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価格改定で黒字になっても、会社が強くなったとは限らない

価格改定が通った。

赤字だった月が黒字に変わった。
試算表を見るたびに重かった気持ちが、少しだけ軽くなった。

月末の通帳残高にも、以前より余裕が見える。
やっと経営が戻ってきた。そう感じる社長もいると思います。

これは間違いなく成果です。
2024年には標準的運賃が見直され、運賃水準の引上げや荷役などの対価の明確化も進みました。価格交渉に向き合い、黒字転換を果たした会社があること自体は、大きな前進です。

ただ、ここで止まると危ない。

黒字になったことと、会社が強くなったことは、同じではありません。

次の車両を替え、借入を返し、それでも会社に資金を残せる。
そこまでできて初めて、その黒字は会社を守る利益になります。


黒字になった。その安心が、次の経営判断を遅らせる

運送会社を支援していると、価格改定をきっかけに黒字へ転じた会社に出会います。

これまで赤字だった案件が、少し利益を残すようになった。
荷待ちや荷役の対価も、以前より話せるようになった。
ドライバーの賃金見直しにも、少し余力が出てきた。

ここまでは良い流れです。

しかし、黒字化すると人は安心します。

今期は黒字だから大丈夫。
ひとまず車両はまだ使える。
入替えの話は、もう少し先で考えよう。

その安心が、次の経営判断を遅らせます。

車両更新は、いつか来る問題ではありません。
今の利益が本物かどうかを、静かに問い続けている経営課題です。

価格改定と減価償却の進行が、利益を実力以上に見せる時がある

価格改定によって売上総利益が改善した。
これは事実です。

ただし、利益の中身は見なければいけません。

長く使っている車両は、減価償却が進んでいます。
償却が終われば、試算表上の減価償却費は小さくなります。

すると、同じ売上でも利益は出やすく見えます。

もちろん、古い車両を持つこと自体が悪いわけではありません。
大切に整備し、長く使えることは現場力でもあります。

ただ、減価償却が軽くなったからといって、次の車両を替える必要までなくなったわけではありません。

減価償却が終わった車両が利益を作っているのではありません。
次の車両の代金を、未来に先送りしているだけかもしれません。

国土交通省の資料でも、持続的な事業運営に必要な運賃には、人件費だけでなく、車両更新費用、保険料、適正利潤などを含めて考える必要があると示されています。

価格改定は、黒字化の入口です。
しかし、車両更新まで織り込めていなければ、収益構造が変わったとは言い切れません。

車両を替える時に、黒字の正体が出る

黒字の正体は、車両を替える時に出ます。

新車や中古車を入れる。
借入が増える。
元金返済が始まる。
保険料や整備費、タイヤ費なども変わる。
資金繰り表を見る目が、急に厳しくなる。

試算表では黒字でも、通帳残高が増えない。
車両を替えた途端に、また資金繰りが苦しくなる。

この状態なら、今までの利益は十分ではなかった可能性があります。

利益は、増えたかどうかで見るものではありません。
会社を維持しながら、次の投資に進めるだけ残せるかで見るものです。

ここで重要なのは、車両を全額現金で買えるかどうかではありません。

借入を使っても構いません。
ただ、借入を返済しながら、次の更新に備え、自己資金も少しずつ増やせる構造になっているか。

そこを見る必要があります。

必要利益は、試算表の黒字からではなく、更新投資と返済から逆算する

必要利益は、今期の黒字額を見て決めるものではありません。

先に見るべきは、これから必要になる現金です。

今後何年で、どの車両を入れ替えるのか。
年間でどれくらいの元金返済があるのか。
税金を払った後、運転資金をどれくらい残したいのか。
突発修繕や採用、賃金見直しにも耐えられる自己資金を積み上げられるのか。

