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制度を変えても、組織は変わらなかった


「制度を刷新したのに、組織が変わらない」。そんな声を、うかがうことがあります。等級制度を作り直し、評価も報酬も見直した。1on1を導入し、研修にも投資した。それなのに、半年経つと、元の景色に戻っている——。

お気持ちは、よくわかります。制度を作る側にいた頃、私も同じ景色を見ていました。

変えてはいけないもの、変えていいもの

私の、人と組織への向き合い方に大きな影響を与えた、あるグローバル企業があります。世界に展開しているような企業では、人事制度を世界共通の枠組みとして持ちながら、それを国ごとに、その土地の法律や文化に合わせてカスタマイズしていくのが一般的です。評価のやり方も、報酬の水準も、その国に合わせて柔軟に変えていく。組織の「求心力」と「遠心力」の、ちょうどバランスをとるように。

ただ、そうした会社でも——いえ、そうした会社ほど、「国ごとに変えていいもの」と「変えてはならないもの」の線引きが、はっきりしています。制度や運用は現地に合わせて動かしていい。けれど、その下にある、人をどう見るかという考え方は、動かさない。事業の理念と同じ格で、"変えてはならないもの"の側に置かれている。だから、どの国のどの制度も、根っこでは同じ一つの考え方につながっていく。

そして、その"人をどう見るか"を最も体現しているのは、経営のトップ層でした。りっぱな言葉で語られるからではなく、ふだんの会議での何気ない一言や、日々の判断のはしばしに、それがにじみ出ているからです。
制度が効いていたのは、制度が優れていたからではなく、その下に、動かない土壌があったからだと思います。

これは、大きな会社だけの話ではありません

ここまで読んで、「それは大きな会社の話でしょう」と思われたかもしれません。世界に展開する企業と、日本で地に足をつけて営む中小企業とでは、事情がまるで違う、と。

けれど、私がお伝えしたいのは、制度の話ではありません。規模も、国も、業種も関係なく、どんな会社にも共通してあるもの——制度の下にある「土壌」の話です。むしろ、一人ひとりの顔が見える中小企業でこそ、この土壌は、経営者の考え方として、はっきりと形を持っています。大企業のように分厚いマニュアルには書かれていない。けれど、日々の判断の一つひとつに、確かに表れています。

この土壌がやせていると、どんなに良い制度を蒔いても、根づかない。土壌が耕されていれば、同じ制度が、ちゃんと根を張っていく。

つぎはぎの制度は、信じてもらえない

ジョブ型、1on1、OKR、エンゲージメントサーベイ。この十数年、流行の道具は次々に入れ替わってきました。どれも、それ自体は良い道具です。

ただ、道具を継ぎ足すだけでは、社員は少しずつ、矛盾したメッセージを浴びることになります。評価の面談では今期の数字を問いながら、1on1では「長い目で挑戦を」と語る。ジョブ型で「あなたの役割はここまで」と線を引きながら、バリューでは「境界を越えて協力しよう」と呼びかける。


一つひとつは、正しいのです。ただ、浴びる側から見ると、会社が人に何を望んでいるのかが、だんだんぼやけていく。制度と制度をつなぐ「人への考え方」がなければ、人はやがて、新しい制度が来ても「またか」と受け流すようになる——というのが、現場に居合わせてきた私の実感です。

新しい制度が「またか」と迎えられるとき、壊れているのは制度ではないのかもしれません。制度たちをつないでいるはずの、考え方のほうです。

順番が、逆なのかもしれない

制度は、種のようなものだと思います。土がかたいままでは、どんなに良い種も根を張れません。

制度を変えても組織が変わらなかったとしたら、制度が悪かったのではなく、順番が逆だっただけ——そう考えています。制度を変える前に、そろえておくべきものがある。それは、経営が本気で信じている「人への考え方」です。逆に言えば、それがそろってはじめて、制度は本来の仕事を始めます。

そもそも、なぜ人や組織はこれほど変わりにくいのか。『なぜ人と組織は変われないのか』(ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー)は、その問いに一つの答えを示します。変われないのは意志が弱いからではなく、変わらないことで、無意識に守っているものがあるからだ、と。新しい制度をいくら入れても動かないものの正体を、静かに照らしてくれる一冊です。

CULTIVAの伴走を、制度の設計からではなく、経営者との対話から始めるのは、そのためです。制度を変える前に、そろえるものがある。それが何かは、会社ごとに違います。ただ、探す場所はたぶん同じで——制度の中ではなく、制度を作る人の中にあります。

あなたの会社の制度の下には、いま、どんな考え方が流れているでしょうか。


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