約3割が新規顧客の獲得、イノベーションに期待。ブランディングの8割が取り組み意向あり……注目度を高めるソートリーダーシップ、実態調査
近年、企業活動においてその重要性を増している「ソートリーダーシップ(Thought Leadership、TL)」。新しい考え方を世の中に提示し、共感によりステークホルダーを共創へ誘引することで、新たな顧客や市場を創造するマーケティング手法の1つです。国際社会経済研究所(IISE)は日本のビジネスシーンにおける現在の実態を測るべく、調査を実施しました。
本記事ではその調査結果を、これまでTL Hubでまとめてきたソートリーダーシップの考え方や、TL Hubでインタビューしてきた様々なKey Opinion Leaderのみなさんの言葉から紐解きながら、企業がソートリーダーシップを推進する上でいかなるヒントがあるか、分析していきます。興味深い結果となりました。
共通課題は2つ。「新規顧客の獲得」と「長期的なビジネス成長の促進」が約3割
2024年9月26日から10月8日にかけてインターネットを通じ、全国の計1243人のサンプルに対して実施した今回の実態調査。詳細な対象者の条件は以下に記載します。
対象者条件:20歳~64歳
-経営者/役員、会社員のいずれか
-下記の職種(いずれか一つ以上に該当)
経営企画、経営戦略、新規事業開発・ビジネスデベロップメント、マーケティング、商品企画、商品開発、広報・PR広告・宣伝、IR、ブランディング、ESG・サスティナビリティ推進・CSR、戦略・マーケ系コンサルティング
また、調査結果の詳報は以下リンクよりダウンロード可能です。より深く知りたいという方はぜひ、チェックしてみてください。
https://www.i-ise.com/jp/information/press/2025/20250109.html
それでは、調査結果から気になる箇所をピックアップしていきましょう。まずは調査結果のP11-12から。


これらは対象者に、自社が「現在抱えている課題」について訊いた結果です。
多くの職種を超えた共通の事業課題として、「新規顧客の獲得」と「長期的なビジネス成長の促進」の2つが、ここでは主に上がっています。同時に興味深いのは職種ごとに固有の課題が続いていく構造です。みなさんも、各位における課題と照らし合わせてみていただけるといいでしょう。
ソートリーダーシップへの注目度は、前に増して高まる
ソートリーダーシップの認知度は現在どうなっているでしょうか。P16を見てみます。

現状ではこの通り、「聞いたことある」が10%、「具体的な内容まで理解している」は6%。この数字を高いとみるか、低いとみるか。他の項目も見比べてみると、一般用語になりつつある「デジタルマーケティング」ですら「聞いたことある」が33%、「具体的な内容まで理解している」は17%と、あまり高いとはいえません。さらに、10年ほど前からマーケティング業界では隆盛を誇る「マーケティング・オートメーション」がそれぞれ21%と12%であることを考えると、現時点における「ソートリーダーシップ」の10%と6%は決して低くない、むしろ相応の数値であると読み解くことができます。
加えて、P17の「属性別詳細」の結果を見てみましょう。

P12で取り上げた「ブランディング」の人からは、「聞いたことがある」25%と比較的高い認知度です。さらに19%が「内容まで詳しく知っている」と、他の職種に比べて高い割合となっています。次いで「ESG、サスティナビリティ推進、CSR」の人からの認知度が22%と続きました。
他にも「戦略・マーケ系コンサルティング」「マーケティング」「広報、PR」「新規事業開発、ビジネスデベロップメント」などからの認知度は比較的高い数字が続きます。特に「広報、PR」は「聞いたことがある」11%に対し「内容まで詳しく知っている」9%と、近い数字を記録しています。「広報、PR」の人で、ソートリーダーシップを認知している人は、その理解度も他の職種に比べて高いようです。
今後ソートリーダーシップを中心に担っていくのは、こういった職種の人々、またはそれに近しい専門性を持った人々であるといえそうです。
P18も重要なデータです。先のP16において既に表れていましたが、全体で見た時のソートリーダーシップへの注目度は10%も、そのうちの「6割」が「以前に比べて注目度が高まっている」と回答しているのです。この割合の高さは注目に値します。

