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📙アルプス席の母

#読書記録
#早見和真
#アルプス席の母


★★★★★


2025年14冊目。

私の人生ベスト小説といっても過言ではない「ザ・ロイヤルファミリー」を書いた早見和真さん。次は高校野球を題材とした青春小説。と見せかけてやっぱり家族愛の話。

うーん、野球か・・・私は俄然サッカー派なんだよな。しかも主人公は野球少年の母親?うーん、流石に早見和真さんといえど今回はロイヤルファミリー程の感動と喜びは得られないかもしれないなーー・・・








めちゃくちゃ感動した。


いや、ヤバかった。引くほど感動した。

なんて素晴らしいんだ。天才だ。

そういえばロイヤルファミリーの時も思ったんだった。「うーん、競馬か・・・」と。すっかり忘れてた、あのマイナスからの爆上げを。まんまと今回も同じ軌道を描いた。

もうとにかく感動した。終始のめり込む程に。読後感が良すぎて野球がしたくなっ・・・てはなってないけど。デッドボール怖いし。でもやっぱり息子もいいなぁと思ってしまった。

息子と公園でサッカーしたりウイイレやスマブラしたり「お父さんがドンキーを操作するからお前ディディな」とか「アンリはバイタルのこの辺からL1押しながら打つと絶対入るんだぞ」とか言ってみたりしたかった。

あらすじは割愛。
上のリンクから飛んで欲しい。

まず前提として、私は「倒置法マンガや小説」が好きではなかった。要するに冒頭で先の展開を少し見せる書き方だ。時と場合にもよるけど、その場面に行き着く事が約束された物語は読み進める過程で「まぁでも、最後はああなるんだよね?」って気持ちになってしまう。

これがスポーツ物なら尚更NGだ。

某バスケット漫画はこの手法で盛大にやらかしている。あくまで私個人の意見ではあるが。

結局インターハイに行けなかった描写からスタートしてそこまでの過程を追っていく展開。どれだけ接戦だろうが一回戦、二回戦は勝つ事がもう分かりきっている。なぜなら負ける相手高校すらも描いていたからだ。

いつどこで誰と対戦してどうなるかが分かってる試合ほどつまらないものはない。

しかも、様々な紆余曲折を経てやっと実現した公式戦での初対決。監督同士すらもお互い意識する因縁あるライバル同士が満を持して相対する激アツ展開だ。

それが負ける。戦う前から負ける事が決まっている。もうどう足掻いても主人公側は負ける未来へ進むのだ。これには心底げんなりした。

結局作者も途中で書くのをやめてしまった。体調不良とはなっているが、理由がどうであれ読者ももう熱が冷めてしまった感がある。

そのような経験からもスポーツ物での倒置法は御法度だと個人的に思っていた。

無論、小説も然りだ。

そしてこの「アルプス席の母」。なんと冒頭が甲子園球場から始まる。そして息子がベンチから「伝令係」として出てくるのだ。この時点で物語が進んだ先の道が分かってしまう。

「甲子園」に行けて、「補欠」だという未来。

息子の「航太郎」がどの高校に進もうが絶対に甲子園に行ける事。そして補欠だという事。

大丈夫か・・・これは・・・。





大丈夫だった。


杞憂オブ杞憂だった。

なんも問題ない。分かっててもちゃんとドキドキするシーンが山ほどある。勝つん?負けるん?・・・どっち?!ってなる。

ついに自分の中の「倒置法NG偏見」が覆ってしまった。

甲子園に行く事、メンバーインする事がさほど重要ではない可能性。例えば、甲子園常連校に入学したのであれば甲子園出場は前提となる。補欠という事実も怪我や上位互換の登場、その背景を重要視するのであれば事実は知っておいても問題はない。物語がどう進むかによって冒頭のシーンに後から意味が付いてくるのだ。

だからこそ冒頭で先出ししたのではないだろうか?そこに行き着くまでの過程、心境や環境の変化、人との出会い、航太郎はもちろん主人公である菜々子自身の成長。この「変化」を軸に置く事で高校野球という舞台でも「必ずくる未来」に嫌悪感を抱かない。

そして終盤、冒頭のシーンに追いついた所でなんとまだ「その先」が待っていた。むしろここからが始まりで今までがめちゃくちゃ長いプロローグだったんだといってもいいくらい。

あのシーンもこのシーンももっと深掘りして長々と語って余韻に浸りたい所だけど、是非ともフラットな気持ちで読んで感動して欲しいので我慢する。

でもひとつだけ、私が最も響いた場面を言いたい。言いたくてたまらない。

まず冒頭、菜々子の「できれば女の子が欲しかった」的な台詞から始まる。そして終盤、同じように一人息子を育てるシングルマザーの親友と喜びを分かち合う時に「男の子の母親で良かったね!」的な事を言う。この対比がもうズシン!と響いた。


最後のオチも良かった。私自身の母親に対する「母ちゃん」呼びを改めようかと思うくらい感動した。


素晴らしい読書体験でした。ありがとう。


なんて可愛いお手手


良かったら他の読書記録も一読して頂くと喜びます。

お疲れ様でした。

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