ここから必要利益を逆算します。

利益と現金は、同じではありません。

借入元金の返済は、試算表では費用になりません。
しかし、通帳からは確実にお金が出ていきます。

だから、試算表で黒字でも、資金が残らない会社が出てきます。

見るべきは、営業活動で生んだ現金が、返済と更新投資を踏まえても足りているかです。

黒字かどうかだけではなく、返済後にいくら残るか。
車両を替えた後にいくら残るか。

この問いを持つだけで、利益の見え方は変わります。

年間の入替台数を見なければ、本当に必要な利益は決まらない

車両更新は、思いついた時に考えるものではありません。

保有台数が何台あるのか。
車齢はどう分かれているのか。
何年程度で入れ替えるのか。
走行距離や整備状況はどうか。
購入とリースはどう組み合わせるのか。

こうした条件を並べると、毎年どれくらいの台数を入れ替える必要があるかが見えてきます。

保有台数を、実態に合った更新年数で割る。
そこから、年間の更新台数を概算する。

もちろん、全車両を一律に扱う必要はありません。
車種、用途、走行距離、車齢構成によって更新時期は変わります。

むしろ危ないのは、同じ時期に増車した車両が、同じ時期に一斉に古くなることです。

その時になってから資金を考える会社は、選択肢が少なくなります。

車両更新は将来の問題ではありません。
今の必要利益を決める問題です。

会社全体の黒字では、未来を削る荷主が見えない

会社全体で黒字でも、安心はできません。

どの荷主が利益を残しているのか。
どのコースが車両とドライバーを疲弊させているのか。
どの案件が、更新原資を生み出しているのか。

会社全体の損益だけでは、ここが見えません。

売上は大きいが、荷待ちが長い。
拘束時間が長く、帰り便も弱い。
急な変更が多く、配車係の負担も重い。
値上げには応じたが、まだ利益が足りない。

こうした荷主を抱えたままでは、会社全体で黒字でも、未来の更新原資は削られていきます。

会社全体で黒字でも、未来を削る荷主を抱えたままでは、会社は少しずつ弱くなります。

だから、荷主別、コース別、車両別に見る必要があります。

売上だけではなく、利益。
拘束時間。
荷待ち。
帰り便。
配車負荷。
ドライバーへの影響。
今後の伸びしろ。

ここまで見て初めて、どの荷主とどう付き合うべきかが見えてきます。

黒字化した今こそ、顧客ごとの付き合い方を選び直す

価格改定で得られた利益は、安心して止まるための利益ではありません。

顧客戦略を見直すための余力です。

伸ばす荷主。
条件交渉を続ける荷主。
維持する荷主。
配車や車両の使い方を変える荷主。
将来的には見直す荷主。

この判断を、関係性や感覚だけで決めない。

必要利益とのギャップから決めることです。

今の収益構造で、車両を替えられるのか。
返済を続けられるのか。
賃金を見直せるのか。
自己資金を積み上げられるのか。

足りないなら、どこを変えるのか。

値上げ交渉なのか。
案件構成なのか。
荷待ちや荷役の対価なのか。
配車の組み方なのか。
車両配置なのか。
荷主との付き合い方なのか。

黒字化した今こそ、この問いを持つべきです。

まとめ 黒字かどうかではなく、次の車両を替えられる利益かを見る

価格改定で黒字になった。

これは成果です。
喜ぶべき変化です。

ただし、黒字化はゴールではありません。

その利益で次の車両を替えられるか。
借入を返済できるか。
税金を払い、運転資金を残せるか。
自己資金を積み上げられるか。

そこまで見て初めて、会社が本当に強くなっているかが分かります。

黒字化は、会社が強くなった証明ではありません。
次の車両を替え、借入を返し、それでも会社に資金を残せる収益構造をつくるための、ようやく手にした出発点です。

価格改定で生まれた余力を、ただの安心で終わらせない。

必要利益を見える化し、荷主別の採算を見直し、これから付き合う顧客を選び直す。

その積み重ねが、5年後、10年後に車両と通帳残高の差として表れます。

このnoteでは、運送会社の営業、配車、採用、組織づくり、会議、法対応まで、現場と経営の間にあるズレを整理して発信しています。
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