行政DXとスマートシティで描く近未来~デジタルで変わる住民起点のまちづくり~【IISE FORUM 2025 ブレイクアウトセッション(行政DX/Smart City編)】
国際社会経済研究所(IISE)が2月7日に開催したIISE FORUM 2025の後半では、各会場に分かれてテーマごとにより深い議論を進めるべく、ブレイクアウトセッションを実施しました。本記事では「行政DX/Smart City」テーマのセッションについて、内容をレポートします。
「行政DXとスマートシティで描く近未来~デジタルで変わる住民起点のまちづくり~」と題されたこちらのセッション。つくば市 政策イノベーション部科学技術戦略課 課長の中山 秀之 氏、株式会社PoliPoli 代表取締役/CEOの伊藤 和真 氏、青山社中株式会社 取締役COOの平木 省 氏、NECアメリカシニアマネージャーの服部 美里 氏、国際社会経済研究所(IISE)研究主幹の小松 正人が登壇し、行政DXをテーマにパネルディスカッションを実施しました。
第1部は、「近未来のまちづくり」をテーマに、デジタルガバメントとスマートシティの観点から「住民視点の行政について今なぜ改めて考えるべきなのか」を、第2部は、「行政における需要とは」をテーマに、「住民は行政に何を求めているのか」について意見交換が行われました。
第1部:「近未来のまちづくり」~住民視点の行政について今なぜ改めて考えるべきなのか~
需要(住民ニーズ)と供給(行政サービス)の関係性の変化
小松 2つの視点でディスカッションを進めていきたいと思います。1つ目の視点は、「需要(住民ニーズ)と供給(行政サービス)の関係性が変化しているのではないか」です。市バスを例に挙げますと、行政がルートを決め、住民は時刻表を見てバス停から乗車するのが従来型サービスです。
しかし、今後は、住民がスマホを使ってバスを呼ぶオンデマンドの市バスサービスが想定されます。デジタル技術により行政が需要に合わせてサービスを提供できる環境が整ってきました。
中山 つくば市もコミュニティバスのオンデマンド化の実証実験を進めています。従来、コミュニティバスは高齢者の通院用途が大半でした。

オンデマンド化により、24時間いつでもスマホで簡単に予約できるようになったことで、子供たちと公園に行きたいなど若い層の新たなニーズが生まれています。行政サービスにおいても、リアルタイムに需要と供給をマッチングできる新たな時代に入ったと感じています。
伊藤 行政と住民の関係性では、対話する場をつくり、住民の意見が反映されることで両者に信頼関係が生まれます。当社が作ったPoliPoli Govは、行政と住民をつなぐオンライン目安箱の役割を果たすものです。数千のコメントが寄せられるうち、9割以上は想定内。
しかし、そのうち数%は新たな気づきにつながることが多いと感じています。多様な声を吸収し、行政サービスに反映していくといった成功体験を積み重ねることが大事だと思います。
中山 デジタル技術を活用し、民間では新たな顧客体験の提供が拡大しています。行政はビジネスではないけれど、住民側からすれば“ここまでできるのではないか”という思いでニーズが変化している面もあると考えています。
行政DXとスマートシティの違いとは何か
小松 第1部における2つ目の視点は、「行政DXとスマートシティは何が違うのか」です。行政DXもスマートシティも、住民にとって住みたいまちを実現するツールだと考え
ています。
平木 どちらもツールですが、行政DXは点です。スマートシティは面で捉える必要があります。スマートシティの実現では、住民の参加率も重要です。

