生成AI時代における新エンジニア採用ブランディングについての解体新書
先日、こんなブログを書きました。
上記ブログは「職種横断」における採用ブランディングについて触れています。
ただ、本ブログについては、「エンジニア採用」に内容を寄せています。そのため、用途が異なりますので、ご認識までお願いいたします。
では早速スタートしましょう。
0. 旧エンジニア採用プランニングについて
2023年の7月に僕は下記のようなブログを執筆しておりました。
当時までに250社様程度のエンジニア採用に携わらせていただき、当時においてベストプラクティスだと思う内容を取りまとめておりました。しかし、そのベストプラクティスは現在において「時代遅れ」になっていると感じています。
時代遅れにした正体は「AI」の存在です。
これは釈迦に説法だと思うので細かい説明は避けますが、AIがIT・Web業界、そしてエンジニアという仕事に大きな影響を及ぼしています。2025年8月時点では、もはや説明不要というか、すでに時代遅れになってしまうような話も発生しているため、これ以上の説明は避けますが、AIによってパラダイムシフトが起きているということです。
では、具体的にどのようなパラダイムシフトが起きているのか?について説明して参ります。
1.エンジニア採用においてどのような変化が起きているのか?
具体的にどのような変化が起きているのかを見て参りましょう。
1-1. 海外のソフトウェアエンジニアの求人数について
まずは下記をご覧ください。

こちらは、Indeedが2025年1月ごろに発表した世界各国のソフトウェアエンジニアの求人数の推移です。

こちらは当社のウェビナーで使用したスライドの一部になりますが、ご覧いただける通り、2022年夏頃と2025年1月を比較すると、ソフトウェアエンジニアの求人数が約50%減少していることが読み取れるかと思います。
ただ、皆様ご存じかもしれませんが、生成AIがもたらした最も大きなパラダイムシフトは、僕の考えでは2025年5月に発生しました。この時期はGoogleからのAIに関するアウトプットが非常に多く、僕の肌感覚では、それまでの3年分のAIにおけるアップデートが、わずか1か月間で一気に起きたような感覚でした。
何を申し上げたいかというと、前述のIndeedによるソフトウェアエンジニアの求人数減少は2025年1月時点のデータであるということです。そして、2025年5月に最も大きなパラダイムシフトが起きているため、おそらくその後、ソフトウェアエンジニアの求人数はさらに減少していると推測できます。
もちろん、このデータだけでは断定はできませんが、参考値としては十分意味があるかと思います。
1-2. 日本のエンジニアの求人数について
結論としては、そこまで減少していません。ただ、これは「求人数」の話であって、「採用ニーズ」と同じ意味ではありません。
つまり、求人数はあまり変わっていないものの、採用人数は減少しているという肌感覚があります(山根の見解)。
そのため、一概に求人数だけで日本のエンジニア採用市場を語るのは難しいかもしれません。
そんな中で、僕にとって大きなニュースが舞い込んできました。

上記のブログをご覧いただければと思うのですが、僕はこれを「業務委託雇用のエンジニアを100名減少させた」という話として捉えています。これは大きな動きだと思っています。日本の雇用環境では、突如として社員を解雇することは難しい状況にありますが、業務委託であれば契約期間が決まっているため、契約終了という形で人員を減らすことが可能です。
海外の契約ルールでは、仮に正規雇用であっても、すぐに契約を終了できる国も存在しますが、日本ではそうではありません。そうした背景の中で、この業務委託雇用のニュースは非常に刺激的であり、同時に昨今のAIの影響力や魅力を感じさせるニュースだったと、個人的には捉えています。
1-3. エンジニアの生産性が10倍になった
これは、僕が信頼するあるエンジニアさんからのお言葉をお借りしています。
こちらはあくまで一例ですが、エンジニアがいわゆるソースコードを書かずに、AIエージェントを活用しながらプロダクト開発を進めているという話です。これまでタイピングによってプログラミングをしていた時代と比べ、AIエージェントがプログラミングをはじめとするプロダクト開発をどんどん進めてくれるため、「生産性が10倍になった」という表現が使われています。
例えば、30人のエンジニアが在籍していれば300人月、100人のエンジニアが在籍していれば1,000人月ということになります。エンジニア採用が非常に難しかった時期の救世主とも言える存在、それがAIエージェントではないかと思います。