では、なぜソートリーダーシップの「注目度」が今、高まっているのか。それは今が「VUCA」の時代と呼ばれていることが背景にあるのではないかと考えています。未来が不安定で不確実であり、予測がつかず、様々な要素が複雑に絡み合う時代。ニーズも価値観も変化を続け、過去の知見やこれまでの成功例がもはや通用しない。そうしたビジネス環境の中で、今ある顧客や市場に後追いで対応するのではなく、「新しい考え方を世の中に提示し、自ら新たな顧客や市場を創造するための取り組み(=ソートリーダーシップ)」が、これまで以上に求められているのではないでしょうか。
なお調査では、IISEが考えるソートリーダーシップの定義(詳しくはこちら)を抜粋して紹介し、「内容を理解できるか」という設問も用意しました。結果、80%以上の回答者がその内容を(よく、元から/だいたい/少し)理解できた、という回答になりました。
ソートリーダーシップなら、今の課題を解決できる
ビジネスシーンにおいて確実に注目度は上がっているソートリーダーシップ。では、それを推進することによって、いかなる効果を期待できるでしょうか。回答者の見解を紐解いていきます。
P23は、企業が抱えている「現在の課題」(P12)との関係を踏まえて、回答結果を分析した図になります。

まずはP23、「1:新市場への参入/イノベーション開発」は50%と、ソートリーダーシップが解決しうる課題として最も期待されている事柄です。「2:イノベーションの推進/イノベーションが起きやすい組織変革」(43%)「3:新規顧客の獲得」(43%)「4:共創パートナーシップ構築/業界全体を盛り上げるエコシステム構築」(42%)が続きます。
「両利きの経営」という言葉があります。経営学者の入山章栄氏は「企業がイノベーションを起こす上で重要となる、『知の深化』と『知の探索』を両立する経営の実践」と説明し、さらに次のように続けます。「『知の深化』は、利益を生む既存の知を深掘りすること。『知の探索』は、イノベーション創出のためにいろいろなものを幅広く見ること。しかし、その両立は難しい。成果が見えない『知の探索』を続けるのは大変です」。
入山氏は「両利きの経営」と、ソートリーダーシップの関係性について、それでも「知の探索」を続けていくためには、ステークホルダーに対して「腹落ちする未来」が必要となり、ソートリーダーシップにより「こういう未来をつくりたい」といった思想、哲学を語ることが、「両利きの経営」の実践でも求められるといいます。
今回の調査結果からもソートリーダーシップは、イノベーションを創出し新市場への参入を可能にするための原動力になりえる可能性があるといえるでしょう。先の見えないVUCAの時代だからこそ、思想、哲学に基づいた「ソート」を内外に発信していくことが実現までの行動を後押ししていきます。
次に比較的数字の高い「2:イノベーションの推進/イノベーションが起きやすい組織変革」(43%)「4:共創パートナーシップ構築/業界全体を盛り上げるエコシステム構築」(42%)を見てみます。
楽天大学学長で仲山考材代表の仲山進也氏は「チームの成長ステージ」を4つに分けて説明しています。加えて多くの企業組織は分業化が進みすぎて、1段階目の「フォーミング(同調期)」のままになっていると指摘します。メンバーは空気を読んで指示命令によって動く「相手 vs. 自分」の構図になり、チャレンジングなアイデアがあっても言えずに黙っています。結果、イノベーションが生まれにくくなっています。
「イノベーションが起きやすい組織変革」を実現することで、言いたいことを言い合える心理的安全性が育まれると、「問題 vs. 私たち」という構図になります。メンバー全員がそろって同じ方向を向いて、問題と対峙できるようになるのです。こうした「チームビルディング」の考え方は社内だけでなく、社外の共創パートナーとの関係性づくりにも役に立ちます。共創パートナーシップやエコシステム構築を進め、みなで同じ方向を向くために「ソート」を活用する余地があります。
「3:新規顧客の獲得」と「7:長期的なビジネス成長の促進」。この2つは図表に記されている通り、課題に感じている人も多く、かつソートリーダーシップで解決できるとの期待も高いと回答している項目です。ソートリーダーシップの成果(アウトカム)として定めるには相性が良いのでしょう。
P24は、職種別に回答結果を整理したものです。比較的ソートリーダーシップへの認知度、理解度の高かった職種、「ブランディング」「ESG、サスティナビリティ推進、CSR」「マーケティング」「戦略・マーケ系コンサルティング」「広報、PR」「新規事業開発、ビジネスデベロップメント」の結果を参照してみましょう。

