フランス移住で一番不安だった「子どもの言語」。小2娘の6週間の記録【渡仏2ヶ月】
はじめに
海外移住を考えている家庭からよく相談を受けるのが、「子どもは現地校でフランス語についていけるのか?」という不安です。
我が家は2025年春、小学2年生の娘と一緒に南フランスに移住しました。渡仏時点でフランス語はほぼゼロ。
移住が決まってからの3ヶ月間は、公文式のフランス語を通信で学んでいました。あとはDuolingoやyoutubeです。
簡単な単語は知っていますが、会話はゼロでの渡仏となりました。
そんな娘が、6週間・授業時間140時間で「先生や、友達の言うことは大体わかる」レベルに到達しました。
先生や友達は簡単な言葉を使ってくれているはずですし、きっと毎日同じ単語の繰り返しだと思うのですが、それでも思ったより早いスピードで馴染んでくれていてほっとしています。
ただ言語的には順調に見える6週間の中には、沈黙期、日本語の混乱、学校に行きたくないと泣いた日もありました。
うちは夫婦ともに母語は日本語で、娘に英語もフランス語も教えられるレベルではありません。正直、どうやって娘がフランス語を習得していっているかも分かりません。
後から振り返って、これが良かったのかも!ここは問題だったかも、と活かせるように「週ごとの観察記録」と「工夫したこと」をまとめていこうと思います。
娘のこと(バックグラウンド)
日本生まれ、日本育ちで、母語は日本語。インターナショナルスクールではなく、日本の幼稚園・小学校に通ってきました。
ただ、言語面ではいくつか特徴があります。
一番大きいのは、本人が「言語を学ぶのが好き」と思っていることです。幼稚園の頃から「世界中の言葉を話せるようになりたい」と言っていて、多言語話者のインスタグラマーLaraちゃんに憧れています。
フランス語を本格的に始めたのは、渡仏の3か月前です。ただ、その時点で次のようなベースはありました。
英語については、家庭や習い事を通じて触れてきたため、発音やアルファベットへの抵抗はありません。英語の本も読んでいて、日本生まれ・日本育ちではありますが、帰国子女向けの英語スクールにも週1回参加しています。
また、耳から覚えるのが得意なタイプで、かけ流しや歌の吸収が早いです。新しい言語に対しても、「そのうちできるようになる」と本人が思っているため、挑戦への不安があまりありません。
そのため、「生活の言語がフランス語に変わる」ことも怖がらず、むしろ楽しみにしていました。移住を嫌がることなく、前向きに受け止めてくれたのは、親としても大きかったです。
ここからは通学の記録とメモです
記録は、登校日ベースで数えています。
記載している時間は学校で過ごしている合計時間です。
■学校生活1週目
1日目:数人から手紙をもらう
2日目:クラスメイトからブレスレットやネックレス、数人から手紙をもらう
3日目:友達の名前のスペルが知りたくて、フランス語で手紙を書く
4日目:UPE2Aの先生による面談、CE1のままで確定
【1週目を終えて:約20時間】
初日は泣くのかな?と思っていたのですが、大丈夫でした。娘の感想としては「お友達が言っていることがわからない」だそうです。
ただ初日から友達もできて、手紙交換をしたり、身振り手振りでコミュニケーションを取りつつ、一緒に遊んでいます。先生からも大丈夫、というコメントでした。
学年の途中からの入学、かつフランス語ができない状態なので、先生が個別で授業内容を変えてくれているそうです。筆記体の練習をしたり、1学年下の教科書を音読したりしています。
現在の本人の困りごとは、歌う時に指を鳴らせない。名前を何回も聞かれて困る。ということでした。名前に関しては、妻がアルファベットのパーツを使い、ブレスレットを作ることに。名前を聞かれたら、そのブレスレットを見せる。ということで解決しました。

■学校生活2週目
5日目:給食スタート!学校にいる時間が1日8時間になりました。
【2週目を終えて:約30時間】
娘の感想「お友達が言っていることは大体わかる。でも何て返事をして良いか分からない」だそうです。
もう分かるの?本当に?と思ったのですが、本人がわかるというのであれば、いいかと思い、詳しくは聞いていないです。
娘は単語で返事をしたくない、というタイプなので、学校ではフランス語を一切話していない。と言っています。「わたしの名前は〇〇です」みたいなレベルのミニフランス語レッスンをクラスメイトが毎日してくれるそうです。既にそれくらいは言えるのですが、頑なに首を振ったりして返事をしています。
■学校生活3週目
8日目:UPE2Aスタート(補講)
10日目:初めてひとりでフランス語の手紙を書く
【3週目を終えて:約60時間】
娘の小学校には日仏家庭のお姉さんがいます。初日から優しくしてくれたお姉さんがもうすぐ卒業する。という事を知り、メッセージカードを書きたいと思った娘。ただ僕らには見せたくないらしいので、ChatGPTを使って、書きたい文章をフランス語に翻訳してもらって作成していました。クラスメイトとも仲良くなっているようで、クラスのパパと連絡先を交換しました。フランスに来てはじめてのパパ友です。
引き続き「友達の言っていることはだいたいわかる。でも話したくない」という状態です。理由を聞くと「まだちょっと発音が違うから」だそうです。
僕としてはフランスに来てからより上手になったと思うのですが、本人が言うなら、と思って見守っています。毎日の宿題として、アルファベットの筆記体練習があります。授業もノートも全部筆記体です。
■学校生活4週目
12日目:フランス語の単語を自発的に何も見ずに書き出した!
