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異星人アリサと閻魔さまのトリセツ第55話「リッチーが死んだ日のこと」【連載小説】

2024年10月8日の夕方、「ご飯よ」と呼んでもリッチーが来なかった。不審に思った真由美は、リッチーがよくいる玄関ポーチを見に行こうとした。その時、階段の下の床で倒れているリッチーを見つけた。口から大量の血が流れ、明らかに様子がおかしかった。真由美が慌てて声を掛けながら触れても動かず、体はまだ温かかったが息をしていなかった。急いで二階にいる夫を呼び、二人で心臓マッサージを試みたが、リッチーは戻らなかった。

ただ、一度だけ前脚が動いた。それが最後の別れの合図だったのかもしれない。

リッチーは翌月15歳を迎えるはずだった。

そして、亡くなる日の朝まで元気だった。

この出来事については、第13話の「真由美の死と飼い犬リッチーの不審死」に詳しく記されている。

真由美が信じて疑わないリッチーの突然死の理由の一つに、聾唖のシニア女性との接触がある。

「打って安心計画」のワクチン接種が始まって以来、1年以上も杖をついていたあの女性。彼女にリッチーがしつこく触られていることに、真由美は嫌悪感を抱いていた。

なぜかリッチーが死んでから一度も出会うことはなかったのに、つい二日前に彼女に会った。今は杖もついておらず、愛犬の黒柴も元気そうであった。

なぜあの女性と飼い犬は元気で、リッチーが死ななければならなかったのか?

考えれば腹が立つ真由美であったが、聾唖のシニア女性はそのことに全く気づいていない。

真由美が連れていたルークとバーデルを見て、とても愛想よく笑いながら近づいて来ようとしていた。だが、警戒している真由美は軽く会釈をして足早にその場を立ち去った。 

眠っているように見えるリッチーと一緒にいたがるバーデル。汚れをシャンプーで落として乾かした後、夫と二人で二階の部屋に運んだ。


リッチーの葬儀は二日後の10月10日に決まった。5年前の初代バーデルの葬儀と同様に、火葬設備付きの移動式車両で自宅の駐車場で火葬を行うことになった。

幸い、夏場ではなかったため遺体が腐敗することもなく、火葬直前までリッチーはまるで眠っているかのようだった。


バーデルとリッチーの縁は深く、謂わば前世からの知り合いである。

東京から共にシンガポールに帯同し、飼い主が先に日本に帰っている間も二匹は預けられていた友人宅で励まし合いながら暮らしていた。

そして、二代目のバーデルはリッチーが火葬されるまで何度もその姿を見に来ていた。

初代バーデル(2020年春)


ペットを失う悲しみは、家族を亡くすときの悲しみに匹敵することが多い。真由美もその例外ではなかった。

リッチーが息を引き取ってからの二日間、彼女は何度もリッチーのそばで添い寝をした。

後日、真由美が冥界で閻魔さまから受け取ったメッセージには下記のようなことが書かれていた。

"……リッチー君は自分が死ぬタイミングをずっと待っていたのです。彼は、あなたの足手まといになるのをひどく嫌がっていました。しかし今、リッチー君は天界でとても楽しく過ごしています。本当の話ですからどうか信じてくださいね。ですから、悲しむよりも、リッチー君が楽しく過ごしていることを思い、彼のために喜んであげてください”

第13話「真由美の死と飼い犬リッチーの不審死」

だが、この時の真由美は悲しみが深すぎて何も考えられなくなっていた。

そして、運気アップを目指して出かけた仙台旅行も、悔やまれる結果となってしまった。

もしリッチーの死が近いと気づいていたら、真由美は仙台へ行かなかっただろう。飼い犬との残された時間を少しでも長く共に過ごすことの方が、運気アップよりもずっと価値があったはずだ。

「リッチーは、あと2〜3年は大丈夫」というアリサの言葉に安心したせいで、真由美の勘は鈍っていたのかもしれない。

確かにドクター・ミネルバには多くの恩がある。

しかし、この日を境に真由美は風水の力を以前ほど信じなくなった。

第56話へ続く


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