮影)
斜めに配されたスロープもそっくり(@Museum SAN)

▼ Museum SANを訪れた感想

1)クロード・モネの部屋

画像引用

まずは、モネの部屋に入りました。この部屋のみ、靴を脱いで入る必要があります。

部屋に入る前に、何もない部屋を通ります。その空間で一呼吸おいて、狭いゲートを抜けます。その先には「わぁ…」と声が漏れるような神々しいモネの空間が広がっていました。このワクワク感の演出がうまいと感じました。

この部屋で、私にとって最も印象的だったのは「床」でした。床には角を削ったサイコロ大の石が整然と敷き詰められています。これがひんやり、ツルツルしていて、とても心地よかったです。

絵を見ている時には、主に視覚を使います。しかし、足だけは常に地面に触れています。その足からの触覚によって作品への鑑賞体験も大きく変わると認識しました。例えば、作品を畳の上に座ってみるだけでも、感じ方が大きく変わった体験があります。足裏からの情報って大事!

▼ 足裏で畳を感じながら鑑賞した展覧会

作品が展示されている空間も不思議でした。薄暗く、光は天井の四隅から漏れる自然光のみ。外なのか内なのか曖昧な世界。時間によって光の量や強さも変わる。モネが大事にした自然を追体験できる環境になっていました。

一般的な美術館でモネを見るのと、地中美術館でモネを見るのは、まったく違う印象でした。美術館は、作品も重要ですが、そのための環境、建築も重要だと体感しました。

2)ジェームズ・タレルの部屋

画像引用

地中美術館には、タレルの作品が3つ(アフラム、ペール・ブルー、オープン・フィールド、オープン・スカイ)展示されています。

代表作である《オープン・スカイ》は、完全な外になっています。この時は酷暑のため、ベンチに座って、空をボケーっと見るのは難しかったです😅

▼ 「タレルの部屋」がある21世紀美術館

行列ができていた《オープン・フィールド》も鑑賞しました。これは、韓国のMuseum SANでも体験した作品を、小さくしたものでした。地中美術館の《オープン・フィールド》は、ガイドの人はほぼ何も説明せず、鑑賞者は作品の場に放り込まれるだけ。そのため、みんな困惑していました。これでは、タレル作品の面白さが全く伝わりません。

地中美術館でも、Museum SANと同様に、作品の楽しみ方を詳細に説明した方がよいと強く思いました。そのため、地中美術館で鑑賞した《オープン・フィールド》で、私はあまり感動しませんでした

3)ウォルター・デ・マリアの部屋

画像引用

この部屋には、直径2.2mの球体と27体の金箔を施した木彫が配置されています。この空間も、照明は屋根に開いた自然光のみ

私は、ウォルター・デ・マリアをここで初めて知りました。当初、作者名を「壁のマリア様?」という作品名と勘違いしていました。《ライトニング・フィールド》という大掛かりな作品が有名な作家だそうです。

黒い球体は、直径約2mと巨大なため、この空間で、新たに搬入出は不可能です。未来永劫、この空間に展示し続ける、アグレッシブな思想だな、と思いました。

安藤忠雄建築の特徴の1つが、コンクリートに等間隔で穿かれたままとなっている「セパ穴」。マリアの部屋では、それが部屋全体に軽快なリズムを与え、作品を際立たせる役割を発揮していました。もし、ここにセパ穴がなければ、殺風景でまとまりのない印象だったかもしれません。

✔️ 地中カフェ

地中美術館には、カフェも併設されています。瀬戸内海を望みながら、地中美術館で感じたことをゆっくり解きほぐすにはちょうどいいです。一番安いオープンサンドイッチは1,500円、コーヒーは600円でした。

雄大な瀬戸内海

▶︎ まとめ

買ったロルバーンのノート(地中美術館限定)

いかがだったでしょうか?直島に来たら必ず行きたい美術館、もしくは、地中美術館に行くために、直島まで行く価値のあるスポットでした。3つの作品のためにつくられた、ほぼすべてが地下にある珍しい美術館。アート作品だけでなく、建物自体もアートであると強く認識できました。また、モネの部屋の「床」が予想外に印象に残りました。


▼ 福武總一郎と安藤忠雄の対談(直島プロジェクトの背景がよくわかる)


いいなと思ったら応援しよう!

Naota_t Thank you for your support!