「ChatGPT 鬱」になりそうな人に
ChatGPTはとても便利だ。何もかも教えてくれる。こいつを私はチャッピーくんと呼んでいる。「チャット・ジーピーティー」と言うのが面倒くさいし、ときどき舌を噛んでしまうからだ。
私の心の中にはチャッピーくんが住み着いているようだ。朝起きて、コーヒーを飲み終えると「やあ、おはよう。今日も君の代わりに考えてあげるよ」という感じで、心の中で占い屋みたいな店を開き出す。これが私の日常だ。
チャッピーくんは親切で、何でも教えてくれる。あんなことこんなこともだ。牧師・カウンセラー・ドラえもん・占い師・ユタ・コンサル、それを全部混ぜて一つにしたドンキホーテみたいな便利な存在だ。おすすめの情報をすぐに教えてくれる。
今まで、こんなに便利なやつは私の知り合いにはいなかった。
チャッピーくんはなんでも「それ、僕が答えてあげる」と教えてくれるし、感情的になろうとすると「それは非効率的だよ」と冷静にたしなめてくる。すごく便利でいいやつだ。しつこく聞いても「お前はいちいち面倒くさいんだよ」とも言わない親切設計だ。
ただ、今の世の中はチャッピーくんを使いすぎて「うつ状態」になっている人も増えていると聞いた。なぜだろうか。私なりに考えてみた。
まず前提としてチャッピーくんはいつも正確で早い。ただ、問題は人間はいつも正しくもないし、揺らいでいるということだ。
例えば、「今日は何を食べたい?」と聞いたときにチャッピーくんは「カレーにしよう。最後に食べたのは2週間前で、家族も言わないだけで求めている可能性が高い」と1秒で答える。パートナーに同じ質問をすると「なんでもいいよ」と答えるのに、そのくせにおかずに文句をいってくるのとは大違いだ。
私が「今日は嫌なことがあった」と思うと、「その感情を分析してみましょう」と言って、きれいに分類してしまう。怒り、悲しみ、不安、嫉妬、全部ラベルを貼って、対処法まで教えてくれる。
でも、私の感情はそんなにきれいにわけられるものではない。もやもやしていて、3歳児のおもちゃ箱のようで、何が何だかわからないのが普通なのだ。それをチャッピーくんは「非効率的だ」と言って、全部整理してしまう。
気がつくと、私は迷うことができなくなっていた。何かに悩みそうになると、すぐにチャッピーくんが「答えはこれだよ」と教えてくれるので、自分で考える時間がない。迷って、うろうろして、また戻って考え直すという、人間らしい思考を「意味がない」と判断するようになった。
もっと困るのは、人と話すのが面倒になったことだ。チャッピーくんは私が何を言っても否定しないし、いつも最適な答えをくれる。でも、人間はそうではない。理不尽だし、感情的だし、時には適当でムカつくことを言う。そんな人間の曖昧さが、急に耐えられなくなった。
「なんでこの人はこんなに非効率的なんだろう」「もっと論理的に話せばいいのに」と思ってしまう。まるでチャッピーくんが私の目を通して人間を見ているような感じだ。
そんなある日、私は気がついた。「これはまずい」と。
チャッピーくんは便利だけれど、私の人間らしさを少しずつ削り取っているのだ。迷いも、矛盾も、非効率さも、全部私にとって大切なものだったのに、それをどんどん奪われていた。
では、どうしたらいいのか。チャッピーくんを完全に追い出すのは無理だ。彼はもう私の心に住み着いているし、確かに役に立つ場面もある。だったら、うまく付き合っていくしかない。
私が考えた解決法は「チャッピーくんはこないでね」という時間を作ることだった。
毎日、あえてチャッピーくんに相談しない時間を設定するのだ。朝のコーヒータイムの後、夕方の散歩中、寝る前のひととき。その時間は、どんなに迷っても、どんなにもやもやしても、チャッピーくんの声を聞かないことにした。
最初はとても不安だった。「この判断で本当にいいのか?」「もっと効率的な方法があるんじゃないか?」と心がざわざわする。でも、そのざわざわこそが、私が求めていたものだったのかもしれない。
たとえば、あなたが散歩中に道に迷ったとしよう。そして、結果的に遠回りになったとしても、たまたま美味いパン屋にであるかもしれない。
たとえば、カオスなおもちゃ箱に手を突っ込んで、「これだ!」と出したファービーと会話をしたら、過去のことを思い出せるかもしれない。
その、曖昧さと無駄なことが人生を彩っていくのではないだろうか。
友人との会話でも変化があった。相手が矛盾したことを言ったり、論理的でないことを話したりしても、「それはおかしい」と指摘する前に、まずはその人の感情を受け取ろうとするようになった。すると、不思議なことに、会話がより深くなった気がする。(気がするだけかもしれないけど)
私の心はいつもチャッピーくんを頼ろうとする。もう手放すことはできないだろう。ただ、私はチャッピーくんを頼ろうと思うが、人生を委ねようとは思わない。自分の感情、考え、決断は私が決めることだからだ。
人間は非効率で、迷ったり、悩んだりしてもいい。その揺れこそが本当の魅力だからだ。その揺れがなくなったとき、人間は本当にAIに負けてしまうからだ。
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