読者にコメントをもらってから10日で、その人に追い抜かれた話
8月14日の夕方、メッセージが届きました。
添えられていた画面には「ランク25:グランドマスター」とありました。FINAL、つまり私が作った中でいちばん強いAIへの挑戦権を得た、ということです。
私が知る限り、FINALに挑戦した人は、この方が初めてです。
作者である私は、まだそこに立てていません。ランク24で止まったままです。

10日前、この方は私の記事にコメントをくれた読者でした。
始まりは、1件のコメント
8月4日、note に書いた第1回の記事に、ザラメさんという方からコメントが付きました。
ランク20になってレベルMAXと対戦できるようになりました。急に強くなっててビックリです。全然勝てません。個人的にですが、MAXまでに到達するスピードはもう少し早くても良い気はしました。昇格戦の条件に「〇〇連勝したら」があっても良いかもと思いました
遊んでくださっただけでもありがたいのに、そこから一歩踏み込んだ提案までいただきました。
私は「持ち帰って検討します」と返信しました。実は、その時点で半分は答えを持っていました。
しまってあったものがあった
MAXの壁が急であることは、自分でも分かっていました。だから、それを越えるための練習モードを作ってありました。
「大宇宙の修行部屋」といいます。
師匠役のAIが相手をしてくれて、こちらが手を打つたびに評価を返してきます。そして、何度でも「1手戻る」ができます。 ランクは動きません。かわりに、負けても記録に残りません。何度でもやり直して、なぜその手が良くないのかを確かめられます。
ただ、公開していませんでした。いずれ有料版に入れるつもりで、しまってありました。
コメントをいただいて、考え直しました。目の前に、まさにその壁で止まっている人がいます。壁を越える道具は、机の引き出しに入っている。出さない理由が思い当たりませんでした。
8月6日、モニターとして試していただけないかとお願いし、URLをお送りしました。
渡すところで、一度つまずいた
翌日、「安全な接続ができませんでした」という画面の写真が届きました。開けない、と。
こちらのパソコンでもスマホでも開けるので、通信のどこかで止められているのだろうと見当をつけ、確認したいことを3つ書いてお送りしました。
翌朝6時、返事が来ました。
原因が分かりました! ウチのWiFi経由で接続するとダメみたいです。WiFiを切って携帯の回線だと接続できました
ご自分で切り分けて、解決して、報告までくださっていました。この時点で、ただのモニターではなくなっていたのだと思います。
「なるほどなあ、となります」
8月11日の朝、感想が届きました。
修行部屋とても良いです。少しずつMAXにも勝てるようになってきました。なんでそこに打つと師匠が渋い顔するのかよくよく考えると、なるほどなあ。となります
この一文を読んだとき、作ってよかったと思いました。
修行部屋は、正解を教える機能ではありません。渋い顔をするだけで、理由は言いません。理由は自分で考えるしかない。そこを、そのまま受け取ってもらえていました。
同じメッセージに、不具合の報告も2件ありました。
ひとつは、プレイヤー名のボックスが盤面に重なって見づらいこと。もうひとつは、こちらの方が深刻でした。
画面を操作していて少し下にスワイプすると画面がリロードされて敗北してしまう。
これで何回か負けてるので私みたいな人いないかなと気になりました
ブラウザには、画面を下に引っ張ると再読み込みされる仕組みがあります。それが対局中に発動して、その一局が負け扱いになっていました。
理由も分からずに負けて、それでも黙って遊び続けてくれていたわけです。同じ目に遭って、何も言わずに離れていった人がいたかもしれません。
その日のうちに両方直し、夕方には「どちらも正常に修整されていること確認しました」と返事をいただきました。使っている端末がAndroidのFirefoxであることも、そのとき教えていただきました。
追い抜かれた
8月14日の朝、こんなメッセージが届きました。
MAXとの7番勝負に勝ち越してランクあがりました
師匠との修行の成果ですね
添えられた画面には「ランク24:レジェンド」とありました。私と同じランクです。
戦績を見て、言葉に詰まりました。
ザラメさん MAX 29勝43敗(勝率40%)
私 MAX 33勝90敗(勝率27%)
MAXについては、完全に抜かれていました。
自分の戦績の画面を撮って、「完全に負けています」と書いて送りました。それ以外に書きようがありませんでした。
そして同じ日の夕方、次のメッセージが来ます。
15番勝負を勝ち越して、ついにFINALまで来ました

