~オウンドメディアの立ち上げから自走まで~対話が育んだ、部署間連携とアイディアを形にしていく文化
✔コンピューター書を中心に書籍・雑誌を発行している出版社、技術評論社。2022年からナラティブベースがWebマーケティング施策の立案・実行を支援。
✔資格関連書籍のマーケティング支援に続き、今回取り組んだプロジェクトは、イラスト・デザイン書に関するnoteでの情報発信。
✔対話を重ねながらコンテンツを制作することで、社員のモチベーションも活性化。「自分たちでやってみます」という発言をいただき、スムーズな社内自走の体制ができた。
ナラティブ(語り・対話)の力を活用し、プロジェクトを推進するだけでなく、チームそのものを育てていくことを得意とするナラティブベースの伴走支援。
今回ご紹介するのは、技術評論社様とのプロジェクトのうち、イラスト・デザイン書のマーケティング施策の立ち上げから自走までのプロセスです。施策の1つであったオウンドメディア(note)は、当初、ナラティブベースからの提案を中心に運営されていましたが、技術評論社内の編集部とマーケティング部の連携が後押しされ、社内自走が可能な体制に変化してきました。
そこに至るまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか。技術評論社デジタル事業部マーケティング室の峰尾さんと、本プロジェクトに携わったナラティブベースの藤川・永田・保田が、座談会形式でその歩みを振り返ります。
熱い想いを、社内の言葉で。
第三者視点の後押しで、オウンドメディアを開設
――前回の資格関連書籍のマーケティング支援に続き、今回、デザイン・イラスト書のマーケティング支援をご依頼いただいた経緯を教えてください。
【株式会社技術評論社 峰尾健一さん(以下、峰尾さん)】
ナラティブベースさんにご協力いただいた資格関連書籍のマーケティング支援で、編集部を巻き込みながら軌道に乗ったという成功体験があったので、イラスト・デザイン書の支援についてもご相談しました。前回は弊社が強い分野だったのに対して、イラスト・デザイン書の分野では認知度が低いという点が課題だったんです。
――具体的にはどのような施策を行いましたか?
【峰尾さん】ご提案いただいたのが、リスティング広告の運用に加え、イラスト・デザインをテーマとしたオウンドメディア(note)の開設でした。これまで社内でさまざまなメディアを運用してきた経験があるぶん、更新を続けることの大変さは理解していました。そのため、ご提案いただいた当初は「新しくnoteを始めるのはどうなんだろう」という議論が、数ヶ月続いたと思います。
【ナラティブベース 藤川麻夕子(以下、藤川)】 そこで、御社だけでなく私たち3人も記事制作スタッフとして参加させていただくことや、届いているアンケートを記事に活用することなど、制作の負担を軽くする方法をご提案しました。
【ナラティブベース 保田智子(以下、保田)】 「本づくりに関わった社内の人の言葉で発信しましょう」という提案もさせていただきました。社内では当たり前だと思っていることでも、外から見ると当たり前ではない。本をつくる仕事にはきっと熱い想いがあるはずで、それを言葉にして発信することには価値があるし、結果的に売上にもつながっていくと思ったからです。
【峰尾さん】そうでしたね。第三者の目線で率直な意見をいただけたことも後押しになり、議論のすえに2023年6月にnoteを開設しました。

生成AIで社員をキャラ化。
社内×読者視点で展開する「やってみた記事」
――noteでの情報発信を続けていく中で、印象的だったエピソードはありますか?
【保田】峰尾さんの上司である馮(ふぉん)さんが書かれた「生成AIキャラデザインチャレンジ2024―Adobe Fireflyを試してみた(2024年1月版)」という記事で、峰尾さんをモデルとしたキャラクター「ミネオ君」が爆誕したことです!

【藤川】もともとナラティブベースでは、このnoteのマスコットキャラクターをつくりたいねと話していたんですよ。名前は「ミネオ君はどうだろう?」「カワイイ!いいね!」と。
【峰尾さん】本人はよくわからないんですけど、周りがいいと言うから、そうなのかなって(笑)。
【ナラティブベース 永田香苗(以下、永田)】 馮さんがサンプルをつくってくださり、プロンプトを試しながら、Adobe Firefly生まれのミネオ君が誕生しました。
【藤川】生成AIによる画像生成が始まった頃だったこともあり、この記事は多くの人に読まれて最初にぐっとビューが伸びたものでした。
【保田】その後、ミネオ君はChatGPTが画像生成に対応したタイミングで進化を遂げて、せっかくだから活躍してもらおうということで生まれたのが、「やってみた記事」のフォーマットです。

