【宇宙一わかりやすい僕らの憲法のお話( ・ω・)】9 平和主義、その本当の意義~「周りが危ないから」という空気に流される前に、感情論抜きでスッキリわかる9条の仕組み~
【※この記事は、2023年7月アメーバブログ公開記事を加筆・再編集したものです。】
こんにちは。
アレテーを求めて~
今日もトコトコ( ・ω・)
弁護士の岡本卓大です。
宇宙一わかりやすい僕らの憲法のお話( ・ω・)
の第9話です。
1 憲法って、なんだろう?立憲主義のお話
2 民主主義って、多数決のことじゃないの?
3 三権分立 独裁者を生まないためのシステム
4 憲法前文って、なぁに?
5 象徴天皇制とジェンダーのお話
6 「個人の尊厳」と「公共の福祉」って、なんのこと?
7 「人権」とはなにか?
8 税金と民主主義
9 平和主義、その本当の意義
10 表現の自由って、どうして大事?
11 信教の自由って、どういうもの?
12 ほんとに守られてますか?学問の自由
13 昔はあたりまえじゃなかった婚姻の自由
14 生存権・・・教えて、僕らの生きる権利
15 一人の個人として育つために~学習権
16 職業選択の自由とは?
17 働く人の権利
18 財産権という人権
19 「平等」って、なに?
20 適正手続~刑事裁判と人権
21 憲法の条文に書いてない人権は認められないの?
22 国会とは?
23 内閣とは?
24 裁判所とは?
25 地方自治って、なんだろう?
26 憲法改正の手続のこと
27 最後に繰り返そう!「憲法」が大切な理由(最終回)
今回は、第9話。
平和主義、その本当の意義
です( ・ω・)
いやぁ、憲法の問題で、一番アンチが出てきそうなテーマですね。 特に最近は、ニュースを開けば「防衛費の大幅増額」や「反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有」、そして緊迫する東アジアや世界の情勢ばかりが目に入ります。「日本もいよいよ自分の身は自分で守れる強い国にならなきゃいけないんじゃないか?」と感じている方も多いと思います。
だからこそ、今回は、日本国憲法の最大の特色である憲法9条の平和主義について、今のリアルな政治情勢も踏まえつつ、あえてニュートラルな立場から語ってみたいと思います。 改憲だ、護憲だと平行線の議論をする前に、まずは共通項を知っておこうぜ( ・ω・)
では、まずは条文から入りましょう。
憲法第9条(戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認)
①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際社会を誠実に希求し、国権の発動としての戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
日本国憲法9条の平和主義。この平和主義の理念は、憲法前文にも表れています。 その平和主義の理念を条文として明確に規定したのが、この憲法9条です。
まず平和主義の原理について、我々の時代の司法試験合格者のほとんどが読んでいた芦部信喜先生の「憲法」から、その説明を引用してみましょう。
日本国憲法は、第二次世界大戦の悲惨な体験を踏まえ、戦争についての深い反省に基づいて、平和主義を基本原理として採用し、戦争と戦力の放棄を宣言した。 (中略) これに対して、日本国憲法は、第一に侵略戦争を含めた一切の戦争と武力の行使および武力による威嚇を放棄したこと、第二に、それを徹底するために戦力の不保持を宣言したこと、第三に、国の交戦権を否認したことの三点において、比類のない徹底した戦争否定の態度を打ち出している。
そして、この日本国憲法の平和主義は、単に自国の安全を他国に守ってもらうというような消極的なものではありません。 日本国憲法の平和主義は、平和構想を提示したり、国際的な紛争・対立の緩和に向けて提言を行ったりして、平和を実現するために積極的行動を取るべきことを要請しています。 すなわち、そういう積極的な行動をとることの中に日本国民の平和と安全の保障がある、という確信を基礎にしています。
残念ながら、現実の日本の政治家の中に、この理念を理解できている者がどれだけいるのかは、現実の政治を見ていると大いに疑問を持ちます。しかし、まずは、日本国憲法の平和主義が目指しているものを、きちんと理解しておくことは最低限必要なことであると思います。
歴代政府が守ってきた「ギリギリのバランス」
さて、この憲法9条の解釈をめぐっては、歴史的には自衛隊が憲法9条に抵触しないかという問題として議論されてきました。
ここで、かつての歴代の内閣がとってきた、確立していた政府解釈を考えてみましょう。
従来の日本政府は、「近代戦争を有効適切に遂行しうる装備、編成を備えるもの」として「戦力」を定義したうえで、9条2項前段では、自衛の目的のものを含め、あらゆる「戦力」の保持が禁止されているとする一方、ここにいう「戦力」にいたらない程度の、自衛のための必要最小限度の実力の保持は、あらゆる国家が享有する自衛権によって正当化されるとしてきました。
