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異星人アリサと閻魔さまのトリセツ第56話(最終話)「閻魔さまのトリセツ」【連載小説】

時は2024年11月下旬、ドクター・ミネルバとアリサは再び新宿のカフェで話をしていた。

前回、二人が会ったときには二軒のカフェを巡り、コーヒーのカフェインで興奮し、話に花が咲く中でワインを飲みすぎてしまった。その結果、翌日二人とも後悔する羽目になった。

今回は飲みすぎないように気をつけることにした二人だったが、異星人でも話に夢中になると自制が効かなくなるらしい。ドクター・ミネルバはまだしも、翌日仕事のないアリサはまた羽目を外してしまいそうだった。

一杯目のコーヒーを飲み終えた二人はグレープフルーツジュースを頼んでいた。

アリサがジュースをストローで一口飲むと、思い出し笑いをしながら話し始めた。
「昨日ね、真由美から聞いた話なんだけど、真由美の旦那さんがアルティメイトPF16の防御対策として、勤務先にキーホルダー型のモスキート音が出る装置を持って行ったんだって。ほら、あなたが真由美に勧めたやつよ。noteの記事にしてもらったでしょう?それで、ちょっと面白い事件があったの。真由美はモスキート音が聞こえるけど、旦那さんは全く聞こえないらしいの。それで、自分が聞こえないもんだから通勤電車内でも会社内でも、ずっとモスキート音をつけっぱなしにしていたら、会社で誰かが叫んだんだって。『ピー音がすごくする!誰かが17000ヘルツの音を出し続けてる!』ってね。ちょっとした騒ぎになったらしいわ。真由美の旦那さんの会社は音関係だから、社内に音をテストする機材があって、モスキート音を調べられたってわけ。それで、慌てた旦那さんがモスキート音のスイッチをすぐに切ったって話よ。ガハハハハ……笑えるでしょう?」

それを聞いたドクター・ミネルバも手を叩きながら大笑いした。
「アハハハハ……まあ、そういうことはあり得るわね……アハハハハ……だけど、モスキート音はすごく有効よ。案外いろんなウイルスに使えるもの。今後アルティメイトPF16以外に怪しいウイルスを流行らせる計画があるかもしれないから、一応持っておいたほうがいいと思う」

「私もそう思ってるの。で、ええっと……ちょっと小耳に挟んだんだけど、エ〇ラ菌ってヤバいものが東京にあるわよね。あれ、拡散させるつもりなのかしら?アフリカ人を日本に移住させる計画が裏で進められているけど、日本に既にある菌とアフリカからのダイレクト便をごちゃ混ぜにして流行らせるとか?」

「アリサ、それくらい計画しているってこと、あなたも知っているでしょう?でもね、月星人がトランプを助けたじゃない。一瞬だけ自転の速度を変えてスナイパーの銃弾をずらしたところを見ると、そう簡単に闇側の計画は進まないと思うわ。月星人が地球を援護することに決めた以上、いくらエリートが多い闇側でも対抗できないもの」

「ま、そりゃそうよね。私だって月から汚物とか投げられて酷い目にあっているし……ホント、月星人のえげつなさやイケズっぷりは十分知ってるつもりよ」

「そうよね……ホホホホホ。それで、先日、銀河連合からのメールにね、ある会社のパンデミック計画のドラフトをレムリア人が霊視したって書いてあったのよ。恐らく来年にはワクチンのキットの発注を大量にかけてくると思うわ。今は米国でやるのは無理だから、多分、中国か日本国内で発注するでしょうね。今、宇宙銀河連合の関係者がその会社を見張っているんですって」

「なるほどー。ただ、来年流行らせようとしても、その時誰が日本の総理大臣になっているかが重要よね。石破さんって、あんまりパッとしないっていうか……。モンゴル系っぽい顔立ちだから、それが人気のない理由なのかしらね。で、スンズローなら、どうなるか分からないか……。でも、もし高市さんがなれば愛国心がありすぎて、パンデミックより中国とドンパチをやりかねないかも。でも、トランプが1月下旬に大統領に復帰するから変わるわね。何といっても彼は月星人の推しだからさ」

二人はグレープフルーツジュースを飲み干すと、赤ワインを注文して飲み始めた。

気分が良くなったアリサはドクター・ミネルバに質問した。
「さ~て、ミネルバ、今、私が一番欲しいものって何だと思う?」

すると、ドクター・ミネルバは余裕の笑みを浮かべながら答えた。
「フフン、閻魔さまのトリセツじゃないの?」

「ご名答!さすがミネルバね。でも、どうしてわかったの?」

ドクター・ミネルバは笑いながら返した。
「あなたはわかりやすい人よ。欲しい物が顔に書いてあるもの」

アリサはミネルバの言葉にウケて、カフェに響き渡るような大笑いをしながら言った。
「ガハハハハ……私、アレをどうしても手に入れたいのよ。真由美は付箋の文字だけを見て、本文は読んでいないって言ってたわ。それに、やり直しゲートに押し込まれた後、トリセツが自然消滅しちゃったとも言ってたの」
彼女はさらに熱を込めて語り続けた。  
「アレには天界での暮らし方とか、いろんな秘密が書かれているはずなのよ。たとえば、天界のクラス分けなんて面白そうじゃない?もっと詳しく知りたいのよ。きっと、どこかの厳しい道場の覚書とは全然違うものだわ。だって、閻魔さまはお優しい方なんだもの。でもね、下界で快適に生きるヒントも載ってるかもしれないのよ。それがわかれば、下界と天界で妙なハーモニーが生まれて、異次元の世界が新しく生まれるなんてこともあるかも。あ~あ、閻魔さまのトリセツをどうにかして下界に持ち帰りたいわ」 

アリサの夢見るような言葉に続いて、ドクター・ミネルバが笑いながら言った。
「なに言ってるのよ、アリサ。あなたこそ閻魔さまのトリセツそのものじゃない。閻魔さまから冥界の秘密をたくさん聞き出して教えてもらったでしょ。あなた以上に閻魔さまを扱える人なんていないと思うわ」

そう言われて、アリサは少し照れながら、ワインを一口ゴクリと飲んだ。「ハハーン、まあ、そうかもね。ハハハ。でもさ、真由美って本当に本文を読んでないのかな。トリセツは持ち帰れなかったとしても、少しくらいは目を通してそうな気がするんだけど」

アリサの期待するような言葉に続いて、ドクター・ミネルバが意外なことを口にした。
「真由美さんは、閻魔さまのトリセツを持っていると思うの。まあ、持っていると言っても物理的なものじゃなくて、彼女の頭の中にね。今は忘れているかもしれないけど、彼女の脳は地球人にしてはちょっと特殊なのよ。一緒に過ごすうちに、どこか地球人っぽくない存在に近づいている気がするわ」ドクター・ミネルバは少し間を置いてから、言葉を続けた。
「真由美さんは、冥界から戻って来て変わったわ。彼女の脳は一度記憶に刻まれたものは、簡単には消えない仕組みに変わったというか……。ふとした瞬間に閻魔さまのトリセツの中味を思い出すこともあると思う。でもね、真由美さんって意外と慎重なところがあるの。だから、私にもアリサにも、そう簡単には話してくれないと思うわ」

<完>

長い間お読みいただき、本当にありがとうございました。



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