なぜアメリカの警察官が柔術を訓練しているのか──日本の現場経験者が考える「制圧技術の今」と防犯への示唆
僕が柔術が必要だと思う理由
MMA(総合格闘技)で戦うなら、柔術は必要。
僕がそれを痛感したのは、人生で初めてMMAの試合に出たときのことでした。
当時、僕はまだ現役の警察官で、「総合格闘技ルールでも強くなければならない」という矜持を持っていました。
当時所属していたのは、キックボクシング、MMA、ブラジリアン柔術を学べる TAISHO GYM(旧 TEAM BARBOSA JAPAN)。
打撃練習のスパーリングには手応えを感じていて、「これで十分だろう」と思っていたのです。

しかし、せっかく教えていただいていたにもかかわらず、柔術の練習の重要性は当時あまり理解できていませんでした。
初めてのMMA試合で感じた壁

打撃はある程度当てていたものの、明確なダメージを与えることはできませんでした。

2ラウンド目でテイクダウンに成功しましたが、クローズドガードに入れられてからパスガードもできず、グランドで何もできないまま引き分けとなりました。

また、警察署を代表して初めて柔道大会に出場したとき、寝技が得意な相手に絞技で絞め落とされました。
相手に非はなく、タップしなかった自分の判断ミスが原因です。

これらの経験を通じて、寝技や絞技、関節技の重要性──パスガードやポジショニングを含めた寝技の必要性を、身をもって実感しました。
柔道や柔術、MMAといった寝技のある競技に出場したからこそ、理解できたことだと思います。
それ以来、柔術の練習にしっかり取り組むようになり、職場の柔道大会で関節技で一本を取ることもありました。
その後、逮捕術の準指導員にも指定され、柔術や格闘技の同好会を立ち上げる際には「護身・制圧技術としての柔術の有効性」をプレゼンしたところ、多くの人が共感してくれました。
その同好会は、やがて正式な部活動として認められるようになりました。
柔術とセルフディフェンス、そして逮捕術
セルフディフェンスや逮捕術において、打撃が重要であることは言うまでもありません。
しかし同様に、組技や寝技の技術も欠かせないと感じています。
とくに柔術は、体格差のある相手や、力に頼らず相手を制圧しなければならない状況で、大きな効果を発揮します。
その実践的な技術体系として、アメリカの警察機関で急速に導入が進んでいるのが Gracie Survival Tactics(GST) です。

世界最高峰の柔術家のひとり、Roger Gracie
このGSTは、ブラジリアン柔術をベースに構築された、警察官や保安官、矯正施設職員向けの防御・制圧トレーニングプログラムです。
HBOが報じたGSTの社会的意義
GSTの効果や意義については、アメリカのHBO番組『Real Sports with Bryant Gumbel』でも特集が組まれ、次のように紹介されています。
最小限の力で相手を無力化し、落ち着いて逮捕できる技術こそ、今もっとも求められている警察のスキルである。
力に頼らず制圧できる柔術の技術は、暴力的な映像の拡散を防ぎ、警察と市民の関係修復にもつながる。
実際に、ジョージア州マリエッタ警察ではGST導入後、警官の負傷が48%、被疑者の負傷が53%減少したと報告されており、現場での判断力や冷静さの向上に直結していることが示されています。

この特集の一部はYouTubeでも公開されています。
ご興味のある方はぜひ一度ご覧ください。
▶︎ HBO “Real Sports” - GST特集(YouTube)
日本でもできること
僕は、アメリカのように柔術を積極的に取り入れる警察の姿勢に倣い、日本でも同様の取り組みが必要だと感じました。
その一環として、柔術黒帯の先生方をはじめ、武道・格闘技界の第一人者の先生方を、警察や企業に護身術などの講師として招致するプロジェクトにも携わってきました(詳細は下記のとおり)。
・岩間朝美先生
https://x.com/ap_kouhou/status/1064775671535169537?s=46
・杉江大輔先生(白木)
https://x.com/ap_kouhou/status/1100655481746378753?s=46
・関根秀樹先生
https://x.com/ap_kouhou/status/1105382131197308928?s=46
・佐藤嘉洋先生
・中井祐樹先生
・鈴木陽一先生
https://x.com/ap_kouhou/status/1179234093529227265?s=46
・菊野克紀先生(Zoom練習会)

・竹浦正起先生
・石黒遥希先生
海外の事例などをもとに、柔術を含む武道や格闘技が法執行官にもたらす具体的な効果を現場で伝えてきました。
「日本版GST」への挑戦
僕は、日本の法制度や現場の実情に即した、「日本版GST」のようなプログラムをつくりたいと考えています。
それは警察官時代からの夢であり、今も変わらぬ目標です。
現在は、パラエストラ東京や誰ツヨDOJOyをはじめとした道場で、その実現に向けて日々試行錯誤を続けています。

どのような形になるかはまだわかりませんが、僕はこのプロジェクトをあきらめず、これからも挑戦を続けていきます。
World Police and Fire Games への想い
そして今、僕にはもうひとつの目標があります。
それは、World Police and Fire Games に出場することです。
この大会は、世界中の警察官・消防士などが集まり、スポーツ競技を通じて交流する国際大会です。
競技には、拳銃射撃や階段登りなどの職能競技に加え、柔術のようなスポーツ競技も含まれています。
警察で10年以上の勤務経験があれば、退職後でも出場資格があると知り、
「柔術というかたちで、まだ自分にもできることがある」と思うようになりました。
世界中で柔術を学ぶ警察官は多くいます。
競技を通じて、そうした人たちと交わることができれば、それは自分にとって大きな経験になるでしょう。
同じ志を持つ者同士で試合をする──それ自体に、意味があるように思うのです。
防犯や護身の観点からも、得られるものはきっと少なくないはずです。
株式会社MI8では、防犯や護身術、安全教育に関する講演・セミナー・ワークショップなどのご依頼も受け付けています。
学校や地域団体、企業・自治体での安全対策に関心がある方は、お気軽にご相談ください。
槌 大介(つち だいすけ)
株式会社MI8 代表取締役
名古屋市出身。
元逮捕術準指導員
元警察格闘技クラブチーム(格闘部)副代表
現在は「武道・格闘技を社会に役立てる」ことをテーマに活動中。
• パラエストラ東京/誰ツヨDOJOy 所属
• こどもヒーロー空手教室 指導員
• 赤坂中ノ町・新四町会・広報部・副部長
主な武道歴・段位
• 伝統派空手(三段・黒帯)
• 柔道(三段・講道館)
• 柔術茶帯(IBJJF)
• 杖道(二段・全日本剣道連盟)
• 武神館(黒帯初段)
戦績
• JBJJF 全日本マスター柔術選手権 2022
紫帯 無差別級 優勝
他MMA等
今後の予定
• 2025年7月 敬天愛人練部大会 出場予定

株式会社MI8
https://mi8.tokyo
赤坂中ノ町・新四町会
https://www.akasaka-naka4.com
©️株式会社MI8
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