見出し画像

世界で140店を閉めたVANSが、心斎橋に旗を立てた。40代が知っておきたい「今のヴァンズ」と、いま選ぶべき一足はオールドスクールなのか#PR


我々はこれまで、名作スニーカーの「いま」を追いかけるニュースも、たびたび取り上げてきました。定番中の定番が静かに作り替えられたコンバース オールスター、四半世紀ぶりの刷新を報じ、コートで忘れられた一足がスケートボードの路上で蘇る物語をナイキ「ブレイザー」の歴史で辿り、そしてカリフォルニアの工場から生まれたスケートシューズの原点をVANSスニーカーの歴史(Era)として書きました。歴史は過去のものではなく、今日も動き続けている——それがこの連載の立場です。

今回の主役は、そのVANS(ヴァンズ)です。2026年7月10日、大阪・心斎橋PARCOに新店舗「Vans Store Shinsaibashi PARCO」がグランドオープンしました(プレオープンは7月3日)。オープンに合わせて、伝説のプロスケーター、トニー・アルバが来日。当初は創業家のスティーブ・ヴァン・ドーレンの来日も予定されていましたが、直前に不参加となり、代わって同じくレジェンドのスティーブ・キャバレロが緊急来日した——スケートメディアのVHSMAGがそう報じています。

一方で、海の向こうからはまったく逆のニュースも届いています。ファッション業界紙のFashionNetworkによれば、VANSは2025年夏までの約2年間で、世界の不採算店およそ140店舗を閉鎖したと報じられています。同報道の時点では、四半期売上も前年同期比で約14%の減収でした(※いずれも報道ベースの数字であり、今後修正される可能性があります)。

世界で店を閉めているブランドが、日本では旗を立てる。この一見矛盾した構図こそが、90年代にオールドスクールを履いた我々40代が知っておくべき「今のヴァンズ」の姿です。

心斎橋に立った新店舗と、駆けつけたレジェンドたち

カリフォルニアのルーツとスケートカルチャー。ブランドの魂が駆けつけた
カリフォルニアのルーツとスケートカルチャー。ブランドの魂が駆けつけた

まず、明るいニュースから見ていきましょう。

心斎橋PARCOに開いた「Vans Store Shinsaibashi PARCO」は、カリフォルニアのルーツとスケートカルチャーを空間全体で表現した店です。VHSMAGは「旗艦店」と紹介しています(※公式発表にこの呼称はありませんが、それに相当する力の入れようです)。単に商品が並ぶだけの売り場ではなく、ブランドの世界観をまるごと体験させる場所として設計されています。

注目すべきは、このオープンに関わった顔ぶれです。当初来日が予定されていたスティーブ・ヴァン・ドーレンは、1966年にカリフォルニア州アナハイムで仲間とともにVANSを創業したポール・ヴァン・ドーレンの息子であり、半世紀以上にわたってブランドの「語り部」を務めてきた人物です。本人は直前に不参加となりましたが、その穴を埋めるべく緊急来日したのが、名作「ハーフキャブ」にその名を残すスティーブ・キャバレロでした。そしてトニー・アルバは、1970年代のスケートシーンを塗り替えた伝説的スケーターで、VANSとスケートカルチャーを結びつけた立役者の一人とされています(※アルバの功績の詳細には諸説ありますが、初期VANSの象徴的存在であることは広く認められています)。

つまりVANSは、この店のオープンに「ブランドの魂」と呼ぶべきレジェンドたちを送り込んできたわけです。数ある海外市場の一つに対する扱いとしては、破格と言っていいでしょう。

世界では140店が閉まっている、という現実

各地の灯りが静かに消えていく中で、日本にひときわ強い灯がともる。選択と集中の局面
各地の灯りが静かに消えていく中で、日本にひときわ強い灯がともる。選択と集中の局面

一方で、冒頭に触れた通り、VANSの世界での商況は楽ではないと報じられています。

VANSは2004年から、The North FaceやTimberlandなどを擁する米国のアパレル大手VF Corporation(VFコーポレーション)の傘下にあります。そのVF社が進める立て直し策の中で、VANSは不採算店舗の整理を進め、その数が過去2年ほどで世界約140店に上った——というのが2025年夏のFashionNetworkの報道です。約14%減収という数字も、同報道時点の四半期(前年同期比)のものです。なおその後のVF社の決算発表では、2026年3月までの四半期で減収幅は約1%まで縮小し、米州の直営販売は成長に転じたとされています(※前述の通り報道・決算発表ベースの数値です)。

ここで断っておきたいのは、これは「VANSが終わった」という話ではない、ということです。むしろ逆で、採算の合わない店を閉め、勝負すべき場所に投資を集中させる——いわゆる選択と集中の局面にある、と読むべきです。2010年代のVANSは世界的なブームで急拡大しました。広げすぎた戦線を畳み、ブランドの核に立ち返る。名門が何度も繰り返してきた、健全な縮小と再起の物語です。

