異星人アリサと閻魔さまのトリセツ第29話「近未来に男性が消滅するという説」【7割リアル連載小説】
真由美は退院してから2度目のレクチャーを受けにドクター・ミネルバの家を訪れていた。
「アリサからムーンショット計画が頓挫した話を聞きました。やっぱりアバターや人間とロボットの物理的融合の話は現実的ではないと思っていたので納得です。それで、今日は別の話を聞きたいのですが……。ネットで将来的に地球から男性がいなくなるという話を見かけました。しかも、男性が女性化して最終的に消滅するというのです。そういえば最近、胸が女性のように膨らんでいる男性をよく見かけます。昨日AIに尋ねたところ、『ホルモンバランスの乱れが原因で女性ホルモンが増加している男性が増えている』」との答えが返ってきました。その原因は食べ物にあるようですが、ドクター・ミネルバはどうお考えですか?」
「ええっと、AIは具体的に、どんな要因で男性が女性化すると説明していましたか?」
「例えば、大豆製品や特定の植物性食品には、エストロゲンの作用を持つフィトエストロゲンが含まれているらしく、これがホルモンバランスに影響を与えることがあるそうです」
真由美はメモ書きを見つつ説明を続けた。
「それからプラスチック容器の一部から出る化学物質もホルモンバランスを乱す要因になっているとのことでした。一部の薬には女性ホルモンに似た作用を持つ成分が含まれているそうです。高血圧治療薬や胃薬、睡眠薬などが該当します。さらに、プラスチック製品や農薬に含まれる化学物質が体内でホルモンのように作用することも。加えて、長期間のストレスもホルモンバランスに影響を与えるそうです。これらは単独ではなく、複合的に作用しているようですね」
ドクター・ミネルバは真由美に向き直り、言った。
「真由美さん、AIの分析はおそらく正しいと思います。でも私の見解では、精肉にホルモン剤が使用されるようになってから、男性の女性化が加速したのではないかと考えています。それに、漢方薬にも注意が必要ですよ。肥料にホルモン剤が含まれていることを、多くの人は知らないようです。そして、育毛剤にも問題がありますね。男性ホルモンを抑える作用があるのですから」
真由美は“それだ!”と言わんばかりに右手のこぶしで左手の掌を軽く打って言った。
「育毛剤は仕方ないかもしれませんね。大相撲の力士や肥満体質の男性の胸は脂肪が原因の場合が多いみたいですが、育毛剤の影響もあるでしょうね。髷を結えなくなると力士として続けられませんから」
ドクター・ミネルバは真由美の方に体を少し傾けながら語り始めた。
「恐らく、ペットボトルや調味料、化粧品に含まれるプラスチックにも問題があるでしょう。改良や新たな開発が急速に進められているものの、近い将来、現在の石油系化学物質は使用禁止になると私は見ています。例えば、〇リ〇タ〇ガ〇ザーのペットボトルが他のメーカーに比べて安全であることをアルクトゥルスの仲間が突き止めました。同時に体内に取り込まれた化学物質を排出する薬剤の開発も進んでいるようです。今後は、宇宙科学を活用した医療が人類の健康を守ることになるでしょう。ただ、それだけでなく驚くべき変化が起こるかもしれません。10年ほどで地球から男性がいなくなる可能性だってあるのです」
真由美は思わず姿勢を崩すように身を乗り出した。
「えっ、たった10年で男性がいなくなるですって?それってどういうことですか?」
「女性は生き残り、子供を産み続けますが、徐々に男性の機能を持つ体に変化していく、ということです。例えば、ナメクジやある種の熱帯魚のように、必要に応じて性別を変えることで、生命を繋いでいけるのです」
真由美は驚きを隠しきれない様子だったが、深呼吸をして冷静さを取り戻そうとしていた。
「あら、それは大ごとです……。でも、もしかしたら本当にあるかもしれません。確か、YouTubeで聖母マリアのように性交渉なしで妊娠・出産した日本人女性の話が紹介されていました。あり得ない話として片付けられているようですが、実はもうそうなりつつあるのかもしれませんね」
ドクター・ミネルバは頷き、少し考え込むような表情を浮かべた。
「ええ、そういうことです。まだ表に出ているのは、ほんの一部の例に過ぎません。でも近い将来、男性がいなくても子供を望めば妊娠する女性が増えるでしょう」
真由美は驚きの声を上げた。
「すごい変化ですね!でも、それなら男性も子供を望めば、自分で妊娠して産めるようになるんじゃないですか?」
ドクター・ミネルバは淡々と説明を続けていたが、その瞳には未来への期待と不安が入り混じった表情が浮かんでいた。
「ええ、それも可能になるでしょう。ただ、出産の苦しみに地球の男性が耐えられるかどうかは疑問です。その点では、今よりさらに進化した形の無痛分娩方法やロボットによる出産が一般的になるかもしれません。宇宙では、すでにそのような技術が定着していますよ。確か、イーロン・マスクがXでその話を紹介していました。彼の示唆することは実現可能な場合が多いですからね」
真由美はさらに驚きながら、短く息をのんだ。
「でもね、真由美さん。日本の神話を振り返ると、男の神が子供を産んだ例も見られます。多くの神々は明確な性別を持たないか、曖昧に記されているのです。そして、創造主も同じです。創造主はエネルギー体で、男性や女性という区別がありません。実際、中性的な存在ですよ」
ドクター・ミネルバは一息ついてから、視線を真由美に向けた。
「それに地球の高齢者たちを見ていると、皆どこか中性的に感じることがあります。長い人生を生きることで、性別を超越してしまうのかもしれませんね。それこそ、神に近づいているとでも言うのでしょうか」
「あ、それについては私も同じ考えです。アリサが病院に見舞いに来てくれた時に、その話をしました。入院中の老人たちを見て、そう感じましたから」
「そうだったのですね……実は、まだお伝えしていなかったのですが、惑星によって違いはあるものの、宇宙人には男性、女性、中性の3種類が存在します。ちょっと昔の話になりますが、私の星では男性が急速に女性化した時期がありました。そして、その逆も。さらに、男女ともに中性化する時期もありました。地球の進化は他の惑星に比べると少し遅れていますが、いずれ同じような変遷を辿る可能性が高いと私は考えています」
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第30話へ続く
