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人に歴史あり|何者でなくても、いいじゃないか


正直に言えば、最近この時間がなければやってられない。

職員室にいると、いつの間にか「らしく」振る舞っている自分に気づく。
言葉を選んで、感情を整えて、空気を読んで。
頼られる人として、ちゃんとしている人として。
それが当たり前だと思って、息が詰まりながらも役割を演じている自分。

でも支援員さんといると、違う自分になれるのだ。


以前にも少し書いたが、その時もとても新鮮な時間だった。
[前回の記事はこちら]

この日も、二人で約150台のパソコンの設定をしていた。地味だが、とても壮大な作業である。
そんな日の会話だ。


因みに、支援員さんにも、親しみを込めて呼び名がついた。
ルパン三世の次元に雰囲気が似ている。
髭はないけれど、どこか飄々としていて、色々な世界を知っている。


だから我が家では、彼を「次元」と呼ぶことにした。



わからないことが、わかるようになる喜び

次元と仕事をしていると、スキルがついていく実感がある。
昨日できなかったことが、今日できる。それだけのことなのに、妙に嬉しい。

そして仕事をしながら、人との向き合い方、仕事への姿勢、そういうものを間近で見せてもらっている。

わからないことを聞いても、責められない。困っていることを言っても、面倒くさがらずに、一緒に考えてもらえる。
そのせいなのか、次元の持つ不思議な雰囲気のお陰なのか分からないが、自分の気持ちが素直に言えていることに驚く。

会話をしていても、不思議と無駄が一つもないのだ。
ちゃんと前に進んでいる感覚があって、話すたびに、少しずつ視界が開けてくるのがわかる。


ごもっともな質問

学校という組織をよく知らないから、と前置きして、時々率直な質問を投げてくる。

「この役割を担う人は、いないんですか?」
「組織として、どうなっているんですか?」

私もそう思う。
だから返す言葉がない。
外から見ると不思議なことが、山ほどあるのだと思う。

学校現場は、大変なんですね。
静かにそう言った。
批判でも嫌みでもない。ただ素直に口から出た言葉。

それが、かえって刺さる。


幅のある人だなあ

次元が、自分のことを少し話してくれた。

学生時代にベンチャーを立ち上げたこと。名だたる大手の誘いを断って(今思えば少し後悔していると笑っていたが)、自分で何かをやりたかったのだと。
途中で挫折もしたけれど、その後はイベントを立ち上げたり、黎明期のインターネット普及に関わったりと、とにかく様々なことをやってきたと話した。

自分のストーリーを語る彼は、なんだかキラキラしていた。

成功してきた人のまぶしさ、というより、
自分の通ってきた道を、自分のものとして持っている人の光だった。

幅のある人だなあ、と思った。
そして同時に、自分の気持ちにも気づいた。

私が欲しいのは、これだったんだ。

自分はずっとここにいる。
世界はもっと広いというのに。


自分が何者かわからなくなる感覚

そのことを、正直に話してみた。

中年の危機にあること。
一つのことしかできないのではないかと思うこと。
自分が一体何者なのか、最近よくわからなくなっていること。

すると支援員さんは、
「いや」
と、間髪入れずに返してきた。

「一つのことをずっと続けるだけで、すごいことですよ。私は何も残っていない。
何者かというより、誰だって何者でもないんですよ。みんな、作られたものなんです

そして、こう続けた。

「学校もねえ、先生の立場では言いにくいかもしれないけれど、作られたものじゃないですか。
世間はそんなに甘くないし、綺麗事で済むことでもない。つまり、作られたもので教育を行っていませんか」

ただ、頷くことしかできなかった。


何者でなくても、いいじゃないか

これまでの私なら、何者でもない、と気づいた瞬間に、もっと頑張ろうとしたと思う。

私は、自分が「学校の先生」という役割の中でしか生きてこなかったように感じて焦っていたし、今も何かを探し続けている。


でも、その「先生」という役割自体も、絶対的なものではない。社会が作った、一つの形にすぎないのかもしれない。
だとしたら、自分の価値は、その役割の中だけで決まるわけではないだろう。

だから、その役割を離れたとしても、自分を作り直していけばいいんだ、と。そう思うことができた。


まだ、うまく言葉にはできない。頭ではわかっても、行動に移すにはエネルギーと少しの勇気も必要だ。

それでも、あの言葉が、ずっと頭の中に強く残っている。
もしかすると、この出会いが、次の場所へ進むための小さな始まりとなるのかもしれない。




そしてこのあと、次元はもう一つ、深く残る言葉をくれた。
「先生、私が結婚して学んだ最大のことは何だと思いますか?」

つづく。


[伴走者は、職場の外にいた|次元がくれた言葉]

[ハードロックが流れた昼休み|人にしかできないことって]



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