1-4. 未経験・ジュニア求人ニーズの減少
まず誤解がないように申し上げると、本項目は山根の主観的な意見です。
昨今、様々なエンジニア採用の現場に触れる中で、「リードエンジニア以上の採用に絞りたい」という企業様が非常に多くなってきた感覚があります。おそらく本ブログをお読みの方も、同じような意見をお持ちではないかと思います。
その背景は、前述の通り生成AIエージェントが浸透したことにあると考えています。もちろん、とてつもなく優秀な若手やポテンシャル採用を引き続き行っている企業もありますが、将来の予測が難しくなっている昨今、未経験や若手人材の採用にチャレンジする企業はぐっと減った印象です。
1-5. 高年収・フルリモートの減少
直近5年ほどはエンジニアの年収がどんどん高騰していました。正直、「この経験年数の方に7,000,000円も出すのか…」と感じたこともあります。10年前であれば、おそらく4,000,000円程度だった方が7,000,000円で提示されることも(大胆な言い方をすると)ありました。
また、フルリモートのトレンドもありましたよね。きっかけの1つはコロナだったと思いますが、その影響でリモート勤務が皆無な企業はほぼ0%になったのではないかというほど浸透しました。ただ、最近は出社回帰のニュースをよく目にします。
ここで考えたいのは、「なぜリモート勤務を導入したのか?」という点です。生産性向上や出社ストレスの削減といった理由もありましたが、シンプルに「リモート勤務にしなければエンジニアが採用できない」という課題感から導入していた企業もあった印象です。
そんな中、「とにかくエンジニア採用だ!」という時代ではなくなりつつあることで、リモート勤務の必然性は以前よりも低下していると言えるでしょう。
1-6. 開発者体験をどこまで上げる必要があるのか?
開発者体験ランキングは定期的に発表されています。僕もエンジニア採用を生業にしている1人として日々ウォッチしていますが、もちろん開発者体験は非常に重要だと思っています。
ただ、「採用活動を成功させるために開発者体験を良くしよう」という動機で取り組む企業が多かったように感じます。本来の目的は事業成長やプロダクトの向上であるべきですが、「採用活動のために」というモチベーションで行っていた企業については、「そこまでお金をかけるべきなのか?」という声も耳に入るようになってきました。
2. エンジニア「旧」採用ブランディングの振り返り
2023年、2024年に進めていたエンジニア「旧」採用ブランディングは、まさに、「開発者体験の向上」に観点を置いていました。もちろんそれ以外の内容もあるのですが、項目についてご紹介します。
2-1. 開発者体験の向上
旧来のエンジニア採用ブランディングは、まず開発者体験をどこまで高められるかがポイントでした。
モダンな技術スタックや快適な開発フローを整え、「ここでなら気持ちよく開発できそう」と思ってもらう狙いです。採用活動でもこの開発しやすさを前面に押し出し、他社との差別化に活用していました。
2-2. プロダクト面の魅力訴求
環境面だけでなく、「何を作るのか」というプロダクトそのものの魅力も重要視していました。新規開発の機会や事業の成長性、競合に勝てる構造などを採用メッセージの柱に置く形です。技術志向だけでなく、事業やプロダクトに共感できる人材を惹きつけるためのアプローチでした。
2-3. 技術面・技術カルチャーの強化
単なる環境整備だけでなく、技術選定の自由度やコードレビュー文化など、技術者としてのやりがいを感じられる土台づくりを大切にしていました。「技術に向き合える文化があるかどうか」が、応募の大きな動機になるイメージです。
2-4. 生産性・ワークフローの最適化
CI/CDや自動化ツールを整え、無駄なプロセスを減らすことで開発スピードを高める取り組みです。日々の働きやすさや効率化は、そのまま採用時の魅力にもつながっていました。
2-5. アジャイル開発文化の醸成
短いスプリントやデイリーミーティングを通じて、スピード感と柔軟性を持った開発体制をつくることに注力していました。「変化に強い組織」という印象を与える効果もあったと思います。
2-6. 技術的負債の解消
放置しがちな負債を定期的に解消するルールや改善日を設ける動きです。採用候補者に「綺麗なコードベースで働ける」印象を持ってもらうことが狙いでした。
2-7. テスト文化・品質担保体制の構築
単体テストや受け入れテストを前提とした開発体制を整えること。品質へのこだわりは、プロ意識の高い人材に響くポイントでした。
