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上腕三頭筋トレーニングにおける迷信

参考文献

Vargas-Molina, Salvador, et al. Influence of hand grip in resistance-training exercises on the triceps brachii activation: A narrative review. Journal of Physical Education and Sport (JPES). 2024; 24(10): 1456-1464. doi:10.7752/jpes.2024.10272.

レジスタンストレーニングにおけるハンドグリップが上腕三頭筋の活性化に及ぼす影響:ナラティブレビュー


とりあえず内容を知りたい方はここ

目的

このレビューの目的は、上腕三頭筋のトレーニングにおける手の位置(回内・回外・ニュートラル)の変化が、各頭の筋活性化および関節にどのような影響をもたらすかを明らかにすることです。

方法

既存の文献を基に、解剖学的特性、表面筋電図(sEMG)によるデータ、および関節の適合性の観点から分析を行いました。
特に、関節の安定性を最大化し、靭帯への過負荷による怪我のリスクを抑えるためのエクササイズ分類を試みています。

結果

特定のグリップ(回内または回外)が、上腕三頭筋の特定の頭(長頭・外側頭・内側頭)を有意に孤立させて活性化するという科学的根拠は現時点で限られていることが示されました。
一方で、ニュートラルグリップは関節の適合性が最も高く、怪我のリスクを軽減しながら高い安定性を提供することが確認されました。

結論

上腕三頭筋のエクササイズは、関節の安全性に基づき3つのレベルに分類可能です。
筋肥大を目的とする場合は、グリップの変更よりも肩や肘の角度を調整し、筋肉がストレッチされる位置で負荷をかける方が効果的であると結論付けられました。


ポイントと感想

グリップによる部位分けの迷信と科学的根拠

上腕三頭筋は、その名の通り3つの頭を持ちます。
そしてグリップの向きで上腕三頭筋の各頭を鍛え分ける手法が信じられてきました。
しかし、本レビューではその根拠が乏しいことを指摘しています。

実際、内側頭は深層に位置するため表面筋電図での正確な評価が困難であり、一部の研究ではむしろ回外グリップが長頭の活動を高めるという、従来の定説とは異なる結果も報告されています。まずは筋全体の導入が優先されそうです。

ニュートラルグリップの重要性

前腕の肢位が橈尺関節の安定性に及ぼす影響について、このレビューでは述べられています。
ニュートラルポジション(親指が上)はClose-packed positionと呼ばれ、関節面の適合性が最大となり、靭帯などの受動組織が最適に機能します。

一方で、最大回内や回外の状態での高重量トレーニングは、関節の幾何学的な不一致を引き起こし、尺骨頭の亜脱臼や靭帯損傷のリスクを高める可能性があります。
まずはニュートラルグリップやEZバー、ロープを用いたセミプロネーション(30〜45度の回内)でのエクササイズを行うことは、安全性を担保する上で非常に重要な選択肢となります。

安全性レベル

著者らは、関節へのストレス度合いに応じて種目を3段階にレベル分けしています。

  • レベル1(推奨):パラレルバー・ディップス、ナローベンチプレス、ニュートラルグリップでのスカルクラッシャー

  • レベル2:ロープやVバーを用いたケーブル・プッシュダウン

  • レベル3(注意):ストレートバーでのスカルクラッシャー、ベンチディップス、キックバック

特にベンチディップスやストレートバーを用いた種目は、解剖学的に手首や肘に強い剪断力が加わりやすい「レベル3」に分類されています。
筋肥大を狙う上でバリエーションは必要ですが、まずはレベル1の種目で関節の安定性を確保した上で、負荷設定を行うべきでしょう。

また、特定の部位をターゲットにするなら、グリップ以上に肩の屈曲角度が重要です。
長頭の伸張刺激を狙うならオーバーヘッド種目を選択するなど、解剖学的付着部に基づいた運動処方が、結果として最も効率的かつ安全なアプローチになると再認識させられました。

ではでは。

#整形外科 #理学療法士 #リハビリテーション

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