ベースとなるのは、伊藤さんのお話にもあった、行政と住民の信頼関係です。住民の声に対し、行政がどのように施策やサービスに反映したか。プロセスを可視化し、住民に分かりやすく伝えることが、スマートシティ成功の前提になると思います。
服部 「住民の声を生かす」という観点では、多種多様な住民が暮らすアメリカの事例は参考になる面もあると思います。カリフォルニア州サクラメントは非常に多民族な地域です。ホットラインも40以上の言語に対応しています。行政と住民の関係強化に向けて、コミュニティエンゲージメントに特化したチームが設立されました。金融や音楽など多彩なスペシャリストを集め、経済開発チームと連携し、予算を確保しながら取り組みを進めています。
具体的には、地域との橋渡しを担うコミュニティアンバサダー制度の導入や、SNSの積極的活用です。リアルな場での交流とともに情報発信により、住民が行政の取り組みに参加したくなるマインド形成に力を注いでいます。
第2部:「行政における需要とは」~住民は行政に何を求めているのか~
住民の声はどのようなものか
服部 第2部も、2つの視点からディスカッションを進めていきたいと思います。1つ目の視点は、「住民の声はどのようなものか」です。住民の声の分析という観点から、小松さん、お話しいただけますか。
小松 NECでは、自治体とともに政策立案支援サービスの実証実験を行っています。自治体がとっている住民アンケートをAIで分析し、政策との因果関係をエビデンスと
して出すというものです。例えば、ある地域で住みやすさと因果関係が強い要因は何かをAI分析したところ、世代によって結果が異なりました。
全世代では、「必要な行政情報の提供」が最も重要との結果となりました。30代から40代の男女では「子供を産み育てやすい」がトップになり、雇用機会も上位となりました。AI分析によるエビデンスに基づき、世代ごとに施策を打つことが、これからは必要になると思います。今、NECのAI技術とPoliPoli Govを使った実証も行っています。
伊藤 PoliPoli Govを通じて、群馬県の公共交通の課題に関する意見を募集しました。NECのAI技術を活用し、集まった意見の因果関係を分析し仮説を立てて政策につなげる取り組みの実証を行いました。AI分析は短時間で行えるため、効率的かつ迅速に住民サービス向上に寄与できると感じました。

小松 ある施策に対し、対象となるコミュニティや世代に向けて意見を収集できるPoliPoli Govと、AI技術を組み合わせることで、施策の質とスピードを高めることができると思います。
住民の声にどう対応していくか
服部 立場や環境、年代などが異なる住民の声をいかに収集し、行政に反映していくか、そこにデジタル技術を生かす意義があると再認識しました。第2部における2つ目の視点は、「住民の声にどう対応していくか」です。

中山 「どう対応するか」の前に、「いかに本音を引き出すか」が大切です。服部さんの事例紹介のポイントとなったオープンマインドの醸成がとても重要だと思います。日本人は本音と建前を使い分ける民族だと言われています。実際、地元の人とお話をしても、初期段階で本音は出てきません。
対話を通じて信頼関係を構築していく中で、本音を聞くことができると思っています。スマートシティの主役は住民です。行政が最初に路線を敷くのではなく、現地に赴いて住民の話に耳を傾け、真の課題を解決するために施策を立案し実行することが大事です。
平木 「住民の声を行政に生かす」を民間の視点に変えると、「消費者の声をビジネスに生かす」です。企業では当たり前のこと。サプライヤーとしての意識が強い行政を、カスタマーベースに持っていくことが、これからは重要です。施策に関して、事前のマーケットリサーチと事後のチューニングを、行政の中で文化として根付かせていくことも求められます。また、住民の声に対応するという一方向ではなく、住民も参加する意識が大切です。
人口減少が進む中、地域を巻き込むことで行政サービスを維持していく発想も必要です。DXはツールではありますが、行政サービスを大きく転換する鍵になると思っています。
小松 みなさん、熱いディスカッションをありがとうございました。まず、住民起点でどういう“まち”にしたいか、住民の多様な声を収集することが大切だと改めて認識しました。またDXはツールに過ぎないけれど、行政サービスを大きく変える鍵になるとの、平木さんのご指摘はスマートシティ前進に向けた力強いメッセージだと思います。
さらに、データを活用し住民に対してプロセスを見える化することは、デジタル時代の行政サービスのベースになると思いました。


【アーカイブ動画・抄録を公開中】
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アーカイブ動画
抄録
https://www.i-ise.com/jp/information/symposium/2025/sym_iise-forum2025_ab.html
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