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口封じ③─「森永乳業は責任を果たし続けています」…事件の火消し図るネット宣伝加速

 森永ヒ素ミルク中毒事件は、過去の不祥事ではなく、いまなお、法と救済の限界を問い続ける問題である。だがこの「問い」を封じ、「すでに解決済み」と印象づける世論形成が重ねられてきた。

 その典型が、加害と被害の緊張を薄める「安心の物語」の流布である。麗々しく「歴史を語る装い」をとりながら「核心部分を語らず捻じ曲げて」、「物語」を一話完結型に収束させることで、実際には継続している論争的テーマへの「問い」と「議論」を停止させ、最終的に風化させる。
 人間の認知能力の弱点につけこみ、特定の利害から世論を操縦しようとする時に駆使される。

 それを代表するフレーズが、「森永乳業は責任を果たし続けている」というものだ。大阪裁判の異議を白紙化する意図をもって、にわかにネット上などで強化されている。背景意図が明瞭だ。その構造と本質を指摘しておく。

「問い」の回路を塞ぐ収束型ナラティブの危険性

 〝歴史を語りながら歴史を風化させる手法〟が、この事件では堂々とまかり通っている。悲劇→反省→制度化→成熟→教訓化 という流れをもつ収束型ナラティブ(物語)を利用した印象操作だ。

 「色々大変でしたが最後はハッピーエンドです」という、ありきたりな構成だが、現実の事件にためらいなく適用すると強い力をもつ。

 社会の現実を知る人には、非常に気持ち悪く、逆に疑念が深まる物語だ。だが、過去の悲劇は「終わった話」で、現在はそれを乗り越えて「洗練され進歩した」という構成は、「安心したがる社会」には強力な影響力をもつ。

 だが、歴史の継承では、本来これとは真逆の態度が求められる。特に収束型ナラティブは、プロパガンダとともに、もっとも警戒されるべき言説だ。

 未解決の課題を含め、事実に即して検討を続け、「問い」の回路を開き続けることこそが、記憶の継承と再発防止の出発点であるからだ。

「森永乳業は責任を果たしている」という言説

 このような、「先に結論ありき」から構成された物語は、被害の重大性や救済の歩みを描きつつ、最終的に森永乳業への好評価へと収束させる意図をもって流布されている。1974年の三者合意で約された「恒久救済対策案」の実施項目は今ではその9割が停止・放棄され、中身はほとんど残っていない。

 この羊頭狗肉と化した救済事業を、事情を知らない国民に大仰に宣伝すれば、その後に資金供給元の企業称賛を配置することはたやすい。そこには「検証」のための「問い」はなく、完結・収束の物語として、ただただ「安心」に誘導し、「疑念」「疑問」を封鎖する。

 その陰で、森永乳業の弾圧の激しさや、巧妙さ、国家を通じた不正、救済組織の変質、被害者への抑圧の事実、異論封殺の実態には、一切触れない。修辞的技術を駆使して、情緒に流し、よもやそんな事件が相次いでいるとは一切思わせないトリックはさすがである。手慣れた者の仕業であろう。

 大阪訴訟が、国民に衝撃を与えたのも、この手法で、既に「解決済み」という幻想が、一部メディアの力も得て、社会に浸透していたためである。

金銭支給と制度の妥当性は別問題

 森永による資金拠出は事実だが、合意内容の遵守や制度の妥当性、被害者の尊厳が守られているか、は別途検証されるべき、もっとも重要な問題であり、分けて考える必要がある。

 過去に頻発してきた重症被害者家族による異議申し立てや人権救済申し立て。(収束ナラティブにやられたメディアにより、報道はほとんどゼロ)、そして2022年からの大阪での提訴が示すように、この26年間、制度への厳しい批判、それを抑圧する不法行為が間断なく続いている。

 企業拠出・財団法人実施・行政関与という枠組みは、安定性と同時に近接性ゆえの緊張を抱える。外部に開かれた評価可能性や、運営の透明性、コンプライアンスが確保されているか、厳密なチェックが求められる。

歴史的事件を語る責任

 近年のいくつもの裁判や、2022年からの大阪訴訟での争点は、法制度と救済制度が必ずしも一致しない現実を示している。仮に司法判断が確定しても、制度への評価が終わるわけではない。

 歴史的事件を語る責任は、教訓を「問い続けること」にある。
 「森永乳業は誠実に責任を取り続けている」という語りが妥当かどうか、その実態こそ、検証されるべきである。(以下の『発生から50年』には、正反対の事実が詳細に記録されている。)


 悪質なプロパガンダも、見方をかえると、歴史継承活動への「カツ入れ」の効果がある。さらに、論争的テーマを浮き彫りにする効果がある。

 再度、「森永乳業は誠実に責任を取り続けている」のか? むしろ別の意味で「努力している」のではないか? 
 今後はその実態を改めて検証していきたい。

もどる)  (口封じ④へつづくhttps://note.com/no_more_morinaga/n/n64e39e56f1f1


【言論統制の全文掲載】

全ての取材は事前に報告せよ/方針に反することは述べてはならない/報道機関には学習テキストを理解させろ/立場が違う場合あるいは曖昧な場合も取材は受けない… 

【大阪訴訟 控訴審判決に抗議する、原告弁護団声明】




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