――「やってみた記事」とは、どんな内容なんですか?
【永田】技術評論社の刊行物を使って、実際に素人がその通りに「やってみる」シリーズです。イラストやデザインの初心者が「○○してみたいんだけれど、何かいい本ないですか?」とミネオ君に相談すると、本ソムリエロボットのミネオ君が答えてくれる「生成AI生まれ ミネオ君のデザイン・イラストお悩み相談室」という企画で、私たちが執筆担当になりました。
【保田】これは、外部の人間である私たちだからこそ持てる、読者視点を活かした企画です。かつ、たまたま私たちはイラストもデザインも写真も素人で、読者に近い存在です。そこでそれぞれが、ミネオくんに勧められた本、つまり、そのとき技術評論社さんが推したい本を読み、本の内容通りにやってみて、読者に本の活用イメージをもってもらうことを目指しました。
※3人がそれぞれ執筆した「生成AI生まれ ミネオ君のデザイン・イラストお悩み相談室」はこちら
マーケと編集の部署横断ワークショップが
自走へのターニングポイントに
――ナラティブベースからの提案で、社内ワークショップも実施したと聞いています。
【永田】はい。もっとnoteを育てるには社内を巻き込んでリアルな意見を交わすことが大切だと思い、2024年の5月、「このnoteで何を目指すのか」について、イラスト・デザイン書の編集者のみなさんと一緒に考えてみるワークショップをご提案し、実施しました。
【保田】事前に「イラスト・デザイン書の課題」を改めて考えようという宿題をお渡していました。当日はマーケティング部から3名、編集部から3名、と私たち3名の9名が参加し、みなさんの課題感を踏まえてnoteで何を目指すのかをテーマにグループディスカッションをしました。私はファシリテーションをさせてもらいました。

【峰尾さん】ワークショップで話したことは、より読者に響く記事づくりにもつながっていきました。たしか「本のレベルと読者とのミスマッチを解消したい」という話をしたんですよね。たとえばAdobe Illustratorの技法書を弊社では多く出していますが、超初心者向けにインストールの方法から説明する入門書と、すでに使いこなしている経験者が求める情報とでは、まったく内容が違います。そこにミスマッチが生まれないような工夫をしたいと思っていました。「この本は自分に関係がある」「自分が求めている情報だ」と伝わる打ち出し方をしたい、という話をしましたね。そこから生まれた記事のひとつが『あなたに合った1冊を!Illustratorのスキルが伸びる5冊をレベル別に紹介!」です。
――ワークショップを実施したことによって、プロジェクト運営においても何か変化がありましたか?
【峰尾さん】はい、想像以上に議論が活発だった記憶がありますし、このワークショップは、noteの運用の自走へのターニングポイントになったと思います。ふだんの業務の中では、編集とマーケティングが部署を越えてじっくり意見を出し合う機会はなかなかないので、本当に有意義でしたね。

【藤川】確かにそうかもしれません。プロジェクトが始まった最初の頃、定例会議は決して活発とはいえず、馮さんが発言されることが多かったように思います。馮さんからは「もっと若手にも発言してほしい」という思いも聞いていました。
【保田】ワークショップでは、そのことがウソのように、みなさん活発に意見を出され、時間も足りないほどになりました。ファシリテーターとして拝見していても、「イラスト・デザイン書のnote」というプロジェクトに対するみなさんの自分ごと化がぐっと進んだように感じました。
【藤川】 その後、noteの運営はどんどん社内で回されるようになり、私たちが書く記事は、第三者の視点を活かした「やってみた記事」や、書籍から一部を抜粋して掲載する記事に絞られていきましたよね。
【永田】はい。編集部の方もミーティングに参加して、記事を一緒に企画するようにもなりました。さらに、峰尾さんご自身で編集者インタビューや著者インタビューも始められ、記事になっていきましたが、きっかけは何だったんですか?
【峰尾さん】ワークショップの効果もあって、社内に協力をお願いしやすい雰囲気ができてきたことが大きいですね。編集者のほうから企画が持ち込まれるケースも出てきました。