2-8. 情報共有・透明性の確保
開発資料や数値データを誰でも見られる状態にして、組織全体の情報格差をなくす。オープンな文化は、信頼感や安心感を持ってもらいやすくなります。
2-9. ユーザー思考の浸透
エンジニアが直接ユーザーの声を聞き、改善に反映できる環境です。「ユーザー視点を持てる開発」ができることを、採用の魅力としていました。
2-10. その他文化的魅力(カルチャー・評価制度・キャリアパス等)
経営陣にエンジニア出身者がいる、キャリアの多様性がある、など文化面のアピールです。働き方や評価の柔軟性は、長く活躍してもらうための安心材料になっていました。
この10の大項目に対して、それぞれ6~10程度の中項目があり、その中項目についてヒアリングをして、エンジニア採用における魅力を明文化していました。中項目の数は70程度存在をしておりました。
3.「旧」と「新」の違いについて
では、具体的にどのあたりが異なるのか?について解説していきたいと思います。
3-1. 「旧」エンジニア採用プランニングで相対的に重要度が下がった項目
新エンジニア採用ブランディングに移行していく中で、旧エンジニア採用プランニングで強く打ち出されていたものの、今では相対的に重要度が下がってきた領域があります。これは「もう不要になった」という話ではなくて、他の大項目に統合されたり、前提条件として扱われるようになったものです。
1. 使用技術や開発言語の直接的な訴求
旧では「何の言語を使っているか」という話が大きな訴求ポイントでした。ただ、今はそれよりも「どのように生成AIを活用しているか」のほうが圧倒的に重視されています。特定の言語の希少性よりも、AIを組み込んだ開発プロセスや意思決定の質に価値が置かれているということです。
2. 専門職スキルの単独強調
バックエンド専任やインフラ専任といった職域ごとの専門性を前面に出す価値は、かなり下がってきたと感じています。高度な専門職スキルはAIが代替できる領域がどんどん広がっていて、むしろ職域を横断した動きや役割の再定義に対応できる力のほうが評価される流れになっています。
3. 開発者体験(DX)の単体アピール
モダンな技術スタックや快適な開発フローはもちろん大事ですが、今はもはや前提条件です。新では、これらをどう構造的価値や変化適応力と結びつけているかという視点に移ってきています。
4. プロダクト面の数値的優位性
「新規プロダクト数が多い」「市場競合が少ない」といった定量的な優位性は、採用メッセージの主役ではなくなりました。新ではなぜその成長を目指すのか、誰にどんな未来を届けるのかといった質的な価値のほうが重視されるようになっています。
5. 技術的負債解消やテスト文化の独立項目化
旧では差別化要素として語られていましたが、今では当たり前に備わっているべき基盤として扱われ、Engineering CultureやDevOpsの中に自然に溶け込んでいます。
こうして見ると、新エンジニア採用ブランディングは「技術や環境の状態を見せる」から、「AI時代における価値創造の仕組みや適応力を示す」方向へシフトしてきていると思います。旧で大事だった項目がなくなったわけではなく、土台として内包されて、その上でより高次な評価軸に置き換わっている、そんなイメージです。
3-2. 「新」エンジニア採用ブランディングで明確に増えた項目
新エンジニア採用ブランディングでは、旧エンジニア採用プランニングにはなかった評価軸や組織の構造がいくつも追加されています。これは単に項目を増やしたという話ではなく、AI時代に価値を出し続けるために必要になった条件だと思っています。
1. Future Readiness(未来対応力)
これまでの採用ブランドは「今の環境や制度の魅力」を伝えるものが多かったですが、今はそれだけでは足りません。変化や不確実性を前提に、素早く試して、学んで、適応できるかどうかが重要になっています。
ここでいうFuture Readinessは、単に柔軟であるという話ではなく、役割や職能を再定義できるか、外部化やAI化を見越して構造を変えられるか、そして変化を前向きに捉えられる文化があるかということです。採用の場面でも「この組織はどんな未来が来ても成長していける」と思ってもらえるかどうかが大きな分岐点になっています。
2. 越境・共創型の開発スタイル
AIによって職種ごとの壁が薄れてきた中で、エンジニア、デザイナー、PdMといった役割を横断して動くスタイルがより評価されるようになっています。
