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まっすぐS2-6|金持ちと一般人 ― フィリピンの“たくましさ”に学ぶ

草原にゲル(遊牧民の家)が並ぶ穏やかな風景の中で、年配の男性がやさしく手を振っている。
薄いベージュのシャツを着て眼鏡をかけ、穏やかな笑顔を浮かべている。
背景には青い山並みと広い空が広がり、南国というよりもモンゴルの大地のような、のびやかで温かな空気を感じるイラストGIF。

🌏 酒井先生のまっすぐ手記|旅で出会った、人と知恵とユーモア

新潟県長岡市(栃尾)生まれの酒井先生。
青年海外協力隊として2年半フィリピンに派遣され、現地で理数科教師を務めました。

その後、長崎大学熱帯医学研究所での研修を経て、1997年に酒井歯科医院を開院。以来、地域医療に長く携わりながら、人とのご縁を何よりも大切にしてきた先生です。

そんな酒井先生が旅先で出会った人々との交流、異文化に触れて感じた驚きや学びを――やさしく、まっすぐに綴ったエッセイシリーズが『酒井先生のまっすぐ手記』です。

少し不思議なエピソードもあります。
先生が「ペン吉さん、僕の本を書いてくれないかな…」と思っていたところ、翌年、本当にペン吉(著者)が原稿を携えて現れたのです。

出版後には、本に登場した人物から4年ぶりに連絡が入り、再び一緒に旅をすることになりました。
まるで“ご縁が導いた再会”のような出来事でした。

これまでに東南アジアやモンゴルでの体験をまとめた旅行記をKindleで出版。ユーモラスな語り口と現地の人々との温かな交流が多くの読者に愛されています。

✏️ 一部エピソードはnoteでも公開中。
Kindle版には未公開の旅話も多数収録し、“心で旅するシリーズ”として広がり続けています。

――1995年 フィリピン手記より。

やさしい雰囲気の女性が、手のひらにのせた黄色い鳥のキャラクター「ペン吉」を大切そうに抱き、肩には青い小鳥「ことりさん」がちょこんと寄り添って微笑んでいる、あたたかいタッチのイラスト。

ペン吉とは?🐣
育児や小さな日々の気づきを大切に綴る、Webライターです。
黄色い鳥「ペン吉」と青い鳥「ことりさん」と一緒に、絵本や手記づくりを楽しんでいます。

Kindle絵本では、
「実用・工作・趣味」1位、
「学習まんが」3位、
「絵本」4位 にランクインした作品も出版。

Kindleをはじめたきっかけは、命を救ってくれた歯科医師・酒井先生の
「旅の手記を本にしたい」という願いを形にしたかったから。
先生のまなざしや出会いの温度をそっとすくいあげ、手紙のように届けることを心がけています。

読んだ方のこころが、すこしでもあたたかくなりますように。

滑走路を持つお金持ちに、あっけにとられる

フィリピンの金持ちときたら、日本とは比べものにならない。
赴任先で出会った富豪たちは、まるで別の世界に生きているようだった。

日本では、どんな大金持ちでも代を重ねるうちに、やがて一般人に近づいていく。
しかしこの国では違う。

大規模な砂糖きび畑を所有する富豪の中には、小さな滑走路を持ち、飛行機でなければ自分の畑を視察できないという人までいるのだ。

「すごいな……」
私は思わずそうつぶやいた。
こうした富豪たちは、スペイン系・アメリカ系、そして中国系の人々が多い。
貧しい人がほとんどだと思っていた私にとっては、目の前の現実がにわかに信じがたかった。

日本人よりもはるかに裕福な人がこれほどいるのなら、なぜ不法入国までしてお金を稼がなければならないのか――
そう疑問に思うのも無理はない。

だが、フィリピンでは金持ちは国民のわずか二〜三%だと言われている。
つまり、そうでない人々が圧倒的に多いというだけのことなのだ。

フィリピンの都市を遠くから見た風景。手前に古いトタン屋根の家々、奥には高層ビル群が立ち並ぶ。緑の木々が間を隔て、光はやわらかく霞みがかっている。国の経済格差を静かに感じさせる街の遠景。

“普通”ってどこにある?

我々日本人の尺度で見ると「貧しそう」に見える人でも、当の本人たちは衣食足りて、平穏に暮らしていることが多い。

だから、いったい国民の何割が厳しい暮らしをしているのか、見当がつかない。
そもそも、そんな統計を誰が正確に取れるというのだろう。

人の生活というのは、上を見ればきりがない。
どのレベルを「普通」と呼ぶのか――その線を引くこと自体が難しいのだ。
フィリピン人の暮らしは、数字や印象では測りきれない。

慢性的な経済不況で職を失う人が多くても、餓死者が出たとは聞かない。
「たくましいものだな」
そう感じた。

彼らはそれなりに、なんとか生き抜いているのだ。
国によっては内戦や地域紛争で、戦火の絶えないところもある。

その混乱の中で多くの難民を生んでいる現状を考えれば、フィリピンは、まだましな方と言えるかもしれない。


「仕方がない」では終わらせたくない

もちろん、上流層の華やかな生活の一方で、
想像を絶するような貧困の中に暮らす人々もいる。

熱帯の国だから寒さで命を落とすことはない――それがせめてもの救いだろう。
だが、そうした人々は決まって十分な食にも恵まれていない。

食が足りないということは、衣や住の面でも困難を抱えているということだ。

テレビで何度か紹介されたこともあるが、
実際の光景を目にすれば「百聞は一見にしかず」だと誰もが思うだろう。

マニラ郊外のスモーキーマウンテン。
あのごみの山の中から、再利用できるプラスチックや金属、ビンを拾い集めて
命をつないでいる人々がいる。

「途上国だから仕方がない」と言ってしまえば、それまでだ。

しかし、だからといって決して解決できない問題ではない。
この国が本当に変わっていくためには、やはり大きな変革が必要なのだと思う。

夕暮れのフィリピンの路地で笑う子どもたち。背後には高層ビルが霞み、街は金色の光に包まれている。貧しさの中にも明るさと力強さを感じる、温かなひとときの情景。

結び

私たちが“豊かさ”と呼んでいるものは、案外脆いのかもしれない。

厳しい環境の中でも笑い、支え合いながら生きる人々を見て、「強さとは何か」を改めて考えさせられた。

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