ブランディング
「期待する効果(以下、期待)」の上位が、P23の結果とリンクしています。「新市場への参入/イノベーション開発」と「長期的なビジネス成長の促進」が上位に来ています。
またブランディングの職種からは、「現在抱えている課題(P12、以下「課題」)」の3位に「リーダーシップの強化」が上がっていることも改めて注目してみましょう。
インターブランドジャパンの佐藤紀子氏は「倫理観や価値観、パーパスなどを、組織や企業活動の中にどう『実装』するかを語るべき」と、「実装型ソートリーダーシップ」の必要性について言及しています。今の日本企業は実際に行動に移す(実装する)ことで唯一無二の形を作り、リードできるかどうかで差がつくと述べます。
その背景には、社会の関心や期待が変化し、ブランディングの文脈が商品やサービスから企業自体へと移っていることがあるのかもしれません。加えて「遠い先の未来を語るより、今を切り取ってほしい」という市場からの期待感も高まっていると言います。ブランディングに携わる方々は、こうした環境の変化を如実に感じ取り、「リーダーシップの強化」の重要性を実際、肌感覚で理解されていると思います。それが調査結果にも表れているといえるでしょう。
ESG、サスティナビリティ推進、CSR
「期待」は、「見込み顧客の獲得・商談」と「ブランドの認知度向上/パーセプション向上」が上位に来ています。「課題」の1位は「既存顧客の維持/クロスセル拡大」です。
こうした職種につながる視点として、talikiの中村多伽氏は社会起業家に求められる姿勢を説明しています。社会起業家はその事業の性質上、利益が出るという形での分かりやすいメリットを出しにくい場合があります。だからこそ「こんな世界を実現したくないか?」という「思い」に共感してもらうことが重要。その「共感」が「期待」の回答に挙がっている「見込み顧客の獲得」や「ブランドの認知度向上」など、あるいは既存顧客をつなぎとめる(維持)といった、本職種における「課題」に対応するのです。
マーケティング/戦略・マーケ系コンサルティング
マーケティングの人からの回答では、「課題」と「期待」、いずれも「新規顧客の獲得」が1位となりました。戦略・マーケ系コンサルティングの人からの回答も、「課題」1位が「見込み客の獲得・商談」、「期待」1位が「新規顧客の獲得」と、類似する内容です。
シンフォニーマーケティングの庭山一郎氏は、日本におけるBtoBマーケティングの課題を述べています。まず、BtoB企業が取り組むべきマーケティングは3つ。1つ目がリサーチ。2つ目がブランディング。そして3つ目がデマンドです。これは新たに商談を作り、その商談を営業や販売代理店の営業に安定供給するもの。日本のBtoB企業が圧倒的に遅れているのが、このデマンドだといいます。デマンドは成功すれば売上が跳ね上がる一方、デマンドを持っていない日本のBtoB企業は、大きなハンディキャップを背負ってグローバルで戦うことになると指摘します。
日本企業が特に不得手と指摘されるデマンド。新規顧客や見込み顧客の獲得を強化するうえで、ソートリーダーシップのアプローチが有用と期待されていることは見逃せません。
また、BtoCマーケターの西口一希氏はある「1人の顧客(N=1)」を徹底的に分析し、そのニーズに応える商品を生み出すことで、新たな市場を創出する「顧客起点マーケティング」を提唱しています。「商品やサービスを届けたい、ある1人の顧客がいます。そこにいかなる価値が響くかは、マスの分析からだけは得られません。目の前にいる1人の顧客、N1を深掘りするからこそ、見えてくるのです。これがN1分析のアプローチです」。
すなわち、まだ見えていない潜在的なニーズを、「N1」を徹底的に理解することで見つけ出す。「便益」と「独自性」を兼ね備えた商品やサービスを通して新たな「価値」を生む。その新たな価値によって2人目、3人目を魅了していき、やがて大きな市場を築いていこうという考え方です。「ソート」を通して新たな顧客や市場の創造を目指すうえでのヒントになるでしょう。
デジタルによる定量的な市場調査・分析が当たり前になった時代だからこそ、見過ごされてしまいかねない定性的なアプローチの重要性がここに表れています。BtoB・BtoCの両方で、長年蓄積されてきたマーケティングの知見は、ソートリーダーシップに生かせる部分が大いにあります。
「広報、PR」
「課題」の1位は「新規顧客の獲得」です。先述の通り「内容まで詳しく知っている」人の割合が比較的高いのが、この職種の特徴です。この背景として「オーセンティシティ」というPRにおける考え方があると考えています。
PRストラテジストの本田哲也氏はオーセンティシティを「身の丈に合った、その企業らしいこと」と意訳して説明しています。さらに、これはソートリーダーシップにおいても、相手にメッセージを伝えるという観点でとても重要であると指摘します。いかに内容が素晴らしいソートでも、その企業が言う必要があるのか、他社が伝えるべきメッセージではないのかと、疑問が生じた瞬間に、興味や関心を削がれてしまうからです。ソートを考える上で、企業文化や歴史、事業領域などは無視できません。ソートへの納得感は「共感」を生みやすくすると、本田氏は強調します。
広報、PR の「期待」2位(同率)に「自社の強み強化・創出」があるのも、こうした背景からと考えられます。本田氏のいう「企業文化や歴史、事業領域」は、自社の強みの源泉であり、オーセンティシティの源泉でもあります。そこを突き詰めていく先に、「共感」による「新規顧客の獲得」という課題の解決に至る道筋が見えてきそうですね。
新規事業開発、ビジネスデベロップメント
「期待」の同率1位は「新市場への参入/イノベーション開発」です。この職種は当然、新規事業をいかに継続して生み出すか、新しい市場をいかに創造するかが命題となります。そこにソートリーダーシップのアプローチが生かせると考えられ始めていることが分かります。
早稲田大学教授の樋原伸彦氏は「20世紀のビジネスを支えてきた『予測合理性』が効かなくなっている」ことを指摘します。予測が難しいために、目的や事業計画を作っても「絵に描いた餅」になってしまう。そこで事業をいくつも成功させている起業家や経営者を調査し、成功の秘訣を抽出した21世紀型のビジネス手法「エフェクチュエーション」が注目されています。
起業家に話を聞くと、新規事業の出発点は自分の持っているものが何なのかという思考から始まっています。エフェクチュエーションにおいて「アスピレーション(Aspiration:熱望、願望、大志)」とされるこの概念は、ソートリーダーシップにおけるソートと同じものと考えられます。「予測合理性が通じない中で、それでも前へ進みたい。そのために、エフェクチュエーションのような理論が注目されているのだと思います」と樋原氏は言います。
ブランディングの「80%」が、ソートリーダーシップに強い意向
具体的にソートリーダーシップを進めたいと考えている人、また実際に進めている人には、何が見えているのでしょうか。
P28では、職種などの属性別に、ソートリーダーシップへの取り組み意向度をまとめています。やはり「ブランディング」「マーケティング」「新規事業開発」などの人々からの意向は強く出ています。特に「ブランディング」からは80%と、これはかなりの数字です。

