【ちょっと昔の世界一周】 #50 《私にとっての旅の楽しみ》
短い時間でもぐっすりと眠れたのであろう。
さほど時間は経っていなかったが、とても気持ちのいい目覚めで昼寝を終えた私は、パムッカレの街歩きに出た。
改めて街を歩いてみると、やはり人の流れは少ない。
世界遺産である石灰棚・ヒエラポリス周辺では人の姿を見かけるが、他はというと...
それなりに街の大きさがあるせいか、サフランボルよりも人通りが少なく感じる。
街自体が世界遺産・観光地となっているサフランボルとは違い、建物は至って普通。
それを考えると当然の光景。
観光スポット以外に足を運ぶ旅行者はそうはいないだろう。
すでにこの街の目玉を見終わった私だが、次の目的地である【エフェス】へは、明後日の朝向かうことにしてある。
先程、食事を兼ねてノリコさんにチケットを手配してもらっていたのだが、『明日出発でもよかったかな!?』という気持ちも湧いてきた。
しかし、そんなパムッカレの街並みに私はどことなく懐かしさを感じていた。
それは、日本や故郷を懐かしむわけではない。
育った環境とは明らかに違う、異国の地でのありのままの日常風景。
トルコに来てから観光客で溢れるほどの街を訪れてきたこともあり、こういう〝普通〟の街並みに懐かしさを感じる。
思い返してみると、しばらくは観光地を訪れていた。
トルコの前のイタリア(ギリシャは抜かす)でも、基本的に人の流れが多く、どこかを見るとすぐに観光客・旅行者を見つけられた。
さらに、個人的な考えなのだがヨーロッパの街並みはそれだけで違う感覚を与えてくれる。
アジアやトルコも異国なのだが、より異国情緒に溢れる感じがしていた。
そんなイタリアからここに来るまで〝観光〟の気分が続いていた気がする。
それに比べると、ここはとても生活感が溢れている。
ラオスや偶然立ち寄ったカンボジアのクラチェのような、地元の人たちの生活に触れている感覚になる場所。
これまでの旅の中で、私が最もいい気分になれる空気感を持った街。
久しぶりにその感覚を感じられ、ゆったりとした気分で散歩をすることができた。
しばらく歩き回ってみたが、やはりヒエラポリス周辺から離れれば離れるほど、観光客向けの店舗等は少なくなり、地元の人たちの為にあるお店が多くなる。
所々に書かれている看板なども、一見するとアルファベットだが若干違うトルコ文字も多く感じる。
結構な距離を歩いたが、段々と日も暮れてきたこともあり、そのままノリコさんの店『ラム子のロカンタ』に行き夕食を食べることにした。
店に入り注文をする。
何気ないことだが、日本語のメニューで日本語で頼むということはやはり良いものだ。
天気もいいし、外で食べてもいいよ!と言われ、玄関横のテラス席に腰を下ろす。
料理ができるまで道を眺めながら待っていると、やはりこの辺りでは観光客の姿をよく見かける。
先程までいた所では、私以外の旅行者を見かけなかったが、この辺りは大勢がウロウロしている。
この雰囲気の違いは見ていて面白いものである。
色々あったイタリアの滞在だが、こうやってその場の雰囲気を感じられるようになったのは、行ってよかったことの一つ。
今後もこういう過ごし方ができたら暇にならないな...と思っていると料理が運ばれてきた。
やはり、日本の味は美味しい...
無我夢中で食べていると、一人の男性が歩いてきた。
やってきたトルコ人らしき男性は、ノリコさんと話し私の隣の席に座った。
「この人、私の旦那なんだ!ここいいかい?」
とノリコさんが言う。
いいですよ!と伝えると、旦那さんは「コンニチハ!」と、とてもノリがいい人だった。
いつ来たの?ヒエラポリス行った?いつまでいるの?といった話をしていると、ノリコさんが再び料理を盛ったお皿を持ってきた。
旦那さんの前に置き、横に座る。
どうやら旦那さんも夕食のようだ。
すると、近所の人なのか何人かが声をかけたりして、ワイワイとした食事の場ができあがる。
『いいとこ来たなぁ〜!!』
そんなことを感じながらの夕食。
途中で旦那さんが唐辛子をそのまま食べ始め
「トルコ人って、辛いの強い人多いんだよね〜。旦那もよく食べてるし、凄いでしょ!」
とノリコさんが教えてくれ、旦那さんも「お前も食うか?」といった感じで唐辛子を差し出してくる。
周囲の人たちも興味津々。
これはあまり辛くない!と言われた物を食べてみたが、なかなかの辛さ...
トルコ人は凄い!!と謎の盛り上がりをみせながら楽しい夕食になった。
*****
翌日、特にこれといった予定もないので、遠くから石灰棚を眺めたり、街を歩き回り昼前に再びノリコさんのお店へ。

