テレビに出たのに売れない会社と売れる会社の3つの違い
知られていないのは、存在しないのと同じ。
だから「伝える」を学ぼう。
「テレビで紹介されたんですが、正直、売上はほとんど変わりませんでした」
こう打ち明ける経営者は、あなたが想像するよりずっと多い。
一方で、たった数分の放送を転機に商売の景色が一変した会社もある。
同じ電波に乗ったのに、この差はどこから来るのか。
答えを先に言ってしまうと、放送前に決まっているのだ。
まず、テレビの効果をめぐる身も蓋もない現実から。
放送の反響は、たしかに凄まじい。放映中から検索が跳ね上がり、電話が鳴り、サイトにアクセスが殺到する。
だがこの熱は、驚くほど早く冷める。
数日、長くて一週間。
視聴者の脳は次の話題で上書きされ、潮が引くように平常へ戻っていく。
つまり取材とは「収穫」ではなく「潮」なのだ。
大潮の日に魚が押し寄せることは分かっている。獲れるかどうかは、潮が来る前に網を張っていたかだけで決まる。
網のない浜で、魚の大群を呆然と見送る――「テレビに出たのに売れない」の正体は、たいていこれである。
では、網とは何か。三つある。
第一に、受け皿。
放送を見た人は、まず社名で検索する。そこに灯りのついたサイトとSNSがなければ、興味はその場で蒸発する。放送翌日に「ご覧いただきありがとうございます」の一報が出せるアカウントと、三年前で止まったアカウント。潮の獲れ高は、この一点だけでも桁が変わる。
第二に、導線。
検索した人が次に取る行動を、一本道にしておくことだ。
買えるのか、予約できるのか、問い合わせるのか。入口が三つも四つもあると、人は選べずに帰ってしまう。
そして意外に多い失敗が、物理的な準備不足である。電話は一本しかない、在庫は普段の一週間分、サイトは同時アクセスで沈没――潮は、網ごと破っていくこともあるのだ。
第三に、缶詰。
放送は一夜で消えるが「テレビで紹介された」という事実は消えない。
前シリーズ(自分で言うと嘘になり、他人が言うと真実になる| 伝えるから始める経営)で学んだ通り、第三者に語られた言葉には信頼の担保がつく。
放映実績とは、その担保を缶詰にしたようなもので、店頭でもサイトでも営業資料でも、何年でも効き続ける。ただし番組映像やロゴの使用には放送局の許諾が要るから、ここは必ず確認しておくこと。缶詰は正規品に限る。
さて、網の話が済んだところで、取材当日の振る舞いにも触れておこう。
ここにも知らないと心が折れる事実がある。
数時間に及ぶ取材のうち、実際に放送で使われるのは数十秒から数分。
九割以上はカットされる。
これは冷遇ではなく、テレビという媒体の仕様である。
だとすれば、話し方の戦略はひとつしかない。
「使われる15秒」を差し出すことだ。編集で切り取りやすいのは、短い言い切りと、具体的なエピソードである。
「弊社の強みは総合的なソリューションで…」は絶対に使われない。
「この豆腐、失敗作から生まれたんです」は必ず使われる。
専門用語は中学生に話す言葉に置き換え、いちばん伝えたい一言は、聞かれなくても三回言う。
編集者の手元に残るのは、結局その一言だ。
ここでも原理は前回のリリースと同じ――相手の編集作業を肩代わりした者が勝つのである。
取材はゴールではなく、始まりですらなく「点火のチャンス」にすぎない。一夜の花火を常夜灯に変換できるかどうかは、放送の何か月も前から続けてきた地味な受け皿づくりにかかっている。
実践編である「伝える」を学ぶシリーズが、プレスリリース→SNS→取材の順で進んできた理由が、これでお分かりいただけただろう。
次回は、視点を思い切って裏返す。
外への発信ばかり磨いてきたが、実はあなたの会社には、毎日顧客と接している「メディア」がすでにいる。
従業員である。
社長の想いが社内にすら伝わっていないのに、社外に伝わるはずがない――インナーブランディングという、耳の痛い話をしよう。
(加々本裕樹)
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