そして、この見解に基づき、自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力にとどまっているため、9条で保持を禁じられた戦力にはあたらないとされてきました。
さらに、従来の政府解釈によれば、
憲法9条は個別的自衛権の行使のみを許すもの。
日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受けた場合、それを日本への攻撃と見なして共同して防衛にあたる「集団的自衛権」については、日本を防衛するための必要最小限度の実力行使の範囲を超えるものとして、憲法により禁じられている。
とされていました。
これはある意味、ものすごい「屁理屈」ではあるのですが、現実の必要性と法の解釈のバランスをギリギリのところで取っていた、先人たちの賢明な知恵であったとも言えます。
なし崩しにされる「一線」と、最近の政治情勢
ところが、いま僕たちの目の前で起きている現実の政治情勢はどうでしょうか。
2014年の集団的自衛権の行使容認(閣議決定)や、2015年の安全保障法制の成立以降、この「ギリギリのバランス」は完全に崩れ始めています。
さらにここ数年では、防衛費をGDP比2%へ向けて大幅に増額することや、他国の領土を直接叩くことができる長射程ミサイル(反撃能力・敵基地攻撃能力)の配備が、既定路線としてどんどん進められています。それだけではなく、「同志国」と呼ばれる国々(アメリカや欧州、ウクライナなど)への実質的な軍事支援や、他国軍との共同訓練・一体化も加速しています。
ニュートラルな法律家の立場から、あえてストレートに言わせてください。 これらは、従来の政府解釈が掲げていた「自衛のための必要最小限度の実力」というコップの水を完全に溢れさせています。
周りの国際環境が緊迫しているのは事実です。だからといって、ルール(憲法)を無視してなし崩し的にアクセルを踏み続ければ、待っているのはブレーキの壊れた車の暴走です。これでは立憲主義(憲法で権力を縛るという原則)そのものが崩壊してしまいます。
集団的自衛権の「リアル」
ここで少し、頭を冷やすために歴史のデータを見てみましょう。 これまで集団的自衛権が行使された主な例です。
行使開始年 事例 行使国 対象国・地域
1956年 ハンガリー動乱 ソ連 ハンガリー
1958年 レバノン侵攻 米国 レバノン
1958年 ヨルダンへの軍事介入 英国 ヨルダン
1965年 ベトナム戦争 米・豪・ニュージーランド他 南ベトナム
1968年 チェコスロバキア侵攻 ソ連他 チェコスロバキア
1979年 アフガニスタン侵攻 ソ連 アフガニスタン
1981年 ニカラグア侵攻 米国 ニカラグア
1980年 チャドへの軍事介入 リビア・仏・ザイール・米国 チャド
1983年 グレナダ侵攻 米国 グレナダ
1975年 アンゴラ内戦への派兵 キューバ アンゴラ
1990年 湾岸諸国への支援 米国・英国 クウェート他
1993年 タジキスタンへの支援 ロシア他 タジキスタン
1998年 第二次コンゴ戦争 ジンバブエ・アンゴラ・ナミビア コンゴ民主共和国
2001年 アフガニスタン戦争 英・カナダ・仏・独・蘭・豪他 アフガニスタン
2014年 イラク・シリア空爆 米国 イラク・シリア
※なお、最新のものだと、2026年2月28日に開始されたイスラエルとアメリカによるイラン攻撃について、アメリカは集団的自衛権行使を名目にしています。
みなさん、気づいたでしょうか? 集団的自衛権なるものを行使しているのは、ほとんどがアメリカやソ連(ロシア)といった「超大国」です。 超大国が自国の利益や影響力を守るために、他国に軍事介入するときの「大義名分(名目)」として利用されてきたのが集団的自衛権のリアルであって、教科書にあるような「弱小国同士が手を結んで大国の脅威に立ち向かう」という美しい使われ方は、現実の国際政治ではほとんどされていません。
世界一の軍事大国であるアメリカと同盟を組み、そのアメリカの戦争にいつでも付き合えるようにすること(集団的自衛権の行使や自衛隊の一体化)が、本当に日本を平和にする道なのか。それとも、他国の戦争の巻き込まれ事故を招く片道切符なのか。僕たちは今、その瀬戸際にいます。
まとめ( ・ω・)
憲法9条の平和主義のエッセンスを改めてまとめます。
① 日本は「戦争をしない」と憲法で宣言している。
② 日本は「戦力」を持ってはいけないと憲法で宣言している。
③ でも、日本が直接攻撃されたときの「正当防衛(個別的自衛権)」はできる。
世界の緊張が高まっている時代だからこそ、感情論や「周りが危ないから」という空気に流されてはいけません。立ち止まって、この基本のブレーキ(憲法)を思い出すこと。それこそが、今を生きる僕たち一人ひとりに求められている「平和主義の本当の意義」ではないでしょうか。
読んでくださり、ありがとうございました。
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