まだ外に出るからいいが、これはまるでツリーのタカさんのような沈没生活である。
体も休まるし、たまにはこういう日があってもいいな...と自分に説明をし店に入ると、すでに日本人らしき先客がいた。
初めは隣のテーブルにつき話していたが、お互いに日本人同士で話しをしたかったこともあり、結果同じテーブルで話しながら食事をとった。
彼は、大学四年で最後の夏休みにトルコ周遊をしにきたとのこと。
予定をキッチリと立ててきたが、バスが遅れたりと色々あってなかなか上手くいかない...とお困りの様子。
私のような(一応予定はあるが...)自由な旅っていいなぁ〜といった話をする。
バタバタしながらもパムッカレの観光スポットも見れたし、今日の夜行バスまで時間あるから...と近所を散歩に行くことになった。
とはいえ、一人なら好きなように行くが、二人だとどうしたものか?とお互いに話しながら歩いていると、気になる光景を見つけた。
坂になっている高台に何やら紐をくくりつけている男性が数人いる。

気になって近づいていき、すぐに正体を理解できた。
どうやらパラグライダーをするらしい。
高台からのいい眺めの先に、何かしらの建物が見える。
どうやらそこを目指して飛んでいくようだ。
面白そうだし見てみよう!
と、私たちは全体が見える所に腰を下ろし、一部始終を眺める。
一人の男性がパラグライダーの取り付け確認をし、準備ができた人が崖に向かい坂を走り抜けていく。
最初の一人が飛び立つ。

高所恐怖症からすれば、体験するのは嫌でも見る分にはいいものである。
一人、また一人と飛び立っていく。
前に飛んだ人の流れ、さらに風を読み、少しずつ飛び立つ場所を変えながら飛んでいく。
しばらくパラグライダーを眺め時間を過ごしたあと、挨拶を交わし私たちは別れる。
『さて、どうしよう?』
と、私は考えた。
昨日と今日でパムッカレの街は結構見て回った。
明日の出発も早いし、一度宿に戻ることも考えたが、夕食はもちろん『ラム子のロカンタ』に行くつもり。
そうなると、再び外に出ることになる。
面倒なので、もう少し歩こう...
そう思い、今まで通っていなかった道を進む。
少し進むと、道端で遊んでいた子どもたちが手を振りながら走ってくる。
こういう感覚もどこか懐かしいものである。
「ジャパン??カラテ!!」
海外で日本人がよく言われるであろう〝カラテ〟のネタで少し遊ぶ。
旅をする前はそんなに空手と言われるのか疑問だったが、今やなんの違和感もなく受け入れている。


外人と話をして満足したのか、走り去っていく子どもたちを見ながらさらに歩いていく。
しばらく歩いていくと、行き止まりになり道がなくなる。
この道はここまでかなぁ…と思い引き返そうとしたが、ふと横を見ると崩れた壁の向こうでまた子どもたちが遊んでいる姿が見えた。
すごい場所で遊んでいるなぁ〜と眺めていると、一人がこちらに気づき手を振ってくる。
なんとなく呼ばれた感じだったので、壁を飛び越え行ってみるとこちらでは〝稲本〟の話題で盛り上げる。





一緒に走り回ったり写真を撮ったりしながら過ごし、段々と日も暮れてきたのでBye !!と言って帰る私を見送ってくれる子どもたち。

久しぶりに感じた満足感。
多分これが私にとっては、最も旅に引き込まれる魅力であろう。
ノリコさんの店へと戻り、前日のようにワイワイとした夕食を食べながら、
『パムッカレに来て良かった〜!!』
と沈む夕日を眺め、心の底からそう思う。

次の目的地はエフェス。
果たしてどんな出会いが起きるのか。
そんなことを考えながら、その日は眠りについた。
*****
翌朝、エフェス行きのバスは早いこともあり、事前に宿の支払いを済ませ荷物を持ってフロントで待機。
今回も順調にいってくれ!とウロウロしながら待っていると、宿のドアが開く。
入ってきた女性を見て、私は思わず
「あっ…」
と声が出た。