そして、その「勝負すべき場所」の一つに日本が選ばれた。心斎橋の新店舗とレジェンドたちの来日は、そう読むのが自然です(※あくまで筆者の読みであり、VANSが日本を再建の起点と公式に位置づけたわけではありません)。

なぜ日本だったのか

流行り廃りではなく定番として。日本はVANSを愛し続けてきた稀有な市場
流行り廃りではなく定番として。日本はVANSを愛し続けてきた稀有な市場

理由を推し量る手がかりは、我々自身の足元にあります。

日本は、VANSの名作を「流行り廃り」ではなく「定番」として履き続けてきた稀有な市場です。90年代、渋谷や大阪アメ村の店先にオールドスクールとスリッポンが山と積まれ、当時10代〜20代だった我々がこぞって履いた。あのブームが去った後も、日本ではVANSが古着市場と定番売り場の両方で生き残り続けました。ヴィンテージのVANSを丁寧に発掘し、値付けし、文化として語る土壌は、本国に勝るとも劣らないと言われます。

ブランドが苦境に立ったとき、頼りになるのは「安く大量に買ってくれる市場」ではなく「深く長く愛してくれる市場」です。レジェンドたちがわざわざ海を渡って来たという事実は、日本のスニーカー文化への敬意の表明にも見えます。90年代に履いた我々としては、これを素直に歓迎したい。青春の一足が、40代になった今もまだ現役で戦っている姿を見るのは、悪い気分ではありません。

なお、VANSの創業から名作「エラ」誕生までの物語——生ゴムを焼き付けて作られたワッフルソールの誕生や、スケーターたちとの出会い——は、VANSスニーカーの歴史(Era)に詳しく書きました。今回のニュースの背景として、あわせて読んでいただくと立体的になるはずです。

いま買うならどれか。40代のための現行VANS4足

本命・原点・足首まで・脱ぎ履き最速。40代のための現行4足
本命・原点・足首まで・脱ぎ履き最速。40代のための現行4足

さて、ここからが本題です。ニュースをきっかけに「久しぶりにVANSでも履くか」と思った40代は、何を選べばいいのか。現行ラインから、間違いのない4足を挙げます。

まず本命は、やはりVANS オールドスクールです。1977年生まれ、側面に走る波形のライン——通称ジャズストライプは、創業者ポール・ヴァン・ドーレンの落書きから生まれたと伝えられています。スエードとキャンバスを組み合わせた定番仕様のアッパーは、40代の落ち着いた服装にもっとも馴染みます。スエード混ゆえに真夏は少し重く見えるので、盛夏はキャンバス地の面積が広い色を選ぶか、秋からの相棒として今のうちに迎えておくのが賢い買い方です。90年代に履いていた人こそ、もう一度。当時より確実に、上手に履けるはずです。

原点を選ぶなら、VANS オーセンティックです。1966年の創業時に作られた、もっとも素朴な一足。装飾がない分だけ服を選ばず、豊富な色数から選ぶ楽しみがあります。細身のパンツに白のオーセンティックという組み合わせは、年齢を問わない普遍解です。

足首まで覆うなら、VANS スケートハイ(SK8-Hi)。1978年に登場したハイカットで、くるぶしを守るという実用から生まれた高さが、そのままデザインの個性になっています。重心が上がる分コーディネートの難度は少し上がりますが、秋冬の太めのパンツとは相性抜群です。

そして脱ぎ履きの速さで選ぶなら、VANS クラシック スリッポンです。紐なしの象徴であり、白黒チェッカーボード柄はVANSというブランドそのものの記号になりました。1982年の映画『初体験/リッジモント・ハイ』でショーン・ペンが履いて世界に広まった、と語られる一足です(※普及の経緯には諸説ありますが、この映画が大きな契機だったとする見方が有力です)。玄関で靴紐と格闘したくない40代の日常に、これほど効く靴はありません。

なお、スニーカーのサイズ感はブランドごとに癖があり、VANSも例外ではありません。ネットで買う前に主要ブランドとPRO-Kedsのサイズ感徹底比較を確認しておくと失敗が減ります。

靴を買うことが、いちばんの応援になる

40代の男がいま、オールドスクールに足を入れるとき。そこには1966年のアナハイムの工場と、70年代のスケーターたちの無謀と、90年代の渋谷やアメ村の熱気と、そして2026年の心斎橋に立てられた旗が、一本のラインでつながっています。

世界で140の店が閉まっても、靴そのものの価値は一足も減っていません。むしろ、レジェンドたちが自ら日本に運んできた「今のヴァンズ」は、拡大期の勢いとは別の、腹の据わった凄みを纏っています。ブランドの再起を応援する方法は、SNSで惜しむことではなく、一足買って、履いて、街を歩くことです。60年分の歴史を足元に纏う——スニーカー好きにとって、これ以上の贅沢はそうありません。

いいなと思ったら応援しよう!