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成瀬由紀雄のとわずがたり:構造あれこれ(3)ハブ・アンド・スポーク構造、ネットワーク(リゾーム)構造

(↑のつづき)

ハブ・アンド・スポーク構造

つぎにご紹介したいのは、ハブ・アンド・スポーク構造である。

これは、うえに挙げたツリー構造とグリッド構造の混合体である。代表例としてよく示されるのが、空港ネットワークである。「新関西空港をハブとするのかどうか」など、いま政治の場で侃々諤々議論されているやつである。

文章でいえば、このハブ・アンド・スポーク構造は、アカデミックライティングで最もよく用いられている形式である。

前にアカデミックライティングとは逆ツリー構造の代表格だと述べたが、実際の論文やレポートの場合には、内容が高度で複雑になればなるほど、逆ツリー形式のような単純素朴なかたちには収まりきれない。

そうした場合には、アカデミックライティング形式を遵守しているといいつつも、実質的にはこのようなハブ・アンド・スポーク形式になっていることが多い。

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ネットワーク構造

最後にご紹介する構造が、ネットワーク構造である。

これは、あらゆる要素が相互に密接につながっている構造のことである。人間の脳の神経ネットワークはこれに近いものである。

フランスの思想家であるジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリは、こうした構造をもつ思考のことを「リゾーム(根茎)」思考と名づけ、西欧の伝統的思考方法であるツリー型思考の対極として捉えた。

そして、西欧的思考の基盤であるツリー構造の思考は「死んだ」思考にすぎず、このリゾーム構造こそが「生きている」思考のかたちだと主張した。

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さて、言語という観点からみて、このネットワーク構造(リゾーム構造)がもっとも適切にあてはまるのは意味の世界である。

ある語の「意味」とは、その言語の語彙ネットワーク全体のなかでその語が占めている位置のことである。

たとえば「おとこ」という語のまわりには「ひと」「おんな」「ちち」「むすこ」「男性」「オス」「仕事」などなど無数の単語がネットワークとして結びついている。

そうしたネットワーク全体に占めるポジションこそが「おとこ」という語の「意味」なのである。

したがって、私たちにとって「語彙力を向上させる」とは、自分がもっている脳内の語彙ネットワークの網の目をさらに細かくしていく作業にほかならない。

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これと同じことが、センテンスにもあてはまる。

センテンスの意味とは、パラグラフ全体、テキスト全体、さらには、その書き手の他のテキスト全体もふくめた巨大なテキストネットワークのなかにおいて、そのセンテンスが占めている位置のことである。

センテンスそのものが独自に意味をもつのではない。全体のなかの一部分としてセンテンスが占めている位置から、意味が生み出されるのである。

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したがって、ここに2つのセンテンスがあるとして、その2つのセンテンスが、たとえ言語表現においてはまったく同一のものであるとしても、テキスト内での位置が異なるのであれば、その意味は必然的に異なるものである。

もしこれを同一の意味だとみなすとすれば、ドゥルーズ=ガタリ的な言い方をすれば、それは「死んだ」意味を捉えているのであって、「生きている」意味を捉えているのではない。

そしてこれをさらに敷衍すれば、同じことがパラグラフ、そしてテキストそのものにもあてはまる。

つまり全体に統一的な意味があるのであって、部分はその全体のなかでの位置によって意味が決定されるのである。

まず全体があり、そして部分がある。部分の集積が全体なのではない。


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さて最後に東京地下鉄路線図の話に戻ろう。

私は東京の地下鉄路線図をながめるのが大好きである。

じっとながめていると、いろいろなことがみえてくる。

たとえば、新宿から銀座にいくには、何通りの行き方があるのだろうか。

渋谷から御茶ノ水にいくには、どういう行き方が最も効率的なのだろうか。

竹橋から桜田門にいくには、はたして何分かかるのだろうか。

東京地下鉄路線は東京メトロのサイトからPDFファイルがダウンロードできる。

おそらく世界で最もチャーミングな鉄道ネットワークである東京の地下鉄路線を、皆さんにも、ぜひ楽しんでいただきたい。

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