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盤を半分に縮めたら、ゲームは浅くなるのか。AI30万局で確かめた

40年前に紙で作った盤は、73マスありました。

それをアプリにするとき、スマホの画面に収めるために37マスへ、ほぼ半分に縮めました。遊びやすくなった。指も届くようになった。それでよかったはずなのに、夜中にふと怖くなりました。

小さくしたら、すぐに最善手が決まってしまうのではないか。何度打っても同じ展開になる、底の浅いゲームになっているのではないか。

40年温めたものが、実は薄っぺらかった。それを自分だけが知らずに配っていた、という状況が、いちばん怖い。

確かめることにしました。

ReverStarGo盤面

そもそも「深い」とは何なのか

困ったのは、深さの定義でした。

面白いかどうかは人によって違います。難しいかどうかは腕前によって変わります。数えられるものでないと、確かめようがありません。

そこで、こう置き換えました。

同じゲームを1万回やったとき、それぞれの対局がどれくらい違う展開になるか。

毎回まったく違う棋譜が出るなら、選べる道がたくさんあるということです。逆に、1万回やって数十通りしか出ないなら、道はもう決まっている。それは浅い、と言っていいと思いました。


3つの兄弟で比べる

自分のゲーム1つだけ調べても、その数字が大きいのか小さいのか分かりません。比べる相手が要ります。

選んだのは2つです。

  • 6×6リバーシ(36マス・約32手)── リバースターゴとほぼ同じ大きさ

  • 8×8リバーシ(64マス・約60手)── いわゆるオセロ。ほぼ倍の大きさ

同じ土俵にするため、AIは同じ設計のものを使いました。読みの深さだけを変えて10段階を用意し、各段階で同じ強さどうしを1万局ずつ戦わせます。強さに差があると、強い方が勝つだけで展開が偏るからです。

3ゲーム分で30万局。試行錯誤や取り直しを含めると、総対局数は約200万局になりました。


1万局で、何通りの棋譜が出たか

まず、単純に数えました。1万局のうち、まったく同じ手順の対局を1つと数えて、何通りの違う棋譜が出たか。

  • 6×6リバーシ(36マス):150通り

  • リバースターゴ(37マス):1,823通り

  • 8×8リバーシ(64マス):2,964通り

この結果を見たとき、自分のゲームの数字より先に、6×6リバーシの方に驚きました。

1万回戦って、150通り。 しかも最終スコアに至っては17種類しか出ていません。
この17種類は500局を過ぎた時点で出そろっていて、残りの9,500局では新しいスコアが1つも現れませんでした。

6×6リバーシ・最強設定どうし1万局の集計。右端の列が500局から17のまま動かない


最強設定どうしで戦わせると、ほとんど決まった道をなぞるだけになる。同じサイズの盤で、これだけ違う。

リバースターゴは1,823通りでした。マスの数は1つしか違わないのに、約12倍の広がりがあったことになります。

つまり、深さは盤の大きさだけでは決まらない。六角形で6方向に開かれた星型という形と、「囲んで取る」「中央のマスの色を宣言する」というルールが、道を増やしていたようです。


ただ、通り数だけでは足りなかった

ここで終われば気持ちのいい話なのですが、問題があります。

でたらめに打つAIも、毎回違う棋譜を出すのです。

考えずに打てば展開は毎回散らばります。通り数が多いことは、そのまま「戦略が豊か」を意味しません。むしろ、下手なほど数字は大きくなります。

だから、こう見ることにしました。

AIに深く読ませていったとき、通り数がどう変わるか。

読みを深くすると、普通は道が絞られていきます。「この局面ではこれが最善」と決まっていくからです。絞られきってしまうゲームは、底が見えている。逆に、深く読ませても道が減らない、あるいは増えるなら、その先にまだ何かがあるということになります。


「下がって、また上がる」

やってみると、3つとも同じ形の動きをしました。

浅く読ませているうちは、道がぐんぐん減っていきます。2手先まで読ませたあたりで底を打つ。ところが、3手先まで読ませると、また増え始めるのです。

グラフにするとJの字に見えるので、J字型と呼ぶことにしました。


J字型のグラフ(レポートから)

面白いのは、この「また上がる」の大きさが、3つでまるで違ったことです。数字は戦略の幅を表す指標(β値)で、1に近いほど毎回違う展開、0に近いほどすぐ同じ形に落ち着くことを意味します。

  • 8×8リバーシ:0.380 → 0.664(上がり幅 +0.284)

  • リバースターゴ:0.370 → 0.462(上がり幅 +0.092)

  • 6×6リバーシ:0.010 → 0.058(上がり幅 +0.048)

6×6リバーシは、そもそも底の値がほぼ0です。深く読ませるまでもなく、道が消えている。

リバースターゴは中くらいでした。8×8リバーシには、はっきり届いていません。


「うちが一番深い」とは書けなかった

正直に書きます。この結果は、私が期待したものとは違いました。

自分のゲームが一番だった、という結末を、どこかで願っていました。実際は、8×8リバーシの方が上でした。上がり幅で3倍の開きがあります。

書けたのは、ここまでです。

  • リバースターゴは、ほぼ同じ大きさの6×6リバーシより、明確に深い

  • 盤は8×8の約58%、手数は約55%しかないが、8×8に準ずる水準にはある

  • ただし、8×8を超えてはいない

「同等」とも書けません。データがそう言っていないからです。

それでも、最初の不安には答えが出ました。37マスに縮めても、底が見えるゲームにはなっていなかった。 私が確かめたかったのは、そこでした。


分かっていないこと

いくつも残っています。

なぜ一度下がって、また上がるのか。この形が出る理由は、まだうまく説明できていません。浅く読むうちは決まった形に落ち着き、深く読めるようになると別の道が見えてくる、ということだと思っていますが、断定できるだけの裏づけはありません。

読みの深さも5手先までで止めています。6手先を1万局取ろうとすると、計算時間が跳ね上がって現実的でなくなるためです。8×8リバーシの5手先だけで、約56時間かかりました。メインのパソコンは寝室にあって、唸り続けると眠れないので、離れた部屋のもう1台で二晩回しました。個人研究の現実です。

比べたゲームも3つだけです。そして何より、β値はゲームの面白さを測るものではありません。展開の幅を見ているだけで、遊んで楽しいかどうかは、まったく別の話です。


データは全部残してあります

30万局分の対局記録と、集計に使った全データを保管しています。方法も数字も、レポートにすべて書きました。

https://play.reverstargo.com/report/

私は独立研究家という肩書きで、指導教員も査読者もいません。だからこそ、間違いがあれば指摘していただきたいと思っています。数字を追い直せる形で公開しているのは、そのためです。

そして、遊んでみて「深い」と感じるかどうかは、読んだ数字ではなく、あなたが打った手が決めることだと思います。



第1回:40年前に構想したボードゲームをAI時代に完成させたら、作者がAIに勝てなくなった話
https://note.com/reverstargo/n/n1d5e6bb2f39a

第2回:オセロが打てる人なら3分で始められる、リバースターゴのルール解説
https://note.com/reverstargo/n/ndccdc64d93cf

第3回:Google Play の審査に3回落ちて、公開まで84日かかった話
https://note.com/reverstargo/n/n5ae0a265ed21

第5回:読者にコメントをもらってから10日で、その人に追い抜かれた話
https://note.com/reverstargo/n/na900cb184e82

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