もう少し具体的な内容に入っていきましょう。ソートリーダーシップの成果を実感できるまで、どれくらいの時間がかかるのか。ここの認識合わせが社内で統一されていると、足並みをそろえてソートリーダーシップを推進できるため、大事なテーマです。
実際に取り組んでいる人からは、ソートリーダーシップを始める前の期待値と、実際のところを。まだこれからの人からは、現在の期待値を、それぞれ訊きました。P31が調査結果です。

当初の期待と実際の成果、いずれも平均3年以上の時間を要する(だろう)という結果になりました。やはり、長い目で見ることがソートリーダーシップの大前提と言えます。むしろ「経験なし」の人の期待値が「4.0年」に対し、実際に経験した人の実感では「3.4年」と、覚悟していたより早く成果を感じる傾向にあるともいえます。想定以上に成果が出ないという忍耐の時間は、意外と短いという意味でも、前向きなデータです。だからこそ、「今」から始めることが、有意義であるといえます。
京都大学総合博物館准教授の塩瀬隆之氏は、ソートの源泉になる「問い」を立てることを、時間をかけて行うべきといいます。世間の方が期待されるような、思わず立ち止まるほどに魅力的な「問い」とは、考え尽くした先にしか出会えない。まずは今、自分が向き合うべきことに対して、自分自身で考え尽くすための一定程度の時間を確保すべきと述べます。そして、重要なのは「大切な問いは自分の中にある」という大前提を自覚することだと強調しています。
「世間の方が期待されるような、思わず立ち止まるほどに魅力的な『問い』」。これを多くの人からの「共感」を生み出すソートと捉えた時、これを確立するのは、一朝一夕ではできません。
しかし、それでも「自分の中にある問い」に向き合い続けた先、数年後、「新規顧客の獲得」と「長期的なビジネス成長の促進」という、大きな成果に結実する期待値は、決して低くはありません。
ここで、ソートリーダーシップに実際に取り組む人に、「満足度」を訊いてみた結果(P32)を見てみましょう。

まずは「成果に満足」と回答した割合が全体の77%と、十分に高い数値を記録しています。成果を実感できるまで時間を要するソートリーダーシップですが、その分の見返りは期待してよいものであると窺えます。
そして、それ以上に注目すべきと捉えられるのが、「不満」を強く感じるという回答の割合が「0%」である、ということ。これは珍しい結果です。ソートリーダーシップを始めた人々は、皆がその意義や成果を信じて、長い目で取り組みを進めていることが想像できます。
最後のページも見てみましょう。このP37で調査したのは、ソートリーダーシップで先行する企業に、どんなコンテンツの提供を求めるか。ソートリーダーシップへの取り組み意向が高い人からの回答トップ(37%)は、「オンラインコミュニティの運営」でした。

