(実践解説)「プロジェクト発信型英語プログラムProject-based English Program /PEP©鈴木佑治」(11)...DYOPIE Volume 1, PART 1, UNIT 2の活動:Moderatorの重要性
表紙写真:Moderator(Shutterstock)
「(実践解説)プロジェクト発信型英語プログラムProject-based English Program /PEP(10)...DYOPIE Volume 1, PART 1, UNIT 2の活動について,実践編(5回目)|鈴木佑治 N.Yuji Suzuki」の続きです。
はじめに,アメリカ留学で身に着けた英語プロフェッショナル・スキルModerator(進行役)
各UnitのStep活動の進行はその都度指名されたクラス全体またはグループの進行役(moderator)が行う。UNIT2【Step 2】ではグループ・プレゼンテーションの進行役(moderator) が登場した。【Step 3】ではクラス・プレゼンテーションの進行役が登場します。筆者がアメリカ留学中に感じたのは、英語のネイティブ・スピーカーは、3,4人の小グループと同時に3,40人以上の大グループでの司会進行の術を身に着けていることだ。
最初に目撃したのは1970年、筆者マガジン『アメリカ留学(1968-1978)を振り返って、恩師の方々|鈴木佑治 N.Yuji Suzuki|note』収録の「アメリカ留学を振り返ってーMemorble People恩師(その4の1)...Cal State Hayward (分割バージョン)|鈴木佑治 N.Yuji Suzuki」で紹介した、筆者が日本語の教職を得るにいたった経緯だ。1970年のことである。当時Cal StateのAsian Culture Centerは日本語コースの設置を手掛けた。修士の院生を筆頭に日系、中国系、フィリピン系3~4世およそ100名が主体の州政府公認の組織だ。このセンター立ち上げから、アジア・アメリカン社会学、中国語、日本語、タガログ語の授業導入から、講師採用までまで100名位の学生が行った。筆者は日本語の講師に採用されるが、春学期の1時間目定員30名のところ、その倍以上の受講者が殺到した。
すると彼らはすぐに会議を開き、2クラス開設を決め、担当理事と団体交渉をした。見事な会議だった。司会進行役はAsian Culture Centerのリーダー社会学修士課程のLouis Lee君、筆者と同じ年だ。その采配の素晴らしさ、筆者の日本語クラスは1クラス増えた。次学期には中級コースをでき、その次には上級コースも出来た。お陰様で筆者は日本語講師をする傍ら、英文学の勉強を続けられた。彼らは筆者とほぼ同じ年、怒号が飛び交うわけではなく最後まで民主的に議事を進めるその能力には理事会も誉めていた。筆者もこの英語能力是非つけたいと強く感じた。アメリカ人は小学校、中学校、高等学校を通してこの能力の基本を身に着け、大学の授業そして生活を通して完成させているようだ。
PEPでもこの能力を重視し、毎学期全員がグループ・プレゼンテーション、クラス全体プレゼンテーションの進行役(moderator)を何度も行い、2年間で身に着ける。社会に出てきっと役に立つはずだ。事実外資系の企業に就職した受講者からそれを裏付ける体験談を聞いた。

クラスワーク
【Step 3】クラス全体プレゼンテーション・デイスカッション
【Step 1】ではクラス全体が幾つかのグループ(1グループ5名程度)に分かれ、【Step2】では、グループごとモデレーターの指示で各自3分程度でUNIT 1のクラス外ワークで行ったプロジェクトのプレゼンテーション・ディスカッションした。ここ【ステップ3】では、それぞれのグループから選出された1名のプレゼンターpresenterによるクラス全体プレゼンテーション・ディスカッションを行う。各グループのModeratorが発表者を紹介し、各プレゼンターは【Step 2】と同様、発表時間3分、質疑応答2分という要領で発表する。クラス全体の総合Moderator(Chair)を一人立て(グループModeratorの中から1名選ぶ)、全グループはその指示に従って持ち時間約7分をつつがなく進める。簡単にスケッチすると、
(1)クラス全体のModerator自己紹介、進行手順の説明、グループ A指名
(2)グループA Modrator自己紹介とプレゼンターの紹介
(3)グループA プレゼンターのプレゼンテーション、質疑応答
(4)クラス全体のModerator、Group B指名
といった具合に手際よく全グループの代表が発表を終える。クラス全体Moderatorの役割は各グループに時間厳守を促すことだ。その為にはグループModeratorが、プレゼンテーション・質疑応答の時間厳守することが求められる。もし超過した場合は総合Moderatorはその旨を伝え制止することができる。それも威圧的ではなくやんわりと。
1学期15Units、2年間4学期都合60Units、クラス全員がグループModeratorそして総合Moderatorの役割を体験することができる。全員が毎回それぞれのグループでプレゼンテーション、5人グループなら5週に1回は全体クラス・プレゼンテーションおよびグループModeratorを、2学期に1回は総合Moderatorをすることができる。かくして授業は、教員の指導の下、受講者によって運営され、民主主義の原則に則り、誰もが平等に意見を述べ運営に携わる。
グローバル社会で要されるセッション進行役,Session Modarator/Facilitator
Moderatorが進行に使う実際の文言は『Do Your Own Project In English 〈Volume 1〉プロジェクト発信型英語』に記してあるので参照されたい。重要なことはそれを英語の文言を覚えることではない。それらを使ってプレゼンテーション・セッションをどのように運営するかだ。以下、幾つかのサイトを紹介しよう。
(1)How to Chair a Session in a Conference: Essential Tips for ...
