【ちょっと昔の世界一周】 #48 《思い出という名の経験》
昨夜も遅くまで旅の話で盛り上がっていたのだが、意外に早く目が覚める。
今日はカッパドキアらしい〝キノコ岩〟を見に行き、夜行バスで移動する。
旅らしい予定があるからか、すっきりとした目覚め。
キノコ岩へは乗合バスで行けるらしい。
歩けなくはないがそこそこの距離とのこと。
夜のことも考えて、体力を残しておくために車を使おうと、時間は昨日のうちに調べてある。
準備の時間をとるはいえ、さすがに早い。
もう一眠り…と思ったのだが、そういえば…と昨夜の会話を思い出した。
リクさん達は昨日の朝、気球ツアーに参加したらしい。
めちゃくちゃよかった!
二人はそう言うが、高所恐怖症の私にとっては地獄であろう…
その話を聞いたシンジさんが、
「この宿からもっと上に進むと、気球見るのにいい場所あるよ!」
と教えてくれた。
シンジさんは、到着翌日に何気なく朝の散歩に行って見つけたらしい。
そこなら高所恐怖症でも大丈夫!と半分(かなり)おちょくりながら話していた。
今から行けばいい時間かも!
そう思い、行ってみることにした。
*****
ギョレメの街は坂が多い。
観光のメインとなる街の中心地から、宿へはそれなりの登り坂。
到着時にバイタクを使ってよかったと思えるぐらい。
そこからさらに登って行く。
朝からいい運動だ…
そう思って進んでいくと、開けた場所に出た。
登ってきた道の先はその空間を超えると切り立った崖、垂直ではないにせよかなり急な傾斜なので崖と言っていいであろう。
そんな場所なので見晴らしがいい。

シンジさんが言うには、気球がそこから見える場所を飛んでいく(登っていく)らしい。
確かにいい場所だ…
見晴らしもよく、崖まではそこそこ距離があるので問題ない。
唯一、まるでサフランボルで行った水道橋のような細さの道の先に、人一人分ぐらいのサイズのスペースがあるが、何があっても絶対に行かない。
なんとなく全体が見れそうな場所の辺りでウロウロしていると、坂を数人登ってきた。
皆、私と同じ考えで気球を見にきたようで、それぞれ場所取りをしている。
こうして人が来るということは、やはりいい場所なのだろう。
シンジさんに感謝しながら待っていると、一人の女性が目に入った。
なんと、先ほどの細道に向かって歩いている…
そして、躊躇うことなく道を進み、先にあるスペースへとたどり着く。
彼女はそこに腰を下ろすと、ゆっくりと瞑想を始めたようだった。
確かに、そういった場所で瞑想をするのは何となくイメージできる。
しかし、そうすることでしか得られない何かがあるとするのなら、私は絶対にいらない!そう思いながら、気球を待つことにした。
しばらくすると、視界の端の方から何かが現れた。
一人、また一人と声を上げる。
登り始めている朝日と共に、たくさんの気球達が現れた。

朝日に照らされる奇岩と気球。
素晴らしい光景である。
その光景に感動しながら、たまに瞑想女性に目をやると朝日に染まりながら、狭い空間で様々なヨガのポーズをしている。
『私には理解できないなぁ…』
そんな思いも時折混じりながらの素敵な体験になった。




気球が離れて行く頃には、集まった人たちも帰って行く。
私も戻ろうと思い、最後に瞑想女性の方を見ると、信じられない光景が目にはいってきた。
何と、崖とも言っていいほどの傾斜を登ってくる男性がいる。
しかもサンダル履きで、決してアスリートとはいえない普通のおじさん…
その人を見ていると、瞑想女性も細道を戻ってきていて何やらその男性と言葉を交わしている。
『この世には、理解できない世界がある…』
そんなことを思いながら、私は宿へと戻って行った。
*****
すでに起きていたシンジさんと朝食を済ませ、私はキノコ岩へと向かうことにした。
遂に、これぞカッパドキア!と言える場所に向かう。
調べておいたバス乗り場へと向かい、周囲の人に確認しながら来た車へと乗り込む。
荒野という表現が当てはまるだろうか、そんな中を進んでいく車の中から景色を眺めていると、意外にすぐ目的地へと到着した。


