初恋 島崎藤村(挿絵シリーズ)
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

作者紹介
島崎藤村(しまざき とうそん)
1872年生まれ、1943年8月22日没。長野県馬籠宿(現・岐阜県中津川市)出身の詩人・小説家。9歳で学問のため上京。大学卒業後、教鞭を取りながら同人雑誌「文學界」の創刊に参加した。代表作は詩集「若菜集」(1897年)、小説「破戒」(1906年)など。
日本の文学においてロマン主義から自然主義、そして歴史文学への流れを体現し、生涯を通じて個人の内面と社会の問題の交差点を追求し続けた。

青空文庫より
イラスト:はるさめとも(生成AI)
編集部より一言
林檎畑で始まった初々しい恋を描いたこの作品は、七五調のリズムも魅力の一つです。ぜひ音読してみてください。
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