13日目:マルシェのマダムの会話が聞き取れるみたい
【4週目を終えて:約80時間】
クラスメイトがやっているクロスワードの本、ルービックキューブを欲しいというので学校帰りに購入しました。
学校の宿題以外にフランス語の学習は強制していませんが「筆記体ってクルクルしていて可愛い」と、自発的に練習しています。お手本を見ずに、筆記体で文章を書くようになりました。聞き取り能力もあがっているようです。
妻がマルシェで「エビのフリットを9個、鰯のフリットを6個」と注文したのですが、マダムが「エビのフリットを6個、鰯のフリットを9個」と復唱したときに、隣で聞いていた娘が「マダム、数が逆だよね」と言い、びっくり。数字は59まで覚えたようです。
■学校生活5週目(転換期!)
15日目:学校でなるべくフランス語を話すようにする!と宣言あり
16日目:少し話せたらしい。明日はもっと話す!と意欲的。
17日目:さくらんぼの食べ方に衝撃をうける
【5週目を終えて:110時間突破】
今日友達がキスしてくれた!というので、よく話を聞くと、娘が転んだときに、痛くないおまじないとして膝にキスをしてくれたらしい。仲良しのお友達も数人いるみたいで良かった。
クラスの男の子に、おもちゃの蜘蛛で驚かされる。ただそれを他の子が庇ってくれたり、蜘蛛に名前をつけてかわいがったらいいよ。とアドバイスをもらって平気になったり、日々逞しく過ごしている様子。
UPE2A(補講)のクラスにいる友達と話すために、ベトナム語を覚えようとする。フランス語に関しては、訪ねてくる質問が難しい。「アイスは la glace。チョコレートは le chocolat。じゃあチョコレートアイスは la と le 、どっちだろう」という感じ。僕自身も渡仏のためにフランス語を学習していますが、このあたりで抜かされたと感じています。
給食でさくらんぼが出たので、口に入れて種を出そうとしたらクラスメイトに全力で止められたらしい。食べる前に手で割って種を出してから食べるので、娘は種があることを知らないと思われたみたい。みんな手が果汁でべちゃべちゃになっているらしく、娘は国によって違うんだなーと実感したらしい。
■転換期と副作用について
学校でも、フランス語を話す!と宣言があったように、娘の中で転換期を迎えたようです。
この時点では「Je voudrais une glace, s’il vous plaît.(アイスを1つください)」くらいの文章を好んで使っています。学校では簡単な単語で伝えているようですが、伝わった!と喜んでいます。フランス語は初心者ですが、赤ちゃんじゃないから「An ice cream, please.」じゃなくて「I would like an ice cream, please.」という感じで話したいそうです。
週末にはiPhoneで自分の話す姿を動画で撮っていたり、ぬいるぐるみにフランス語を教えたり、僕ら夫婦に対してフランス語のスクール開講、というチラシが配られました。
しきい値を超えたのかな?と嬉しく思っていたのですが、フランス語の発語と同時に「日本語が難しい、日本語混乱する、日本語が英語、英語がフランス語に聞こえる。家の中で日本語やめて欲しい」という状態になりました。
僕ら夫婦は日本語しか話しませんし、娘が伝える「混乱」がどのような状況かはわかりません。バイリンガルもトリリンガル教育もはじめてなので、こんな時はChatGPTに相談しています。
【ChatGPTからのアドバイス】
娘さんは、言語習得でよくある「沈黙期」から、アウトプットモードに入りました。ただ、その副作用として、母語さえも「ノイズ」に感じることがあります。多言語の子に共通して出やすい。脳が言語モードを切り替えながら整理している最中。数週間〜数か月で自然に落ち着きます。フランス語がしっかり伸びている証拠なので安心して良いです。母語の基盤は消えません。
という回答でした。
この転換期を知らなければ「日本語もやりなさい!」と言ってしまっていたかも知れません。ChatGPTからも否定せずに受け止めるとアドバイスがあったので、しばらくは、パパは英語で話しかける。ママはなるべく話さない。ママが話す時は、なるべく簡単な日本語で短い文章にする。と決まりました。
■学校生活6週目
19日目:はじめて学校に行きたくないと泣く
休日:はじめてクラスメイトと遊ぶ約束をする!ピクニックへ
20日目:成績表をもらう、CE2に進級
21日目:合唱の発表会に参加
24日目:登校最終日(翌日から夏休み!)