編集者の関わりも深まり、オウンドメディアの運営が活性化
――こうしてnoteが発展、活性化してきたのですね。実感や手応えはありましたか。
【峰尾さん】そうですね。編集者インタビューは、ある意味アクセス数などはあまり気にせず、自分が面白いと思ったところを記事にしています。社内で同年代の編集者2人に話を聞く連載企画では、「今までお互いにこんな話したことなかったよね?」みたいな発見があったんです。社内にはまだまだ価値のあるネタがたくさん眠っているのかもしれない、と気づき、より深掘っていこうという意識が高まりました。それを面白いと思うのは僕だけではないようで、編集者インタビューは社内の人もよく読んでいるという手応えも感じています。
【保田】noteが活性化していくことで、SNSから面白い流れも生まれました。永田が書いた「やってみた記事」、『イラストをそれっぽく描くコツ』を読んだ、紹介書籍の著者96こげさんが、「やってみた記事」をXでリポストしてくださったんです。それをみた担当編集者さんから「96こげさんと永田さんが対談したら面白いんじゃない?」という連絡があって。それがきっかけで実際にクロストークが実現しましたし、さらに、担当編集者さんが自らnoteを書く流れも生まれました。
【藤川】noteのスタートから2年半が経ち、私たちからnoteとは別の新しい施策を提案したときには、みなさんから「まずはこのnoteを自分たちでもっと良いものにしていきたい」という反応をいただきましたよね。
【永田】その発言を聞いて、ものすごく嬉しかったですね。ミーティングが終わったあと、3人で盛り上がりました。「とうとう自分たちでやりたいって言ってくれましたね!」と(笑)。私たちが目指していたのは、まさに社内で自走してくださることです。こちらの提案に乗ってもらえなくてがっかりではなく、思い描いていた理想が叶った!という感覚でした。
――峰尾さん、この3年間で心境の変化はありましたか?
【峰尾さん】「自分たちでやる」という決断ができたのは、noteの下地が整ってきたことや、外部からの反響が見えてきたからだと思います。ナラティブベースさんのサポートがあったからこそ、ここまで進めてこられた。自社の発信には締め切りがないので、ずるずる時間が過ぎてしまいがちですが、連絡をこまめにもらい、丁寧に伴走していただいたおかげだと感じています。
自由に大胆に使える発言のキャンバスとしてオウンドメディアを育てたい
――今後、やっていきたいことはありますか?
【峰尾さん】編集者インタビューのように、「きっと求められているだろう」と思える記事を増やしていきたいです。noteは自由なキャンパスのような場所だと思うので、その自由さを活かしていきたいですね。編集者からも企画が上がってきているので、うまく連携しながら進めていきたいです。
【藤川】とても素敵だと思います。
【峰尾さん】あとは、更新の仕組みとリズムをつくりたいです。noteを運用する目的を明確にして、サイクル化した方が続くと思うんです。僕が頑張って更新する形ではなく、「最近あまり出せていないな」というときに、別の人も対応できる。単なる運用の工夫ではなくて、noteを社員みんなで育てていくメディアにしていきたい。それぞれの視点が重なって、書籍や会社の魅力が伝わる場になったらいいなと思っています。

【永田】そんな方向に進んでいると感じています。
【峰尾さん】編集者個人がSNSで発信して、自分の担当した本を推すのは怖いと感じる人もいると思います。だから、こういう「ちょうどいい場」があるのはとてもいいですよね。社内には編集者が60人くらいいるので、続けていけば結果的にユニークなものになると思っています。また、noteの記事をきっかけにマーケティングのメンバーと編集者の間に日常的なコミュニケーションが生まれて、別の販促の相談もしやすくなりました。記事制作の協働を通じてさらなる別の展開につながることもあります。こういう場を持ったからには、自由に大胆に使っていきたいですね。
――今回のプロジェクトについての感想はありますか?
【保田】書籍編集の経験があるのですが、制作の裏側や編集者の声をもっと発信すれば、本の魅力はより伝わるし、売れ方も変わるのではないかと、以前から思っていました。その思いを実現できたプロジェクトだったので、関われてとても楽しかったです。
【藤川】編集経験のある保田、個人ブログでの発信を長年続けてきた永田、そしてWebサイト制作の分野で本を書いた経験のある私。そんな組み合わせが、面白くて強いアウトプットに少しでも貢献できたとしたらとても嬉しいです。
【永田】私は書店で同じようなテーマの本が並んでいたとき、最終的に何で選ぶのかというと、「誰が書いているか」とか、「それが自分の価値観と合っているか」なんですよね。つまり、著者を信頼できるか。編集者がどんなことを考えて、どんな思いで本をつくっているのか、このプロジェクトを通じて世の中に伝えられるという意味で、やりがいのあるプロジェクトでした。
【峰尾さん】そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします!
【藤川・永田・保田】こちらこそ、これからもよろしくお願いします!

<対談企業のご紹介>
株式会社技術評論社 様
<関わっているナラティブベースメンバー>