ポイントは「できることが多い」ではなく、意思決定の初期から実装・改善までを一貫して担い、成果物の意図や構造を理解していること。自分の専門性を活かしつつ、全体の構造の中で価値を高められる環境かどうかが重要になっています。
3. 生成AI前提の組織・技術設計
AIを導入しているかどうかでは差がつかなくなっています。今は、どう活用しているか、その基準や仕組みをどう設計しているかが問われています。
生成AIの活用ポリシーやガイドライン、AIを設計や意思決定のパートナーとして組み込む体制、そしてAI時代に合わせた職能の再定義。こういったものが、新しい採用ブランドの中で独立した評価ポイントになっています。
4. 意思決定・ガバナンスの透明化と高速化
高速に開発できる環境では、意思決定の遅さや不透明さが大きなネックになります。
技術選定や優先順位の理由を組織の価値観に沿って説明できること。背景やトレードオフを全員で共有できること。そしてスピード感を持って判断を回せること。ガバナンスは安全のためだけでなく、動きを加速させるためのものになってきています。
5. 戦略的なPO/PdMの役割強化
生成AI時代は「高速に作れる」ことが前提です。だからこそ、「何を作るべきか」を決める判断力がより重要になっています。
AIの知識があるだけでなく、技術の特性とユーザーや事業の文脈をつなげて、長期的に価値を出せる選択ができるかどうか。ここが、採用ブランドとしても差がつく部分になっています。
6. フォワード・デプロイド的な役割
顧客現場に入り込み、課題の構造化から設計・実装・改善までをリアルタイムで伴走するエンジニア像が評価されるようになっています。
従来の「上流工程」や「セールスエンジニア」とは違い、現場の行間を読み取りながら開発全体を設計する役割です。AI時代では、この顧客起点の構造設計力が、エンジニア採用の新しい競争力になっています。
こうして見てみると、新エンジニア採用ブランディングは、環境や制度といった「状態」を見せるものから、変化に強くて役割と構造をアップデートし続けられる組織であることを示すものに変わってきています。単なる採用手法のアップデートではなく、組織そのものの在り方を問い直す動きだと感じています。
4. 新エンジニア採用ブランディング事例:nocallさま
ここからは、僕が個人的にも大きな刺激を受けている企業、nocallさんについて書いていきたいと思います。
この会社のエンジニア採用ブランディングは、単に「生成AIを取り入れている」という表層的な話にとどまりません。
経営の意思決定、開発フロー、文化づくりまで含めて、最初から“生成AI時代”を前提に設計されている。その本質的な構造にこそ魅力があると感じています。特に、中心に据えられている「AI駆動経営」は、僕自身が「これからの経営・採用のあり方」に対して強く共感し、学び続けたいと感じるポイントです。
では、その特徴を10の魅力にまとめたうち、まずは最初の4つをご紹介します。
4-1. AI駆動経営による情報と判断の一元化
nocallの最大の魅力は、経営・事業・採用すべての意思決定の土台に「AI駆動経営」があることだと思っています。
これは、単にAIツールを業務に取り入れるということではありません。過去の議論、意思決定の背景、ユーザーの声、定性的なフィードバックまでをAIに統合し、必要なときに数秒で呼び出せる状態をつくっています。
この仕組みがあることで、判断のスピードはもちろん、一貫性や納得感が圧倒的に高まります。「なぜこの機能を作るのか」が、誰かの感覚や気分ではなく、データと文脈に基づいて説明されます。だからこそ、開発メンバーは迷いなく動けるし、入社初日から同じ情報基盤にアクセスできるのは、オンボーディングや早期活躍にも直結していると思っています。
そして何より、このAI駆動経営は“効率化”だけに閉じません。
人の感覚や情理的な判断も残しながら、AIを「判断の媒介者」として活用することで、意思決定は透明かつ公平で、チーム全員が納得感を持って進められる状態になっている。僕はここに、AI時代の組織運営の1つの答えがあるのではないかと感じています。僕個人的に「AI駆動経営」という言葉を初めて耳にしましたし、何より本気で取り組まれていらっしゃることに驚きました。
4-2. 生成AI駆動ネイティブ開発と完全越境型チーム
nocallの開発現場では、バックエンド、フロントエンド、インフラ、SREといった職種の垣根があまり存在しません。形式的には区分はあるものの、実際にはエンジニア、デザイナー、PdMが領域を自然に横断しながら動いています。
