「人工肛門になりました。」そのニュースで初めて知った人へ。実は知らない人が多いストーマのこと。
最近、お笑い芸人の松本人志さんが、一時的な人工肛門(ストーマ)を造設したことが報じられました。
ニュースを見て、「人工肛門になったらしい」という言葉に驚いた人も多かったのではないでしょうか?

SNSでは、
「人工肛門って一生なの?」
「普通に生活できるの?」
「ずっと袋を付けたまま?」
そんな疑問や不安の声も多く見かけました。
看護師として働いてきた私にとって、人工肛門(ストーマ)は特別なものではありません。
でも、医療の現場を離れると、ほとんど知られていないことも多いと感じます。今日は、ニュースをきっかけに知ってほしい「人工肛門(ストーマ)」についてお話しします。
人工肛門(ストーマ)って何?
人工肛門とは、病気や手術によって、お尻から便を出すことが難しくなったときに、お腹に新しく作る排泄口のことです。
腸の一部をお腹の表面に出し、そこへ専用の袋(パウチ)を装着して便を受けます。
「人工肛門」という言葉だけ聞くと、とても大変なものに感じるかもしれません。
でも実際は、多くの人がストーマとともに生活し、仕事をし、旅行へ行き、趣味を楽しんでいます。

実は、一時的なものと永久的なものがあります
ここは、意外と知られていないポイントです。
「人工肛門になった」と聞くと、「もう一生そのままなんだ」と思う人も少なくありません。
しかし、そうとは限りません。
一時的ストーマ
例えば、直腸がんの手術などでは、手術でつないだ腸をしっかり治すために、一時的に便の通り道を変えることがあります。
腸が十分回復したあと、再び手術を行い、ストーマを閉じるケースも少なくありません。
つまり、「腸を休ませるため」に作るストーマです。
永久ストーマ
一方で、病気の場所や広がりによっては、肛門そのものを残せない場合があります。
その場合は、永久的なストーマとなります。
どちらになるかは、病気の種類や手術内容によって決まります。

だから、「人工肛門=一生」ではありません。
「臭い」「痛い」は本当?
これもよくある誤解です。
ストーマ自体には神経がないため、触れても痛みはありません。
もちろん、お腹の手術そのものの痛みはありますが、「ストーマに触れたから痛い」というわけではないのです。
また、「臭いが漏れるのでは」と心配する人もいます。
現在のストーマ用品はとても進歩していて、正しく装着できていれば、普段の生活で臭いが漏れることはほとんどありません。
昔のイメージのまま止まっている人も多いですが、医療機器は年々改良されています。
看護師として印象に残っていること
ストーマを作ると説明された患者さんが、涙を流す場面を何度も見てきました。
「もう普通の生活はできない。」
「家族に迷惑をかける。」
「旅行なんて行けない。」
そんな言葉を聞くこともあります。
でも、その数か月後。外来で再会すると、
「この前、旅行に行ってきたよ。」
「孫と温泉に行けた。」
「仕事にも戻れた。」
そう笑顔で話してくれる人も少なくありません。
もちろん、慣れるまでには時間がかかります。
生活が変わることへの戸惑いもあります。
それでも、多くの人は少しずつ新しい生活に慣れ、自分らしい毎日を取り戻していきます。
ニュースの向こう側にいる人たち
有名人のニュースは大きく報じられます。
でも、そのニュースの裏側には、同じようにストーマとともに生活している多くの人がいます。
「人工肛門」という言葉だけが一人歩きし、不安や偏見につながってしまうこともあります。
だからこそ、この機会に知ってほしいのです。
ストーマは、人生を終わらせるものではありません。
病気を乗り越え、その先の生活を守るために選ばれる、大切な医療の一つです。
おわりに
今回のニュースをきっかけに、「人工肛門」という言葉を初めて知った人もいるかもしれません。
一時的なものもあれば、永久的なものもあります。
そして、多くの人がストーマとともに、自分らしい生活を送っています。
ニュースは数日で忘れられてしまいます。
でも、そのニュースをきっかけに誰かの病気や治療への理解が少しでも深まるなら、それはきっと意味のあることだと思います。
ではまた★
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