【6週目を終えて:140時間突破】
通学途中にはじめて学校に行きたくないと泣き出しました。このまま行き渋りが始まったら、どうしよう。と不安になったのですが、環境の変化が一番大きいのは娘なので、通学路を引き返すことに。
僕らも心配しましたが、辛いときには行かなくてもいい。という状況で安心できたのか、午後からは登校していきました。
最後の週は猛暑で、学校が休校や時短になりました。成績表をもらった後は自由参加なのか?というくらいクラスメイトも半分以上はお休みでした。学年末だったので、成績表をもらい、そこには先生からこんなメッセージが。
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彼女はごく最近この学校に入学し、日本から来ました。彼女は日本語と英語を話します。学習能力をとてもよく発揮しており、学習への姿勢も非常に前向きです。数学の理解度は年齢相応のレベルに達しています。彼女はクラスや学校生活にも完璧に馴染んでいます。来年はCE2(小3相当)に進級します。
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という訳で、9月からCE2に進級することになりました!
この時期を終えて
ほぼ学年末という途中からの編入でしたが、その時期だからこそクラスの雰囲気も落ち着いてきて「転校生がきたー!」とクラスメイトも盛り上がってくれたり、先生のサポートも手厚かったように思います。
当初は「日本人は私だけ。黒い髪も私だけ。学校の鏡を見るたび、皆と違うって思う」としょんぼりしていましたが、それも最後の方にはなくなりました。日仏の家庭の子も、黒髪の子も学校には居るのですが、そこは別みたいです。クラスメイトに指摘されるとか、そういったことではなく、本人が自分で気にしている状況でした。
フランス語はだいぶ聞き取れるようになり、本人なりの手応えは感じているものの、まだクラスメイトとの差を感じて積極的には話さないです。ただ、友達の名前は20人以上に増え、楽しく遊んでいるみたいです。
夏休み前には初めてクラスメイトの家族と一緒にピクニックに行く!というビックイベントも経験できて、良い感じで終えることが出来ました。
この時期のトリリンガル状況
母語は、日本語です。学年に応じた漢字学習や音読、作文は家庭でも行っていますが、娘から「日本語難しい、混乱する」と言われるようになりました。
いつまで続くか不安でしたが、夏休みに児童書を20-30冊読む中で解消されたようです。娘からは「自分のペースで日本語が読めてよかった。もう大丈夫」とコメントがあったので、家庭内の日本語も「簡単な単語・短い文章で話す」というのを辞めて、元の水準に戻しています。
英語は、週1回2時間のオンラインスクールを続けています。フランスに来てからの受講時間は14時間です。時間的に見ればフランス語の方が10倍多いです。学校から帰ってきたら、フランス語漬けで頭が疲れるのか、Netflixで好きなアニメを英語で見てリフレッシュしていました。
娘の言語環境としては、
生活/フランス語
家庭/日本語
娯楽/英語
こんな感じのバランスです。
夏休みは2ヶ月です。旅行などもしつつ、家庭学習としては「日本語の強化」「日本の学習内容に沿った勉強」をメインに行う予定です!
阪口ユウキ
