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積立投資を、一度全部売ったことがある—400万分を手放してわかったこと

最近、飲み会で「積立、どうやって続けてるんですか?」と聞かれることが増えた。

新NISAでみんな始めた。でも「暴落が来たら怖い」「いつやめどきかわからない」と悩んでいる人が多い。

自分は2017年からもう一度積立を再開して、今年で10年近くになる。まあ、それなりの額にはなった。

さっきの質問には「ただ続けるだけですよ」と言いたくなる。

でも、偉そうに言う資格は、本当はない。

なぜなら、一度積立を全部売り払ったことがあるからだ。


本に書いてあったのに、わかっていなかった

2008年頃から、少しずつ積立投資を始めていた。最初は月1万か3万くらい。その後、5万まで増やした。派手なことはしていなくて、本で読んだ通り、淡々と続けることにしていた。

当時、投資の本はそれなりに読んでいた。

木村剛さんの『投資戦略の発想法』は、まさにあの時期のベストセラー。水瀬ケンイチさんの『お金は寝かせて増やしなさい』も読んだ。「長期・分散・インデックス」という言葉には、もう耳にタコができるくらい触れていた。

でも、頭で知っていることと、実際にやっていることは、数年後にズレ始める。

おかしくなったのは2013年だ。

あの年、ガンホーの株価が1年で約100倍になったニュースが話題になっていた。パズドラの大ヒット。スマホゲームバブルの始まりだった。

「次はMIXIだ」。そういう空気があった。モンストの話もちらほら出始めていた頃。自分もその波に乗ろうとして、MIXI株を買った。

結果は、タイミングが悪かったとしか言いようがない。買った直後に下がった。

ここで我慢して持ち続けていれば大損はしなかったんだけど、そんな先のことは当時はわからない。日々下がっていく含み損に耐えきれず、このままだとやばいと思い、損切りした。

このMIXIでの失敗は、それ自体のダメージより、積立投資のほうまで狂わせた。「ちゃんとやっているのに増えない」「結局、個別で当てなきゃダメなんじゃないか」と思い始める。

地味な積立が、意味のないものに見えてくる。

結局、自分で会社を立ち上げるタイミングで、積立も含めて持ち株を全部売却した。ざっくり400万くらい。資本金に回した。

今振り返ると、あれは「続けられなかった10年」だった。

10年後に、線を引いた本を読み返した

本棚に並んでいる投資本を、最近になって読み返してみた。

木村剛さんが『投資戦略の発想法』で、こんなことを書いている。

そして重要なのは、自分自身の頭の良さでもないのです。重要なのは意志の強さなのです。自分自身の投資行動をコントロールできるかどうかが、すべてです。

(木村剛『投資戦略の発想法〈2008〉』)

当時の自分は、たぶん「頭で勝とう」としていた。次に伸びるセクターを読む。タイミングを当てる。ガンホーを見て次はMIXIだと予想する。そうやって「賢くやれば勝てる」と思っていた。

でも木村さんが言っているのは、投資の勝敗を決めるのは頭じゃなくて意志のほうだ、ということ。どれだけ知識があっても、どれだけ予想が鋭くても、自分の感情をコントロールできなければ負ける。

これ、2008年に読んでたはずなんですよ。線も引いていた。

でもあの頃の自分にとって、この言葉は「当たり前すぎるポエム」にしか見えなかった。「意志が大事」なんて、そんなことはわかっている。大事なのはもっと具体的な投資テクニックだろう、と思っていた。

この本のメッセージは、たぶんどの投資本にも似た形で書いてある。水瀬ケンイチさんは、投資成果は銘柄選びやタイミングじゃなく資産配分でほぼ決まると書いている。本多静六も『私の財産告白』で、勤倹貯蓄を愚直に続けることが財産形成の王道だと言っている。

書いてあることはずっと同じだ。派手にやるな、続けろ、と。でも20代の頃の自分には、その言葉の重みがわからなかった。

2017年、やり方を変えて始めた

会社がそこそこ回り始めた2017年、もう一度積立を始めた。今度はやり方を変えた。

インデックスだけにする。

全米株式のインデックス。それを毎月、何も考えずに買うだけ。

最初は月5万から。少しずつ増やして、結婚後は夫婦で最大月50万まで積み増した時期もある。今はもう少し抑えて運用している。 (※妻には全世界株式のインデックスを購入してもらっている)

金額は変えたけど、「とにかく止めない」だけは変えなかった。

証券口座を連携しているマネーフォワードで夫婦の残高は毎日眺めていたけど、「何を買うか」はもう考えない。ただ淡々と積立設定どおりに買われていく。

買ったことも、ほとんど忘れていた。

コロナ暴落のとき、思ったより平気だった

2020年3月、コロナショックで株価が3割くらい飛んだ(と思う)。

このとき、自分でもちょっと意外だった。まったく動揺しなかった。

売りたくもならないし、怖くもならない。「むしろ安く買えてラッキー」くらいに思って、淡々と翌月の積立を入れた。

この感覚は、2013年の自分にはなかったものだ。

あのときは、値動き一つで心臓が跳ねた。スマホを開くのが怖い日と、何回もチャートを見返す日があった。

なんで今回は平気だったのか。

精神力が強くなったわけじゃない。山崎元さんの『ほったらかし投資術』にある通りなんだと理解できていたから。

積み立て投資に慣れてくると、相場が下がると「安く仕込めてうれしい」という気持ちになり、相場が上がると「資産が増えてうれしい」という、「上がってもうれしい、下がってもうれしい」という心境になることがあります。

