エリートアスリートのメンタルヘルス〜弱音を吐かない文化がもたらす問題〜
参考文献
Schinke, R. J., Henriksen, K., Moore, Z. E., Stambulova, N., Bartley, J., Cosh, S., … Wong, R. (2024). International society of sport psychology position stand: elite athlete mental health revisited. International Journal of Sport and Exercise Psychology, 22(4), 775–801. https://doi.org/10.1080/1612197X.2024.2359872
国際スポーツ心理学会の立場:エリートアスリートのメンタルヘルスの再考
とりあえず内容を知りたい方はここ!(要約)
エリートアスリートのメンタルヘルスは、近年ますます注目されるテーマです。
主なポイント
メンタルヘルスの定義
WHOの定義が基本。
アスリートの潜在能力発揮、意味のある人生、信頼関係、ストレス対処、価値観に基づく行動を含む動的なウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に満たされた状態を表す概念)連続体モデル
メンタルヘルスは「健康」と「問題」の二分法ではなく、複数の連続体(情動・認知・対人など)で理解。メンタルヘルスの実態
アスリートの半数は何らかのメンタルヘルス問題を経験。うつ症状:10~34%
不安症:診断6%、自己報告14.6%
摂食障害:1~28%(女性や審美系競技、階級系競技で多い。)
アルコール乱用:19%
リスク因子
ケガ、過度なトレーニング、頻繁な移動、SNS圧力、勝利至上主義文化など。保護因子
回復戦略、対処スキル、自己コンパッション、心理的安全性のあるチーム文化。環境と文化の重要性
組織文化はリスクにも保護にもなる。文化的背景(西洋 vs 東洋)による対応の違いにも配慮が必要。ヘルプシーキングの課題
スティグマや契約への影響を恐れることが障壁。
信頼や機密保持の明確化、ロールモデルの存在が促進要因。
ポイントと感想
多くのアスリートがメンタルヘルスの問題を抱える
個人的には50%程度のアスリートが、メンタルヘルスに問題を抱えた経験があるということです。
メンタルヘルスを単なる障害の有無ではなく、ポジティブな側面も含めた連続体で捉えている点も、この論文内では重要な側面かと思います。
スポーツの文化と心理的安全性
その分野でもそうですが、特に多くの人の期待を背負うのがスポーツアスリートです。
何かの代表となると尚更です。
オリンピックなどでも、期待に沿えないと判断した場合にインタビューなどで謝る選手もみられました。
そういったプレッシャーに加え、勝利至上主義や閉鎖的な組織文化がメンタルヘルス問題のリスクを増やす一方で、信頼関係やオープンな対話が保護因子になると報告されています。
これは、チームにおけるコミュニケーションや医療者との関係にも通じる部分だと思います。
どのような方でもオープンに打ち明けられる場所が必要ですね。
弱さを見せない文化的背景は、アスリートだけでなく、日本の患者さんにも共通すると思います。
「弱音を吐かない姿」が美化されてきたため、「弱音を吐く自分」を卑下してしまったり、弱音を吐く人を弱音を吐かない人と比べてしまうことがあると思います。
メンタルの話題を避けがちな人にどうアプローチするかは今後の課題となりそうです。
ではでは。
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