【成瀬 日本語・英語・翻訳講座】日本語編(38)日本語の語彙構造(6)翻訳語の世界
(↑のつづき)
翻訳語は現代日本語のなかで「理知」の創造と表現を担っている。
その数は約1万語程度といわれる。その多くは明治時代につくられたものだが、いまでも新しい概念が出てくるとそれにあわせて新しくつくられている。[1]
明治のはじめ、私たちの先人は西欧語という、日本語とはまったく異質の体系の言葉と直面した。
ただ日本にとってこのようなまったく異質の体系の言葉と直面したのは歴史上で二度目だということも忘れてはならない。
一度目、つまり中国語との直面の際には日本人には中国語そのものを日本語のなかに融合させた。

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翻訳語の誕生
ところが二度目である西欧語との出会いでは、当時のエリートたちはそれを原語のままで読み下してその意味を汲み取るだけでは満足しなかった。
そして西欧語を日本語のかたちに置き換え、日本語の文脈の中に移し植えようと試みた。
すなわち翻訳である。
現在の私たちは、この西欧語の日本語への翻訳が成功であったと考えている。
これを通じて日本は非西欧諸国のなかで唯一「文明化」を遂げた国となり、西欧列強の最後尾に列することができたからである。
しかしそれは本当に100%の大成功だったのだろうか。
その成功の陰に隠れた副作用の部分はなかったのだろうか。

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翻訳語はまだ日本語に成りきっていない
現在の私たち日本人にとって翻訳語は絶対不可欠で存在である。
翻訳語なしに現在の日本語の書き言葉は成り立たない。
それにもかかわらず翻訳語は現在もなお自然な日本語には成りきってはいない。
そして日常の日本語に対してまるで別な種類の言葉のように混在している。
ここがポイントだ。
私たちは翻訳語を使わなければ満足に文章を書けなくなっている。
それなのにその翻訳語そのものが自分たちの言葉に成りきっていない。
あたかも「別な種類の言葉のように」混在しているのだ。
翻訳の現場で日本語に成りきっていない翻訳語を使っていると本当にいらだつことが多い。
そんなときにはなにもかもひっくり返したくなる気分に陥ることもある。
しかしそこをこらえて少しずつでも日本語を手直ししていくことが翻訳者に課せられた仕事ではないかと私は思っている。
[1] ただし最近では翻訳語は新漢語になる同時にカタカナ語にもなるのが通常である。たとえば、Corporate Financeは「企業財務」と訳されると同時に、「コーポレートファイナンス」という訳語が与えられている。さらに、mobile communicationに対する「モバイル通信」などのような漢語・カタカナのミックスタイプも出てきている。
(つづきは↓)
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