この越境は単なる「何でも屋化」ではなく、「何を作るべきか」「なぜ今それを作るのか」という共通の問いを軸にして行われます。結果として、設計やUXの検討から実装までがシームレスにつながり、意思決定のスピードと質が同時に向上している。
生成AIが作業や設計の一部を代替できる今、特定スキルだけで差別化するのはどんどん難しくなっています。むしろ全体像を理解し、価値判断を伴って動ける人材がより高く評価される時代になっている。
nocallはそれを文化として最初から組み込んでいる、数少ない会社だと思っています。
4-3. 戦略的なPO/PdMの判断力と実行力
開発スピードが飛躍的に高まるほど、「何を作るのか」という判断の質が組織の未来を左右します。nocallのPOやPdMは、生成AIの特性や限界を深く理解したうえで、「なぜこの機能を、このタイミングで、この方法で作るのか」を言語化できる存在です。
ここで必要なのは、単なる技術知識ではありません。
ユーザーや市場の動向を踏まえた長期的な構想と、短期的な実行を両立するバランス感覚。さらに、「やらないこと」を選び抜く覚悟と判断軸です。
採用の場面でも、このレベルのPO/PdMがいるかどうかは、候補者の魅力度に大きく影響します。「作れる会社」ではなく、「作るべきものを選び抜ける会社」に惹かれる人が確実に増えているのではないかと感じています。
4-4. 技術スタックとツール選定の即応性
生成AIや開発ツールの世界は、数ヶ月単位で勢力図が変わる超高速な変化の中にあります。nocallは、特定のツールや技術に固執せず、その時点で最適なものを選び、すぐに取り入れる文化を持っています。
これは単なる柔軟性ではなく、「変化を楽しむ」という姿勢です。
こうした環境は、組織全体の学習速度を加速させ、メンバー個々のキャッチアップ力を磨きます。候補者にとっても、「この会社にいれば技術的に時代遅れにならない」という安心感が生まれるはずです。
4-5. 音声 × 生成AIという難易度の高い領域への挑戦
nocallが向き合っているのは、テキスト処理に最適化された従来のLLM活用ではなく、“音声”を中心に据えたプロダクト開発です。
音声は、単なる文字起こしではなく、声質・抑揚・沈黙・かぶせ・言い淀みなど、人間らしい揺らぎや曖昧さを含んだ非構造データです。
この領域に挑むということは、Speech-to-Text、文脈推定、自然な応答生成、リアルタイム制御、大規模スケーラビリティ設計という異なる専門性を同時並行で成立させることを意味します。どれか一つでも欠ければ体験は破綻する。そんな総合格闘技のような環境で、しかもPoCではなく本番稼働でユーザーに提供し続けている。
ここには「人間理解そのものを技術で解く」という興奮があります。フロントやバック、モデル実装といった枠を超えて、人の曖昧さに正面から挑む現場は、エンジニアにとってこの上なく刺激的な場だと思います。
4-6. 高トラフィック・高負荷環境でのスケーラビリティ設計
nocallのプロダクトは、toB領域では異例の“圧倒的トラフィック量”を日常的にさばいています。特定時間帯には数千〜万件規模の音声通話が一気に集中し、それを遅延なく処理し続ける構成が求められます。
ここでは「動けばいい」では到底通用せず、スパイク耐性、フォールバック設計、監視・切り分け・復旧体制といった運用基盤が不可欠です。
さらに音声リアルタイム処理と生成AIによる会話理解を掛け合わせることで、一般的なWebアプリの何倍もの負荷とレイテンシ制約が発生します。
こうした環境で技術を磨けるのは、自分の設計・実装が即座に大規模運用にさらされ、結果がダイレクトに返ってくるからです。エンジニアとしての地力を鍛えたい人にとって、これほどの環境はそう多くないはずです。
4-7. GPUを前提にした本番アーキテクチャ
nocallでは、音声処理と生成AI推論をリアルタイムでさばくために、GPUを本番環境で稼働させています。
画像処理やモデル学習に使うのではなく、同時通話処理や即時応答のためにGPUを“インフラの中核”として組み込んでいるのが特徴です。
これはPoCや研究用途ではなく、数千〜万件規模の同時接続に耐える本番処理です。GPUをこうした形で扱える環境は希少であり、インフラ設計そのものに生成AI×音声という前提を織り込む経験は、エンジニアとしての市場価値を一段上げてくれます。
また、GPUリソースは一部チームに閉じず、プロダクト全体に開かれているため、全員が“本物の負荷環境”で設計と改善を繰り返すことができます。
4-8. “当たり前”を徹底する技術哲学
nocallの開発現場には、「当たり前のことを、当たり前以上の精度でやり続ける」という静かだけど芯のある哲学があります。
