眼科医視点で考える「花粉症対策」【岡本眼科クリニック】
こんにちは。
愛媛県松山市【岡本眼科クリニック】院長の岡本茂樹です。
毎年春になると、
「目がかゆい」
「赤くなる」
「ゴロゴロする」
といった症状に悩まされる方が増えてきます。
花粉症というと鼻水やくしゃみを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、目の症状も生活の質(QOL)を大きく下げる原因になります。
わたしは、大学病院に勤務していた頃からアレルギー性結膜疾患の診療・研究に携わってきました。
その経験をもとに、今回は「眼科医視点の花粉症対策」をお伝えできればと思います。
◼︎花粉症は「アレルギー性結膜炎」のひとつです
目のアレルギーは、まとめて「アレルギー性結膜炎」と呼ばれます。
大きく分けると、次の3つに整理できます。
① 季節性アレルギー性結膜炎
いわゆる「花粉症」です。スギやヒノキなど、花粉が飛ぶ時期だけ症状が出ます。
② 通年性アレルギー性結膜炎
ダニやハウスダストなどが原因で、1年を通して症状が出やすいタイプです。
③ 重症型(春季カタル・アトピー性角結膜炎など)
結膜が盛り上がるなど強い炎症が起こるタイプで、専門的な治療が必要になることがあります。
◼︎花粉症の原因と症状が出る時期
花粉症の原因は、スギだけではありません。
・スギ(2月〜4月ごろ)
・ヒノキ(3月〜5月ごろ)
・イネ科(5月〜7月ごろ)
・ブタクサ(8月〜10月ごろ)
など、さまざまな花粉が関係します。
植物によって花粉を飛ばす時期が異なるため、症状が出る時期にも違いがあります。
また地域差もあり、北海道ではスギ花粉は少ない一方で、シラカンバによる花粉症が多いことが知られています。
さらに、私が関わった調査の中で、印象的なデータがあります。
スギ花粉症のある方の中には、ヒノキにも反応している方が一定数いらっしゃいました。一方で、「ヒノキだけ」に感作している方は、ほとんど見られなかったのです。
つまり、スギ花粉症がある方は、ヒノキ花粉の時期にも症状が続く可能性があるということです。
実際、「4月でスギは終わったはずなのに、まだ目がかゆい」というケースは少なくありません。その場合、ヒノキ花粉の影響を受けている可能性があります。
ですから、毎年スギ花粉症がある方は、5月に入っても症状が続くようであればヒノキもあると考え、自己判断で治療をやめずに、しっかりコントロールを続けることが大切です。

◼︎花粉症の目薬は「予防」が大切
花粉症の治療で大切なのは、「花粉の飛散が始まる前から」点眼を開始するということです。
現在の抗アレルギー点眼薬は、継続して使用することで、アレルギーが起こりにくい状態を保つことができます。
毎年花粉症になることが分かっている方は、症状が出る2週間ほど前から点眼を始める(季節前投与)ことで、花粉のピーク時の症状を抑えやすくなります。
途中で症状が落ち着いたからといって自己判断で中止せず、花粉の時期が終わるまで継続することも重要です。
◼︎原因が分からず繰り返す方へ
毎年のように結膜炎を繰り返しているのに、「原因がよく分からない」という方も多くいらっしゃいます。
特定の場所に行った後だけ症状が出る場合、
・動物(犬・猫・ウサギ・ハムスターなど)
・ダニやハウスダスト
・カーペットや布製ソファに溜まったアレルゲン
・実家や別宅など、普段とは違う住環境
・寝具や枕などに付着したダニ
・春先であれば庭木や周囲の植物の花粉
が原因となっていることもあります。
このような場合、血液検査でアレルギーの原因を調べることで、予防や対策が立てやすくなります。
原因が分かれば、
・事前に点眼を始める
・環境を調整する
といった対応が可能になります。

◼︎コンタクトレンズ使用中の注意点
コンタクトレンズを使用している方は、花粉症の時期に症状が悪化しやすい傾向があります。理由は大きく二つあります。
一つは、コンタクトレンズそのものが刺激となり、巨大乳頭結膜炎などのアレルギーを引き起こすことがあるという点です。
もう一つは、レンズに花粉やダニなどの抗原が吸着し、それが目の表面に長時間触れ続けることで、症状を悪化させてしまうことです。
特に2週間交換や1か月交換タイプのレンズは、洗浄しても花粉などが完全には取りきれないことがあります。そのため、花粉症の時期だけでもワンデータイプに変更することは、現実的で効果的な対策の一つです。
どうしてもコンタクトを装用する必要がある場合は、ワンデータイプを使用し、眼科で処方された抗アレルギー点眼薬を併用します。ワンデーであれば、1日に数回の点眼は臨床的にも許容されることが多いです。
それでも症状が強い場合は、無理にコンタクトを続けず、いったん中止する判断も大切です。また、花粉対策用のメガネを併用することで、物理的に抗原が目に入るのを防ぐことも有効です。
◼︎洗眼や市販の目薬について
よく聞かれるのが、「目は洗眼液で洗ったほうがいいですか?」という質問です。
物理的に花粉を洗い流すという意味では、一見よさそうに思えるかもしれません。
しかし、目の表面を覆っている涙には、細菌やウイルスから目を守る大切な働きがあります。その涙を何度も洗い流してしまうことは、かえって目の防御機能を弱めてしまう可能性があります。
さらに、水道水での洗眼は、含まれる塩素によって角膜や結膜に刺激を与えることがあるため、注意が必要です。
花粉症の症状が強い、あるいは毎年繰り返している場合は、自己判断で対応するよりも、一度医療機関で相談していただくほうが、結果的に早く落ち着くことが多いと感じています。

◼︎ステロイド点眼薬の正しい使い方
ステロイド点眼薬は、炎症を強く抑える効果がある薬です。
特に目が真っ赤に充血しているような、炎症が強いケースでは有効です。
一方で、「かゆみ」に対する効果については、抗ヒスタミン点眼薬と大きな差がないというデータもあります。
そのため、まずは非ステロイドの抗アレルギー点眼薬から治療を始めるのが一般的です。
それでも充血が強い場合や炎症が強い場合には、ステロイドを併用することがあります。
ただし、ステロイドには眼圧を上げる副作用があります。
特にお子さんは、ステロイドに反応して眼圧が上がりやすい傾向があるため、より慎重な管理が必要です。
ステロイドを使用する場合は、必ず眼科医の管理のもとで、定期的に眼圧を測定しながら使うことが大切です。
◼︎花粉症で困っている方へ
花粉症による目のかゆみや充血は、我慢しようと思ってもなかなか我慢できるものではありません。
かゆみで集中できなかったり、目が赤くなって気になったりと、日常生活の質を大きく下げてしまいます。
毎年つらい思いをしている方は、症状が強くなってから対応するのではなく、花粉が始まる前から予防的に点眼を始めることを考えてみてください。また、コンタクトレンズの使い方を見直したり、必要であれば原因を調べたりすることも、長い目で見れば役に立ちます。
アレルギーを完全になくすことは難しくても、「うまくコントロールする」ことはできます。
今回の記事は以上です。
花粉症による目の症状は、少しでも気になることがあれば、早めに眼科に相談してみてください。
これからも当院では、患者さんの生活や季節ごとの変化を見据えながら、無理のない、現実的なアレルギー対策を一緒に考えていきたいと思います。
岡本眼科クリニック
院長 岡本 茂樹