「やはり、人は人の話を聞きたいのです」と、noteプロデューサーの徳力基彦氏は指摘しています。SNS普及以後の時代、中心に「人」がいる、発信者の「顔」が見えるコンテンツが求められています。オンラインコミュニティで行われているのは、まさに「顔」が見える相互の「おしゃべり」的コミュニケーションです。徳力氏はまた、ソートリーダーになるためには、その分野の情報が自然に集まる仕組みを作る必要があるとも補足します。知らないことも含めて発信すれば、誰かが追加の情報をもたらしてくれたり、誰かが正してくれたりします。こうしたコミュニケーションを続けることで、自身の見識が高まり、情報が集まる仕組みができていきます。足りない部分のフィードバックをもらうことで、ソートリーダーとしての成長が得られるということです。
コラム:ソートリーダーシップ、といえば誰?
最後に少し余談として、「ソートリーダーと聞いて思い浮かべる人物・企業」について訊いた、P20の結果を見てみます。

孫正義氏、豊田章男氏、スティーブ・ジョブズ氏をはじめとする、著名な経営者の方々の名前が大いに上がっています。中にはメジャーリーグで大活躍する大谷翔平氏の名前も。共通するのは、スーパースター、ということ。
これも一つの側面に違いありません。しかし、スーパースターでなければソートリーダーになれないという先入観、そのバイアスがソートリーダーシップを阻害する要因の一つともいえます。調査結果P34(ソートリーダーシップに取り組む上での課題、ハードル)の上位2番目に「ソートリーダーに相応しい人物が社内に存在していない」という回答が来ていることからも、それは推察されます。

ですが、私たちIISEは、「ソートリーダー=スーパースター」であるとは考えていません。もちろんここに名前の挙がっている方々はみなソートリーダーであり、ソートリーダーシップを体現する企業の代表例ですが、それだけではありません。
ソートリーダーの条件とは
1. 専門性
2. 課題を見つける力
3. 哲学・思想
です。これからの世の中では、これらの条件を因数分解してチームで再現することで、一人ひとりがソートリーダーの役割を担うこともできるのです。
P35は、先の設問(ソートリーダーシップの課題、ハードル)について、「取り組みへの意向が高い人」の回答に絞った場合の結果をまとめたもの。
最も高い回答率となったのは「社内の文化や風土がソートリーダーシップに適していない」(36%)という結果になっています。

逆に、「ソートリーダーシップに適した社内文化、風土」とは何か。ファンベースカンパニーの津田匡保氏は、「ファン社員こそソートリーダー」といっています。社内にいながら、その企業のファンでもある「ファン社員」こそが、企業やブランドの理念を自分の周りの人やファンに伝えてくれるソートリーダーではないかと示唆しています。
ソートリーダーシップ全般で、重要視されるキーコンセプトは「共感」と「仲間づくり」です。ソートを先に持っていき、各ステークホルダーに「共感」を生み、彼らが仲間になっていくことで、事業をよりスムーズに推進できるようになります。その立役者は、カリスマリーダーとは限らず、たとえばこうした「ファン社員」たちが担うこともできます。
また新規事業は「天才の所業」ではないと、Sun Asteriskの井上一鷹氏はいいます。1人の天才の再現性は、天才その人自身でしか成し得ませんが、複数の専門家がチームを組み、「1人の天才であるかのように動く」ことができれば、再現性を高められるということ。それに近いことは塩瀬氏も、「ソートリーダーズ」という表現を用いて説明しています。ソートリーダーは単数形のままよりも、複数形、「ソートリーダーズ」というような集合体として考えた方が、より機能すると指摘します。
「天才」ではない、「普通の人たち」が「共感」のもとに集まって、個々の専門領域を生かしながら、ソートリーダーシップを進めていく。そのヒントがこれらの言葉にはあります。
ここまでお読みいただいた方には、日本のビジネスシーンにおけるソートリーダーシップの可能性が、少しずつ見えてきたはずです。もっと考えを深めたい、取り組みを進めたいというご興味のある方は、是非、「TL Hub」に掲載している様々な記事をチェックしてみてください。
最終更新日:2025年3月21日
公開:2025年1月9日
企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、榛葉幸哉、石垣亜純)
