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会社が大きくなったのに、経営幹部・管理職が育たない理由

現場で一番頼りになる人を、管理職にした。
ドライバーからの信頼もある。
配車も分かる。
荷主対応もできる。
社長から見ても、現場を任せるならこの人だと思った。

それなのに、いざ管理職にすると、思ったように動けない。
部下に強く言えない。
数字を見て判断できない。
問題が起きると、結局社長に確認が戻ってくる。
現場では優秀だったはずなのに、管理職としてはどこか頼りない。

この時、多くの会社はこう考えます。

管理職に向いていなかったのか。
本人の意識が足りないのか。
もっと責任感を持ってほしい。
やっぱり外から経験者を採るべきなのか。

でも、ここで一度疑った方がいい前提があります。
現場で優秀な人なら、管理職もできるはずだ。
この前提です。

現場で成果を出す力と、人を通じて成果を出す力は別物です。

内部登用がうまくいかないのは、本人の能力が低いからとは限りません。
会社が、現場社員から管理職へ変わるための段階を設計できていないことがあります。


1.現場で優秀な人ほど、管理職で苦しむことがある

運送会社では、現場で優秀な人が管理職候補になりやすいです。

配車をよく分かっている。
ドライバーとの関係がある。
荷主のクセも知っている。
トラブル対応も早い。
社長の考えも、ある程度分かっている。

だから管理職に上げる。
これは自然な流れです。

ただ、ここに落とし穴があります。

現場で優秀な人は、自分で処理する力が高い人です。
しかし管理職に必要なのは、自分で処理する力だけではありません。

人に任せる力。
部下の状態を見る力。
問題を早く拾う力。
優先順位をつける力。
数字を見て判断する力。
社長の方針を現場に伝える力。
感情ではなく基準で判断する力。

求められる能力が変わります。

それなのに、会社側がその変化を教えないまま、肩書きだけ渡してしまう。
その結果、本人は何をすれば管理職として正解なのか分からなくなります。

現場で優秀だった人が管理職で苦しむのは、力がないからではありません。
求められる役割が変わったことを、会社が言語化していないからです。

2.管理職にしたのに、なぜ社長判断に戻ってくるのか

管理職を置いたはずなのに、結局社長に判断が戻ってくる会社があります。

配車の判断も社長。
荷主対応の相談も社長。
ドライバー同士のトラブルも社長。
採用や教育の判断も社長。
会議で決めたことも、最後は社長が動かす。

この状態になると、社長はこう思います。

任せたのに、なぜ決めないのか。
もっと自分で考えてほしい。
いちいち確認しないでほしい。

ただ、管理職側から見ると、決められない理由があります。

どこまで決めていいのか分からない。
どの判断は社長確認なのか分からない。
何を優先すればいいのか分からない。
判断を間違えた時に、どこまで許されるのか分からない。

この状態で、自分から決めろと言われても難しいです。

任せたのに育たないのではありません。
任せ方が設計されていないのです。

ここが、かなり重要です。

管理職に必要なのは、気合いではありません。
判断してよい範囲と、判断するための基準です。

3.役職を与えても、役割を渡さなければ育たない

管理職という肩書きをつける。
主任にする。
所長にする。
部長にする。

それ自体は必要です。
ただ、肩書きだけでは人は育ちません。

大事なのは、その人が何を持つのかです。

配車全体を見るのか。
ドライバーの教育を見るのか。
荷主対応を見るのか。
事故やクレームの初期対応を見るのか。
数字を見て改善案を出すのか。
会議で決まったことを現場へ落とすのか。

ここが曖昧なまま役職だけつけると、本人は現場の延長で動きます。

つまり、今まで通り自分が動いて解決しようとする。
部下に任せるより、自分でやった方が早い。
問題が起きたら、社長へ確認する。
数字を見るより、現場感覚で判断する。

これでは管理職として育ちません。

役職を与えることと、役割を渡すことは違います。

役割が明確になって初めて、その人は管理職として何を伸ばせばいいのかが分かります。

4.内部登用で必要なのは、現場スキルの延長ではなく、視点の切り替え

内部登用の強みは、現場を知っていることです。
これは大きな武器です。

外から来た人には分からない、会社の空気があります。
ドライバーの性格も分かる。
荷主との関係も分かる。
過去の経緯も分かる。
現場のリアルな苦しさも分かる。

だから内部登用には価値があります。

ただし、現場を知っているだけでは管理職にはなれません。
必要なのは、視点の切り替えです。

今日の便をどう回すかから、来月も無理なく回る状態をどう作るかへ。
目の前のトラブル対応から、同じトラブルが起きない仕組みづくりへ。
自分が動くことから、部下が動ける状態を作ることへ。
社長に確認することから、自分で判断して結果を振り返ることへ。

管理職とは、現場で一番頑張る人ではありません。
現場が動ける状態を作る人です。

この切り替えができないまま昇格すると、本人はずっとプレイヤーのまま苦しみます。

5.管理職に数字を見せなければ、経営感覚は育たない

内部登用した管理職に、経営感覚を持ってほしい。
そう考える社長は多いはずです。

ただ、経営感覚は気合いで育ちません。
数字を見て、判断し、結果を振り返る経験で育ちます。

売上だけを見せても足りません。

荷主別にどこが残しているのか。
どのコースが現場を苦しめているのか。
どの車両の動き方が薄いのか。
どの荷主は交渉が必要なのか。
どの仕事は増やすべきではないのか。
残業や拘束時間がどこに偏っているのか。
事故やクレームがどの現場で起きやすいのか。