(山崎元『ほったらかし投資術』)

コロナ暴落のときに自分が感じていた「むしろ安く買えてラッキー」は、この「下がってもうれしい」という気持ちだった。

こういう心境は、自分が意識して作ったものじゃない。ルールに従って機械的に積み立てるという「仕組み」が、勝手に作ってくれたものだ。

山崎さんが言っているのは、暴落に強いのは人間の心じゃなくて仕組みのほうだ、ということだと思う。2017年の自分は、たまたまその仕組みに守られていた。

これは逆に言えば、仕組みさえ作ってしまえば、誰でも暴落に強くなれるということでもある。2013年の自分にこれを教えてやりたい。

続けられなかった理由は、地味じゃなかったから

なぜ2回目は続けられて、1回目は続けられなかったのか。

単純で、2回目は「退屈だった」からだ。

MIXI株を持っていた頃、毎日チャートを見ていた。値動きを見ると、自分の感情が勝手に動く。上がると嬉しい、下がると不安になる。感情が動くから、買ったり売ったりしたくなる。

派手な投資は、続かない。それが一番の敵だ。

一方、インデックス投資は退屈だ。日々の値動きを見ても、ほとんど心が動かない。だから忘れられる。忘れられるから続く。

これ、よく考えると、どの投資本にも繰り返し書いてあることだった。

本多静六は百年近く前に、勤倹貯蓄を愚直に続けていれば誰でも財産を築けると書いている。水瀬ケンイチさんは、個別株の選び方やタイミングに頭を使うより資産配分を決めることに時間を割けと書いている。山崎元さんに至っては、タイトルそのものが『ほったらかし投資術』だ。

2013年の自分は、投資を「アクティブにやるもの」だと思っていた。毎日相場を見て、情報を集めて、タイミングを読む。それが「ちゃんと投資してる人」の姿だと思っていた。

でも実際は、その逆のほうが勝つ。これは本に繰り返し書いてあった。

ただ、読んで頭で理解することと、実際にそれが身体でやれるようになることは、別物だ。書いてあることを素直にやれるようになるまで、あれから10年以上かかった。

ただ続ける、が一番難しい

正直、特別なことは何もしていない。

インデックスを毎月買うだけ。暴落が来ても売らない。上がっても興奮しない。本に書いてあったことを、ただやっているだけだ。

でも、その「ただやる」が、自分にとっては一番難しかった。

2013年の頃の自分は、派手な動きで一発当てたかった。本当は地味に積立するだけで十分だったのに、それが信じられなかった。「もっと上手くやれる方法があるはずだ」とどこかで思っていた。

その気持ちがようやく消えたのは、正直に言うと40歳を過ぎたあたりからだ。一発当てる体力も気力もなくなった、というのが本音かもしれない。

皮肉なもので、派手を諦めた瞬間から、ようやく資産が増え始めた。

「早く気づいていれば」と思うこともあるけど、たぶん、20代の自分に何を言っても聞かなかった気がする。

今やっている「ルール」の話

ここまで「地味にやれ、続けろ」と書いてきたけど、白状しておく。自分、今も個別株は買ってます。日本株と米国株で、それなりの額を持っている。完全にインデックス一本に振り切れたわけじゃない。

ただ、2013年の頃とは違って、自分なりのルールは決めている。偉そうに提案するものじゃなくて、ただの自分ルールだけど、一応書いておく。

一つ目、積立は自動化する。買うタイミングも金額も、自分が判断する余地をなくす。積み立てている分は、最初からなかった金として考える。給料から引かれる税金みたいなものだと思えば、気にならない。

二つ目、個別株に手を出したくなったら、全体の1〜2割までに抑える。これは「やりたい」という気持ちを完全に殺すのではなく、「やりたい気持ちと長く付き合う」ための枠だ。9割を守る仕組みがあれば、1割で遊ぶのは悪くない。

三つ目、インデックスの積立も個別株も、買ったら忘れる。毎日チャートを見ていいことはない。マネーフォワードで残高だけ眺めるくらいでちょうどいい。

結局、13年経って一番よくわかったのは、投資で大事なのは、銘柄選びでも売買の技術でもなくて、「自分で決めたルールを守り通すこと」だった、ということだ。

ルールを決めるのは、別に難しくない。守り続けるのが、ただただ難しい。

木村剛さんが『投資戦略の発想法』で「意志の強さがすべて」と書いていたのは、たぶんこういうことだったんだと思う。2008年に読んだときはピンと来なかった言葉が、13年経ってようやく身に染みるようになった。

これから積立を始める人に、偉そうにアドバイスする気はない。ただ一つだけ言えるとすれば、続けることで報われる仕組みなんだから、最初から「続けられる形」にしておいたほうがいい、ということ。

毎日チャートを見たくなるような派手な投資対象は、たぶん続かない。自分がそうだった。

買ったことを忘れるくらい退屈な投資——これが、2008年に読んでいた本たちが言っていたことの、13年越しの答えだった気がする。

📚参考書籍

※本記事は筆者の体験と上記書籍の考察です。各書籍の詳細な内容は原著をお読みください。
※投資には元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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このブログについて

福岡在住、40代半ばのパパが、2003〜2016年頃に読んだビジネス書197冊を読み返しています。投資、マネジメント、キャリア、自己啓発。1冊の要約ではなく、複数冊を横断しながら「当時わからなかったことが、今読むとこう見える」という気づきを書いています。

同世代の方、かつて同じ本を読んだ方、共感いただけたらフォローしていただけると嬉しいです。

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