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スニーカーとゴアテックス(GORE-TEX)の歴史。最強の透湿防水素材は「常識を破る“急激な延伸”」から生まれた#PR


1. Kedsから続く歴史は、「構造」から「素材の革命」へと突入する

我々はこれまで、スニーカーの語源となったUSラバー社の「Keds」から始まり、雪山を生き抜く「コンバース」、空のプールを滑る「VANS」、そして生体力学を極めた「ニューバランス」など、スニーカーがいかに過酷な環境に適応してきたかを追ってきた。 これまでの歴史は、主に「ゴムとキャンバス」をどう組み合わせるかという【構造】の進化史であった。

今回から、スニーカーの歴史は全く新しい次元へと突入する。 アウトドアや機能系スニーカーに革命を起こした【素材】の進化である。 その筆頭が、現代のハイスペックスニーカーに欠かせない最強の盾「GORE-TEX(ゴアテックス)」。

雨などの「水」は完全に弾くのに、足の「蒸れ」は外に逃がすという魔法のような透湿防水素材だ。この理系エリートの結晶のようなハイテク素材は、決して偶然の産物ではない。常識を疑い、あえてセオリーを無視した「一回の過激な試行」から生まれたものなのだ。

2. 1969年、テフロン樹脂と格闘するゴア親子

1958年、アメリカでビル・ゴアとヴィーヴ・ゴア夫妻が、自宅の地下室で「W. L. Gore & Associates」という会社を立ち上げた。彼らが目をつけたのは、フライパンの焦げ付き防止などにも使われるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、いわゆる「テフロン樹脂」の可能性だった。

https://www.gore.co.jp/about/the-gore-story

1969年、息子のボブ・ゴアは、このPTFEを加熱して引き伸ばし、配管用のシールテープなどを安価に作るための実験を繰り返していた。 素材を温め、両端を持ってゆっくりと、慎重に引き伸ばす。しかし、PTFEは少しでも伸ばそうとすると、無情にもプツン、プツンと千切れてしまう。来る日も来る日も「ゆっくり伸ばす」というセオリー通りの実験を重ねたが、素材は決して伸びてくれなかった。

3. 常識を破る「急激な延伸(Sudden Yank)」

終わりの見えない実験の中、ボブはついに従来のアプローチを捨てる決断を下す。 ある日、彼はいつものように加熱したPTFEの棒を手に取ると、「ゆっくり伸ばす」という常識をかなぐり捨て、「思い切り強く、一気に引っ張る(Sudden Yank)」という全く逆の試行に打って出たのだ。

千切れて終わるはずだった。しかし次の瞬間、彼の目の前で信じられないことが起こる。 PTFEの棒は千切れるどころか、元の長さの約800%(約9倍)まで一気にビヨーンと拡大したのだ。この「急激な延伸」によって生まれたのが、無数の微細な孔(あな)を持つ「ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)」。これこそが、後に世界中のアウトドアマンやスニーカーヘッズの足を濡れから救う心臓部(メンブレン)が誕生した瞬間だった。

4. 医療からアウトドアへ。1976年の実用化

1969年に発見されたこの多孔質構造が、実際に「GORE-TEX」として製品化されるのは1976年のことである。 最初はアウトドアウェアではなく、人工血管(血管グラフト)や工業用シール材などの医療・工業分野でその高い安全性が証明された。その後、テントや登山ウェア、そしてブーツやスニーカーへと転用されていく。

GORE-TEXの凄さは、その膜(メンブレン)の孔の絶妙なサイズにある。わかりやすい比喩として「水滴の約2万分の1、水蒸気の分子の約700倍」とよく表現される通り、外からの雨粒は通さず、靴の中の極小の汗(水蒸気)だけを逃がす。 この極薄のメンブレンを、表地と裏地の間にサンドイッチのように挟み込む「ラミネート構造」にすることで、強靭なファブリクスが完成するのだ。

5. 弱点すら愛おしい「究極のギア」を履く

現在、ナイキのエアフォース1からサロモンに至るまで、数多くの名作スニーカーに「GORE-TEX」搭載モデルが存在している。 しかし、ギア好きの男なら「GORE-TEXは完全無欠の魔法ではない」ことも知っておくべきだ。縫い目には防水テープ(シームテープ)の処理が必須であり、使用環境によっては経年劣化も起こる。だが、その「メンテナンスや寿命が存在する」という事実こそが、この素材が単なる便利グッズではなく、過酷な環境を生き抜く「リアルなサバイバルギア」である証なのだ。

大人の男が雨の日にGORE-TEXのスニーカーを履くとき。 それは単に「足が濡れない靴」を選んでいるのではない。「ゆっくり伸ばす」という世界の常識を疑い、一気に強く引っ張った一人のエンジニアの執念を足元に纏っているのだ。 憂鬱な雨の日のアスファルトでさえも、このウンチクを胸に秘めていれば、水を弾くたびに少しだけ力強く歩けるはずだ。


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