【第524回】 Marketing Cloud Next : 動的な送信元アドレスと返信先アドレス
Marketing Cloud Next Growth & Advanced Editions では、顧客とのエンゲージメントを高め、より信頼性の高いコミュニケーションを実現するため、DKIM 認証されたドメインのメールアドレスを送信元として利用することが必須 となっています。
Summer '26 の新機能リリースでは、取引先責任者やリードが持つ情報を利用して、送信元アドレス(From Address)や 返信先アドレス(Reply Address)を 動的に設定できるようになりました。
これにより、メールを info@ や no-reply@ といった共通アドレスから送信するのではなく、営業担当者本人から直接送信されたように見せることができます。また、顧客がメールに返信した場合、その返信を担当営業へ直接届けることも可能です。
本記事では、この動的送信者機能の設定手順と利用時のポイントについて解説します。
承認済みメールドメインの設定
送信元アドレス(From Address)のドメインは、既に登録済みかと思いますが、返信先アドレス(Reply Address)のドメインは、これまで Salesforce の画面上で登録してきていませんでした。そのため、承認済みメールドメインという形で登録が必要となります。
1. 設定画面で、「統合メッセージング」>「承認済みメールドメイン」を選択し、メールドメインを追加をクリックします。

2. 対象のメールドメインを入力して追加します。

3. 検証キーが生成されますので、これをメモしてください。
例: 00D000000000P08=1TB00000000000B

4. 検証キーを使って、DNS レコードを作成します。
メール送信ドメインの所有権を検証するための DNS TXT レコードでは、Name(ホスト名)として次の 3 つの形式を使用できます。つまり、この 3 つの書き方であれば、どれでも良いということです。
推奨:単一の Salesforce 組織でドメインを利用する場合は、通常「1」または「2」の形式で問題ありません。複数組織で同じドメインを共有する場合は、「3」の形式を利用することをお勧めします。
① ドメイン名をそのまま使用する
最もシンプルな方法です。
以下は、ドメイン名が example.com、検証キーが 1TB00000000000B、組織 ID が 00D000000000P08 の場合の例です。
Name TTL CLASS TYPE VALUE
--------------------------------------------------------------------
example.com 600 IN TXT 00D000000000P08=1TB00000000000B② _sfdv プレフィックスを付加する
ドメイン名の先頭に _sfdv を付加して TXT レコードを作成することもできます。
以下は同じドメインおよび検証キーを使用した例です。
Name TTL CLASS TYPE VALUE
--------------------------------------------------------------------
_sfdv.example.com 600 IN TXT 00D000000000P08=1TB00000000000B③ orgId._sfdv プレフィックスを付加する
組織 ID(18 桁)と _sfdv を組み合わせた形式です。
同じメール送信ドメインを複数の Salesforce 組織で利用している場合や、DNS 上で一意のレコード名が必要な場合に推奨されます。
以下は、組織 ID が 00D000000000P08EAE の場合の例です。
Name TTL CLASS TYPE VALUE
--------------------------------------------------------------------
00D000000000P08EAE._sfdv.example.com 600 IN TXT 00D000000000P08=1TB00000000000B上記の Name には、完全修飾ドメイン名(FQDN)が含まれています。たとえば、2 番目の _sfdv.example.com であれば、親ドメイン example.com が含まれていますね。
ただし、多くの DNS 管理画面では、親ドメインはあらかじめ選択されており、自動的に補完されて入力されます。そのため、表示された FQDN をそのまま Name に入力すると、ドメインが二重に設定された状態となり、エラーになる場合があります。_sfdv.example.com.example.com となってしまいます。このような場合は、親ドメインである .example.com 部分を手動で削除して「_sfdv」で登録してください。

