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AI時代に「調べ方がわからない人」が増える理由(AI時代の勉強法と思考体力 #004)

「それ、少し調べれば出てくるよ」

仕事や勉強の場で、そう思ったことがある人は多いと思います。

講師をしていても。
先輩として相談を受けていても。
検索すればすぐ見つかるはずのことを、わざわざ聞かれる。

しかも聞かれている内容は、難しい専門知識ではない。

「この評価は何を見ればいいですか?」
「この疾患には何をすればいいですか?」
「おすすめの方法を教えてください」
「結局、何を勉強したらいいですか?」

そんな、あまりに広い質問です。

以前なら、こう考えていました。

「調べる気がないのかな」
「まず自分で考えればいいのに」
「答えだけ欲しいのかな」

でも最近は、少し違うのかもしれないと思っています。

もしかすると多くの人は、
調べる方法そのものがわからない。


正確には、

何を調べればいいのか。
どこまで調べればいいのか。
調べた情報をどう比べればいいのか。
そして、自分の課題をどう言葉にすればいいのか。

そこがわからないんじゃないか? と。


調べるときに使う”検索”
検索とは、キーワードを打ち込む作業ではありません。

本当はその前に、

「自分は何に困っているのか」
「何がわからないのか」
「すでにわかっていることは何か」
「どこから先が曖昧なのか」

を整理する必要があります。


つまり、調べる前に必要なのは、
答えではなく問いです。

たとえば、

「うつ病のリハビリを教えてください」

という問いでは、範囲が広すぎます。

うつ病といっても、状態はさまざまです。

  • 急性期なのか。

  • 回復期なのか。

  • 復職を目指しているのか。

  • 身体症状が強いのか。

  • 活動量が落ちているのか。

  • 人との関わりを避けているのか。

  • 生活リズムが崩れているのか。

  • 本人は何に困っているのか。

ここが曖昧なままでは、どれだけ検索しても一般論しか出てきません。


だから検索結果を見ても、

「結局、何をすればいいんですか?」

となる。


でも本来、臨床で必要なのは一般論ではありません。

「この人の今の困りごとに対して、何を優先するか」です。


たとえば問いを変えてみます。

「昼夜逆転があり、午前中に起きられず、外出への不安も強い。運動提案には拒否的なうつ病の人に、作業療法士として最初に何を評価し、どんな小さな行動から始めるとよいか」

ここまで具体的になると、調べる方向が変わります。

  • 睡眠。

  • 不安。

  • 活動量。

  • 行動活性化。

  • 生活リズム。

  • 拒否への関わり。

  • 段階づけ。

  • 環境調整。

必要な情報が、少しずつ見えてきます。


調べる力とは、検索テクニックではありません。

問題を細かく分ける力です。


大きすぎる問いを、そのまま抱えない。

「わからない」を放置しない。

何がわからないのかを分ける。
今の自分に足りない知識を見つける。
調べた情報を比べる。
それでも残る疑問を、また問い直す。

この繰り返しが、学びになります。


AIが広がった今、この差はさらに大きくなっています。

AIは、質問すればすぐに答えてくれます。

けれど、質問が曖昧なら、返ってくる答えも曖昧です。

以前、IBMの方とお話しをした際、

「AIは正しい質問をすれば、正しい回答をしてくれるものです」

と言ってました。
なかなか真理ですね。


「おすすめの勉強法を教えて」
「この疾患への対応を教えて」
「患者さんのやる気を上げる方法を教えて」

こうした聞き方では、AIは整った一般論を返してくれます。

読んだ瞬間は、もっともらしく見えます。

でも、現場で使おうとすると止まる。

「で、この人には何をする?」
「今の段階では何を優先する?」
「この提案が合わないとしたら、どこを見直す?」

そこが抜けているからです。


AIをうまく使う人は、AIに詳しい人ではありません。

自分の問いを、具体的にできる人です。

そして問いを具体的にするには、
自分の頭の中を整理する必要があります。

何が起きているのか。
何が問題なのか。
何を知りたいのか。
どの情報が足りないのか。

ここを言語化できる人は、AIからも、先輩からも、本からも、深い答えを引き出せます。

逆に、問いが曖昧なままだと、どれだけ便利なツールを使っても、得られるのは浅い答えになりやすい。


調べる力とは、答えを早く見つける力ではありません。

自分のわからなさを、正確に扱う力です。

そしてこれは、専門職にとってとても大切な力です。

患者さんの状態も、最初から答えが見えているわけではありません。

何が起きているのか。
何が背景にあるのか。
どこから介入するのか。
何を優先するのか。

一つずつ問いを立て、情報を集め、仮説を立て、確かめていく。


臨床推論も、学び方も、構造は同じです。

「自分で調べて」と言われて困る人は、能力が低いわけではありません。
ただ、問いを立てる練習が足りていないだけかもしれません。

だからこそ、これから必要なのは、

検索を速くすることではない。
AIにうまく答えさせることだけでもない。


「私は、いったい何を知りたいのか」


そこを自分の言葉で言えるようになることです。

良い問いは、良い学びをつくる。

そしてAI時代には、
良い問いを持てる人ほど、深く学び続けられるのだと思います。

齋藤 信

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