CI/CD、IaC、スプリント設計、ロードマップ共有、モニタリング、レトロスペクティブ……。この辺りの言葉はエンジニア組織ならよく耳にしますし、「うちもやってます」という会社は多いと思います。
ただ、実際の現場を覗いてみると、これらは“形だけ”になってしまっていることが多い。ルールはあるけど更新されていない、やることはやっているけど精度が低い、そもそも定着していない。そんな風に形骸化してしまうケースは少なくありません。
nocallが面白いのは、生成AIのような最新の武器を持ちながらも、この地道な基盤整備を手放していないところです。むしろ、最新技術を取り入れるからこそ、足元の「地盤」はより固くしておく必要がある、という共通認識があります。これは短期的な成果ではなく、変化の激しい環境の中で長く走り続けるための“耐久力”を育てる営みです。
僕は、こういう文化がある組織は、派手なニュースにならないときでも静かに強くなっていくと思っています。結果的に、外から見ると「いつの間にか圧倒的に差がついている」。そんな積み上げの強さが生まれていくのではないでしょうか。
4-9. AI駆動で再定義される組織構造
nocallのAI駆動経営は、単に生産性を上げる仕組みではなく、組織構造そのものを塗り替えています。
従来、部門間の情報共有や意思決定の背景説明は、中間管理職。いわゆるミドルマネージャーが担ってきました。営業と開発、企画とCS……背景や前提が違う組織同士を橋渡しするのは、多くの場合この層の役割です。
でも、その構造には限界がある。情報が属人的になったり、伝言ゲームでニュアンスが変わったり、そもそもミドル層に負荷が集中して燃え尽きてしまうこともある。
nocallでは、この橋渡し役をAIが担うことで、背景や文脈が瞬時に共有され、意思決定のズレや齟齬が最小化されます。Slackで質問すれば、過去の経緯や判断理由が整理された状態で返ってくる——そんな仕組みが日常的に機能しています。
これが意味するのは、単なる効率化ではなく「組織の重力の再配分」です。人がやるべき創造的な対話や意思決定に集中できるようになり、AIが“情報の潤滑油”として全体を滑らかに動かす。
「ミドルがいなくても回る組織」という未来像は、単なる理想論ではなく、すでにnocallで現実になりつつあります。これは採用の観点でも非常に強いメッセージになるはずです。
4-10. 多様なリーダーシップを行き来する経営陣
nocallの経営陣は、特定のスタイルや思想に縛られません。
専門家型で緻密に掘り下げることもあれば、達成者型で成果に一直線に向かうこともある。ときには変容者型として構造そのものを問い直し、アルケミスト型のように未来の組織像を大胆に描く——そんな風に、状況に応じて自在に“行き来”します。
この姿勢が面白いのは、「正解のリーダー像はひとつではない」というメッセージを体現していることです。変化が激しい時代に、ひとつの型に固執すること自体がリスクになる。だからこそ、経営陣が自覚的にスタイルを切り替える。その振る舞いを間近で見ることが、メンバーにとっても大きな学びになります。
採用の文脈で言えば、ここは単に「経営陣が柔軟です」という話では終わりません。「ここで働くことで、自分自身のリーダーシップも進化する」という約束にもなるからです。合理性だけでなく、関係性や未来構想まで行き来する経営チームと日常的に対話できる環境は、キャリアの成長にとって大きな資産になるはずです。
5. 生成AI時代の 新エンジニア採用ブランディングの魅力設計表

今回のブログでアウトプットさせていただいた新しいエンジニア採用ブランディングの魅力項目をまとめた表を作成しておりますぜひご活用ください。
最後に
僕は個人的に、2025年5月のタイミングでnocallさんと出会えたことを幸せに思っています。なぜなら、日本では稀有な生成AIエージェントのスタートアップと、かなり深い対話を重ねながら採用活動における魅力設計について議論できたからです。また、nocallさんがこのビジネスに真摯に、そして誇りを持って取り組んでいるからこそ、引き出せる内容が多分にあったのだと思います。
さらに、僕らがこれまでに約330社様の採用ブランディングを実施してきたノウハウを掛け合わせることで、うまくレバレッジを効かせた内容に仕上げることができたことも、とても嬉しく感じています。
本ブログで書いた内容は、これからのAI時代における採用ブランディングのスタンダードになると、個人的には思っています。これからも真摯に採用支援に取り組んでいきたいと思います。