(2)How to chair a poster discussion session - PMC
(3)Chairing Sessions | Learn Science at Scitable - Nature
(4)Mastering the Art of Conference Session Chairing: Tips and ...
(5)How to chair a session at an academic conference
(6)Session chair guidelines – ipac23.org
(7)Simple Tips for Effectively Chairing a Conference Session
単に司会進行役といっても奥は深い。筆者担当のPEPでは3年生、4年生、大学院生の段階では、別稿
で述べたように、海外学術学会のポスター・セッションでドシドシでプロジェクト成果を発表するように勧めている。
同時に、自分で学術学会内で(シンポジウム/ポスター)セッションをオーガナイズし、そのChair/ Moderatorを行ってもらいたく思う。
1976,7年に遡るが、筆者アメリカ大学院での博士課程では所属セミナーで級友と何度も行い、博士論文最終審査会(Defense)の準備をしたものだ。筆者の博士論文審査会は主査1名、副査2名、数名のリーダーなどの言語学・英語学専門家が出席し、その前で確か50分ほどの発表をする。どなたが司会をされたが覚えていないが、発表が終わると先生方から次から次へ厳しい質問が向けられそれになんとか応答した。1時間以上続いた。これが通らなければ博士号(Ph.D.)は取得できない。
事前に、セミナーの同僚達数名にお願いして模擬審査会をオーガナイズした。(普段の授業でも授業外で級友とミニ・セッションを開いて勉強したのでその延長であるが)色々厳しいコメントをもらい、改善し、上記の論文審査会に臨んだ。
その後の人生で学会プレゼンテーションや司会進行の良い勉強になったことは言うまでも無い。教職に就いてからは発表とセッションの司会進行役に明け暮れたと言ってもよい。
また、筆者は、英語以外の言語学やコミュニケーション論などの専門科目でも、プロジェクト発信型に徹し(アメリカでは講義科目でも通常ディスカッション・セッション)、筆者は司会進行役Moderatorに徹した。よって、専門知識を披露し受講者の意見を遮ることは極力控え、授業の最後でやんわりと提示した。
セッション進行役,Session Modarator/ Facilitatorに求められる知識、創造力・想像力
セッションの進行手順その他機械的なことは回を重ねることで上達するが有意義なセッションにするためには幅広い知見と創造力そして想像力が試される。上記(1)の記事は、Moderatorには
(a)オープンエンドな質問をし、効果的な手段を使い聞き手をライアルタイムのダイアログに導入する能力、
(b)難解なスピーカーがセッションのテーマから外れないよう、また、その熱意を覚まさぬよう、その専門的イシューをさりげなく対処する能力、
(c)多様な見解を奨励し、参加者の学習意欲・体験を高め、目的を遂行できるよう導く能力、
が求められると述べている。
また、(4)の記事は、Moderatorには、
(a)いかなる話題、コメントの対応できる幅広い知識・学識が求められること、
(b)セッション・スピカ―全員の事後評価、すなわち、スピーカーのペーパーまたは発表内容につき、データ、リサーチ方法論、理論、その応用、そして結論を評価すること、その際、スピーカーが内容を改善強化できるよう絶えず建設的評価(constructive criticism)に徹すること、それをフィードバックすること、
等々、高度なプロフェショナル能力が求められると述べている。
要するに、Moderatorたるものには、自ら多様な知に挑戦する研究・探究が熱心であることを求められる。筆者自身、自らのプロジェクト発信型授業を担当しながら絶えずそのようなことを思いながら、受講者の関心事を探究したつもりである。
筆者が生涯学習を推奨しているのは、こうして次から次へと勉強したいことが増え、言語学、英語学、英語教育論においても彼らのテーマから次々と想像が湧き展望が開けたこと、幸い、筆者にとってコミュニケーションとは森羅万象、それらをすべてひっくりまとめて言語・コミュニケーション論という枠組みで探究し始めたこと、などがきっかけだ。今年で54年にもなる。これは生涯続く。
まさに無限の世界、人の意識の創造的世界だ。意識が持てないAIは真似出来ても実際には体験できない領域だ。
「意識科学イージー・プロブレム? ハード・プロブレム?(その1)... OpenAI/Chat GPTは|鈴木佑治 N.Yuji Suzuki」
「意識科学イージー・プロブレム? ハード・プロブレム?(その2)... OpenAI/ ChatGPTはどっちに挑戦?|鈴木佑治 N.Yuji Suzuki」
これからAI化する世界で、グローバル化し個々人の意識が価値を持つだろう世界で生き残るには、もしかすると上記の意味でのModerator能力、そこでセッションをオーガナイズしそこから商品を開発するしかないだろう。Moderator能力必須か。これは生涯を通しユビキタス(何時でも何処でもだれにでも)にできる。この稿を含め『For Lifelong English 英語活動情報誌|鈴木佑治 N.Yuji Suzuki|note』に掲載するエッセイは一つ一つがその断片だ。(2026年3月4日)
(実践解説)「プロジェクト発信型英語プログラムProject-based English Program /PEP©鈴木佑治」(12)」に続く
公式サイト:For Lifelong English 英語活動情報誌
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