既存の TXT レコードが存在する場合の注意
これらのホスト名に対して既に TXT レコードが存在する場合は、新しい TXT レコードを追加するか、既存レコードの値に検証コードを追加できます。
複数の検証コードを 1 つの TXT レコードに格納する場合は、各値をセミコロン (;) で区切ります。
以下は、2 つの組織の検証コードを 1 つの TXT レコードに格納した例です。
Name TTL CLASS TYPE VALUE
--------------------------------------------------------------------
example.com 600 IN TXT 00D000000000X09=1TB00000000000C;00D000000000P08=1TB00000000000Bこの方法を使用すると、同じドメインを複数の Salesforce 組織で利用している場合でも、1 つの TXT レコードで複数の検証情報を管理できます。
5. nslookup などで DNS レコードの登録が確認できたら、管理画面に戻って、チェックボックスをチェックして、「検証」ボタンをクリックします。

6. Active が表示されれば、ドメイン検証が完了です。

このドメイン検証が完了すると、マーケティング担当者は差し込み項目を使用して、キャンペーン作成時に返信先アドレス(Reply Address)を動的に設定できるようになります。
リードに営業担当者から送信する
1. リードレコードに営業担当者の名前とメールアドレスを準備します。

注意:動的な送信元アドレスとして利用するメールアドレスは、DKIM 認証済みドメインのメールアドレスである必要があります。
DKIM 認証されていないドメインを指定した場合でも、フローの検証時にはエラーとして検出されず、メール送信時にサイレントエラーとなるため注意してください。
私の環境では、DKIM 認証済みドメインとして @mail4.nac-care.com を利用しています。そのため、私の送信元アドレスは n.watanabe@mail4.nac-care.com を設定しています。
2. 新規でオーディエンスフローを作成します。

3. 続いて、今回は CRM レコードクエリフロー を選択し、オブジェクトには Lead を指定します。スケジュールは「すぐに実行」を選択しました。

4. メール送信の設定画面へ進むと、今回の送信オプションを設定できます。

送信元オプション
① 認証済み送信元アドレス
DKIM 認証済みドメインの送信元アドレスを利用する(従来どおり)
② Dynamic From Address
送信者名のみを動的に設定する
送信者名とメールアドレスの両方を動的に設定する

ここで利用できる差し込み項目は、セグメントフローの場合は、データグラフに設定されている Unified Individual の項目のみです。レコードクエリフローの場合は、データソースの項目のみです。関連属性は利用できません。
返信先オプション
① RMM アドレスを利用する
従来どおり Salesforce が管理する返信先アドレスを利用
② Dynamic Reply Address
リードや取引先責任者のデータを利用して返信先アドレスを動的に設定
※こちらを選択すると RMM は無効になります。

5. 設定後にメールを送信すると、リードが保持しているデータを使って、動的な送信者名とメールアドレスで送信されます。

6. 返信先についても、営業担当者のメールアドレスが設定されている場合は、受信者が返信したメールを営業担当者が直接受信できるように設定できます。

7. 一方で、営業担当者のメールアドレスが取得できない場合は、フォールバック設定により、代表アドレスや問い合わせ窓口などの共通メールアドレスへ返信を送ることができます。

考慮事項
各フォールバック設定は、対象オーディエンスに対してメールアドレスを取得できなかった場合にのみ適用されます。
その送信元には、「送信者名(From Name)」と「送信元メールアドレス(From Address)」 の組み合わせを設定します。一方、返信先に設定できるのは「返信先メールアドレス(Reply-To Address)」 のみです。返信先には 「返信先名(Reply-To Name)」 に相当する設定項目は存在せず、返信先として指定できるのはメールアドレスのみとなります。
また、返信先メールアドレスに使用できるドメインは、事前に設定した「承認済みメールドメイン(Authorized Email Domains)」に限定されます。
いかがでしたでしょうか。
これまでのように共通のメールアドレスから送信するだけでなく、営業担当者ごとの名前やメールアドレスを利用して送信できるようになったことで、よりパーソナルなコミュニケーションを実現できるようになりました。顧客にとっても、「誰から届いたメールなのか」が分かりやすくなり、返信率やエンゲージメントの向上が期待できます。
なお、動的な返信先アドレスについては、現時点では挙動に不明な点が残っているため、検証が完了次第あらためてご紹介したいと思います。
ぜひ実際の環境で試しながら活用してみてください。
今回は以上です。