確かに、歩いて来れなくもない距離である。
そして、とにかく思う存分観光をしてみた。





岩に登ったり、写真を撮ったり、観光客向けのトルコアイス売りの人と遊んだり…
周囲にある観光スポットも含め歩いて動き続けた。




アンコールやローマのように人の手によって作られた遺跡ではなく、自然の力で作られた奇跡ともいえる景色に圧倒され、大満足した私は街へと戻ることにした。
あまりにテンションが上がったのであろう。
『歩いて帰れば、ついでに途中に見えた奇岩も見に行けるかも!』
そんな考えで、帰りは歩いて行くことに決めたのであった…
と、簡単に決めたものの、想像と現実はなかなか差があった。
観光に天気がいいのは助かるのだが、そこで歩くとなるとまた話は変わってくる。



失敗したかな…と思いつつも、先ほどは車内から眺めるだけだった奇岩を何ヶ所か見て周り、無事にギョレメへと戻ってくることができた。
疲れはしたものの、いい思い出になった。
さらに、日陰も特にない道を歩いていると景色は違うもののラオスでの一本道を思い出し、何となく懐かしさも感じられた。
この後の予定は夜行バス。
次に行く街は【パムッカレ】
ここに来た時と同じように、明日の朝に着く予定だ。
とはいえ、前回のように時間がズレる可能性も考えられる。
できればそれまでは休みたいと考えた私は、一度宿へ戻ることにした。
宿は今朝の時点でチェックアウトは済ませていたのだが、宿の女将さんはとてもいい人で、チェックアウト後に荷物を預かってくれるだけではなく、テラス横のベンチでゆっくりしてていいよ!と言ってくれていたので、ゆっくりさせてもらう。
これからの予定を考えながら休んでいると、シンジさんが戻ってきた。
「最後だし、飯行こっか!」
〝最後〟
確かにそうだ。
私はパムッカレへ、シンジさんは明日イスタンブールへと向かう。
ツリーには泊まる予定と言っていたし、私もイスタンブールに戻ったらツリーには泊まりつもりだが、帰国のフライトの日には間に合わなさそう。
なので、ここで別れたらもう会わないだろう。
旅とはそういうものだ。
出会いと別れの繰り返し。
出会いは嬉しいし、別れはもちろん寂しさもある。
旅に限らず、とても大事なこと。
人の縁
ラオスでタカダさんに出会い、ツリーの話を聞いた。
その時は日本人宿に対して、あまりいい印象はなかったが、シェムリアップのタケオで出会った人たちのおかげで、その印象は変わっていった。
そして、ツリーで始まったトルコの旅。
そのおかげだろう。
トルコでの日々は常に楽しい。
たくさんの人と出会い、別れている。
その一つ一つが大切な思い出。
そして、自分が成長するための大事な経験。
そのままバスに乗ることを考えて、荷物を持って行く。
女将さんに礼を言い、毎日通った食堂で夕飯を済ます。
バスが来る場所へ行くと、少しずつ人が集まってきている。
「ノブ君、まだまだ旅は続くでしょ。気をつけてね!」
そう言ってシンジさんはバスに乗り込むまで見送ってくれる。
私も
「ツリー泊まれるといいですね!シンジさんも最後までお気をつけて!」
と声をかけ、お互いに
「いい旅を!」
の言葉で締める。
席につき窓の外を見ると、シンジさんが片手をあげ『じゃあね〜』といった雰囲気で、歩いて行くのが見えた。
やはり旅はいい!
よくよく考えると、バス移動は慣れたものなのだが、一人で夜行に乗るのは初。
鉄道もフェリーも一度しか乗ってないにも関わらず、一人だったのだがバスの場合は、必ず誰かがいた。
それだけ出会いに恵まれているのだろう。
そんな貴重な経験を手に入れ、私の旅はまだまだ続く…
