パワーと持久力〜仲良しか犬猿の仲か〜
参考文献
Ferguson, Carrie, et al. Power and Endurance: Polar Opposites or Willing Partners? Medicine & Science in Sports & Exercise. 2025; 57 (11): 2480-2495. doi: 10.1249/MSS.0000000000003793.
パワーと持久力:対極の存在か、それとも協調的なパートナーか?
とりあえず内容を知りたい方はここ(論文の要約)
目的
この論文は、骨格筋のピークパワー(筋神経系)と持久力(有酸素能)の適応における相互関係をレビューすることを目的としています。
特に、これらがトレーニングにおいて干渉効果を持つのか、あるいは相互補完的な役割を果たすのかを、分子レベルから臨床的評価まで幅広く検証しています。
方法
スポーツ科学、加齢に伴う生理学的変化、および臨床集団における既存の文献を横断的に分析しました。
また、心肺運動負荷試験(CPET)に等速性パワー測定を統合した「筋・心肺運動負荷試験(mCPET)」の概念を用いて、神経筋機能と有酸素能の相互作用を評価・分析しました。
結果
未訓練者において、持久力トレーニングがレジスタンス運動による筋肥大や筋力向上を阻害するという明確な証拠は見られず、むしろ良好な影響を与える可能性が示されました。一方で、アスリートの爆発的なパワー開発においては、持久力トレーニングの追加が干渉を引き起こす可能性が認められました。また、加齢による筋力と持久力の低下は、ミトコンドリア機能不全という共通の生物学的基盤を持っていることが明らかになりました。
結論
ピークパワーと持久力は、決して相反する性質ではなく、互いに補完し合う関係にあります。
最大酸素摂取量は利用可能な筋肉量やパワーに依存しており、臨床現場や健康寿命においては、これらを統合的にアプローチすることが重要であると結論付けられました。
ポイントと感想
干渉効果のパラダイムシフト
持久力運動をやり過ぎると、筋肉量が減っていくという理論は聞いたことがありますか?
有酸素運動によって活性化されるAMPK経路が、筋肥大を司るmTORC1経路を阻害するという理論です。
しかし、今回の論文内では未訓練者や一般集団においてこの干渉効果はほとんど無視できるレベルであり、むしろ持久力向上が筋肥大をサポートする側面すらあることが強調されています。
筋力訓練と有酸素運動を同日に実施することに過度な不安を感じる必要はなく、むしろ両輪で進めることが心身機能の全体的な底上げに寄与すると言えます。
生理学的レジリエンス
個人的に少し印象に残った点として、持久力の決定要因に「生理学的レジリエンス(耐久性)」を挙げている点です。
これは、長時間の運動負荷がかかった後でも、いかにパワーを維持できるかという能力です。
アスリートの研究では、レジスタンストレーニングを加えることでランニングエコノミーが改善し、疲労下でのパフォーマンス低下が抑制されることが示されています。
日頃の介入では、なかなか評価も難しい部分だと思います。長時間歩いた時にフラフラしてしまう方は、この生理学的レジリエンスが低下しているかもしれません。
加齢とミトコンドリア
加齢によるフレイルやサルコペニアを考える際に重要な視点として、ミトコンドリア機能不全がを指摘しています。
持久力トレーニングを継続している高齢者は、そうでない群よりも高い筋力を維持しているというデータもあります。
加齢に伴う筋力低下に対して、現在の筋力を維持・向上させるためには、筋力訓練だけでなく、ミトコンドリアの質を改善させるような有酸素運動の処方が不可欠である可能性がありますね。
ではでは。
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