こうした数字と現場をつなげて見せる必要があります。

管理職に経営感覚がないのではありません。
経営感覚が育つ数字と判断経験を渡していないだけかもしれません。

数字は責めるために見せるものではありません。
判断するために見せるものです。

5.会議を報告の場にしていると、管理職は育たない

管理職を育てるうえで、会議の使い方はかなり重要です。

報告だけの会議では、管理職は育ちません。

今月の売上はこうでした。
事故は何件でした。
採用はこうでした。
現場ではこういう問題がありました。

ここで終わると、管理職は説明する人のままです。

育てるなら、会議で判断させる必要があります。

この荷主は今後どうするのか。
このコースは見直すのか。
このドライバーの教育を誰が見るのか。
この事故を来月どう減らすのか。
この仕事は増やすべきか、交渉すべきか。
誰が、いつまでに、何をするのか。

ここまで決める。

会議は、社長が答えを出す場ではありません。
管理職が判断経験を積む場です。

もちろん、最初から完璧な判断はできません。
判断が浅いこともあります。
抜け漏れもあります。
でも、それを修正するから育ちます。

管理職は、正解を聞いて育つのではありません。
判断して、外して、直すことで育ちます。

6.社長が答えを言いすぎると、管理職は考えなくなる

社長は経験があります。
現場も知っている。
荷主も知っている。
数字も見ている。
だから、話を聞いた瞬間に答えが見える。

これは強みです。

ただ、管理職育成では、その強みが邪魔になることがあります。

社長が毎回すぐに答えを出す。
社長が全部判断する。
社長が先回りして指示する。
すると管理職は、自分で考える前に社長の答えを待つようになります。

そして、いつの間にか管理職は判断者ではなく伝達者になります。

幹部を育てたいなら、社長が答えを言わない時間も必要です。

どう見ているのか。
なぜそう考えたのか。
他に選択肢はないのか。
その判断を続けると、来月どうなるのか。
部下にはどう伝えるのか。
数字では何を確認するのか。

こう問いかける。

社長が正解を渡し続ける会社では、管理職は社長の代わりになれません。
社長の判断基準を考える機会がないからです。

7.内部登用を成功させるために、まずやるべきこと

内部登用を成功させるために、最初から完璧な育成制度は必要ありません。
まずは、次の5つから始めるべきです。

1つ目は、管理職に任せる範囲を決めることです。

配車なのか。
人の管理なのか。
荷主対応なのか。
教育なのか。
数字管理なのか。
どの領域を持つのかを明確にします。

2つ目は、判断してよい範囲を決めることです。

どこまで管理職が決めてよいのか。
どこから社長確認なのか。
どの金額、どの条件、どのトラブルは上げるのか。
ここを決めます。

3つ目は、見る数字を絞ることです。

すべての数字を見る必要はありません。
役割に応じて、見るべき数字を決める。
配車を見る人なら、荷主別、コース別、車両別。
人を見る人なら、残業、離職、事故、教育状況。
営業を見る人なら、荷主別の状態、交渉進捗、案件の質。

4つ目は、会議で判断させることです。

報告だけで終わらせない。
どうするかを考えさせる。
決めさせる。
動かせる。
結果を振り返る。

5つ目は、評価基準を変えることです。

現場で一番頑張った人ではなく、チームを動かし、判断し、改善できた人を評価する。
ここを変えないと、管理職はいつまでもプレイヤーとして頑張ってしまいます。

8.まとめ

会社が大きくなったのに、内部登用した管理職が育たない。
この悩みは、運送会社の成長過程でよく起きます。

現場で優秀な人を上げた。
本人も頑張っている。
でも、管理職としてはうまく機能しない。
結局、判断は社長へ戻ってくる。

この時、本人の意識や能力だけを問題にすると、打ち手を間違えます。

見るべきは、会社が管理職を育てる設計を持っているかです。

役割は明確か。
権限は渡しているか。
判断基準は共有しているか。
見る数字は決まっているか。
会議で判断経験を積ませているか。
評価基準はプレイヤー時代のままになっていないか。

現場上がりの人が管理職でつまずくのは、珍しいことではありません。
現場スキルとマネジメントスキルは別物だからです。

ただ、内部登用には大きな強みがあります。
現場を知っている。
会社の文化を知っている。
ドライバーとの関係もある。
荷主のクセも分かる。

その強みを活かすには、現場の延長で任せるのではなく、管理職として育つための役割、権限、数字、会議、評価を整える必要があります。

管理職は、肩書きをつけた瞬間に生まれるわけではありません。
判断経験を積ませた時に育ちます。

内部登用を成功させるとは、人を変えることではありません。
現場で優秀な人が、管理職として育つための環境を会社が用意することです。

このnoteでは、運送会社の営業、配車、採用、組織づくり、会議、法対応まで、現場と経営の間にあるズレを整理して発信しています。
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