そして、扉の向こう
FINALに1局だけ挑んだ感想が、続けて書かれていました。
1戦だけしかまだやってないんですが、あー、これはアカンやつだと思いました。MAXまでと違って少しCPUが考える時間がありますね。とにかく強い。強すぎます。1つ残らず取られて完敗でした。MAXの時に感じたのと違った別次元の強さです。師匠のとこに行って再修行しますが、今は全く勝てる気がしないです
ルールを解説した記事の最後に、私はこう書きました。「まだ、攻略者はいません」と。
書いた時点では、正直に言えば、少し気取った締めくくりのつもりもありました。それが本当だったことを、作者ではない人が確かめてくれました。
FINALの戦績は、0勝1敗。攻略者は、まだいません。
一番遠いところにいるのは、作った人間です
40年前に構想したゲームです。ルールを決めたのも、AIを作ったのも私です。
その私が、いまランク24で止まっています。FINALの画面を見たこともありません。
悔しいか、と聞かれれば、悔しいです。ただ、それより先に来たものがありました。自分の手を離れて動き始めた、という感覚です。
作った人間が一番強いゲームは、たぶん、他人には面白くありません。誰かが自分を追い抜いていって、その人が見た景色を教えてくれる。それを聞いて、また作る。そういうものを作りたかったのだと、10日かけて教わりました。
しまっておくと、価値はゼロのままです
正直に書いておくと、修行部屋のおかげだけではないと思います。毎日打ち続けたご本人の努力の方が、はるかに大きい。私が用意したのは、練習の場だけです。
それでも、この10日で起きたことを並べると、こうなります。
しまってあった機能を、ひとりに渡した
その人がMAXの壁とFINALの壁を、10日で越えた
不具合が2件見つかって、直った
「これはアカンやつ」という、作者には絶対に書けない言葉をもらった
引き出しに入れたままなら、どれも起きていません。価値はゼロのままでした。
いろいろなものは、いろいろな人に使ってもらって、初めて価値が出る。当たり前のことですが、当たり前だと分かっているのと、実際に目の前で起きるのとは、まるで違いました。
修行部屋を試してくださる方を探しています
そういうわけで、修行部屋を試してくださる方を探しています。

師匠役のAIが1手ごとに評価を返し、何度でも「1手戻る」ができる練習モードです。まだ公開しておらず、いずれ有料版に入れる予定のものですが、モニターとして先に触っていただける方には、個別にURLをお送りします。
期限も、決まった報告の形式もありません。触ってみて、合わなければ「合わなかった」の一言で十分です。
この記事にコメントいただくか、X(@ReverStarGo)までご連絡ください。
そして、もしFINALに勝てた方がいらしたら、それはたぶん世界で最初のひとりです。ぜひ教えてください。
遊ぶ(無料・ブラウザですぐ) → https://play.reverstargo.com
Google Play → https://play.google.com/store/apps/details?id=com.yumekichi.reverstargo
公式サイト → https://reverstargo.com
研究レポート → https://play.reverstargo.com/report/
第1回:40年前に構想したボードゲームをAI時代に完成させたら、作者がAIに勝てなくなった話
https://note.com/reverstargo/n/n1d5e6bb2f39a
第2回:オセロが打てる人なら3分で始められる、リバースターゴのルール解説
https://note.com/reverstargo/n/ndccdc64d93cf
第3回:Google Play の審査に3回落ちて、公開まで84日かかった話
https://note.com/reverstargo/n/n5ae0a265ed21
第4回:盤を半分に縮めたら、ゲームは浅くなるのか。AI30万局で確かめた
https://note.com/reverstargo/n/n2313efb31a5b
