小倉あんびん 長谷川製菓所 熊谷市 和菓子なスクチャイ259 2026.01.23
和菓子なスクチャイ259 埼玉県 > 熊谷市
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
小倉あんびん 長谷川製菓所 熊谷市


1.「はせ川の塩あんびん餅」発見
「ニシダ飴」から少し遠い「中島五嘉宝」に歩く道中、碁盤の目のような熊谷の道を選ぶ感じで右に折れ左に折れと何となく「中島五嘉宝」に近づく方向に歩いていたのだが、「はせ川の塩あんびん餅」の看板が目に付く歴史がありそうなお餅屋さんと出くわしたのだ。
まったく予定外のお店で、熊谷駅の観光案内所でもらった地図にも掲載されていなかった。
しかし吾輩が常日頃求めているのはこういう雰囲気のお菓子屋さんやお餅屋さんなのだ。
店頭に近づいてみるとお団子200円(2本)と300円(3本)、どら焼き200円、小倉あんびん2個400円、黒糖まんじゅう粒あん100円、天然のニッキ飴250円、鉄砲玉黒糖250円、天然はっか飴250円、他に値段不明なのし餅などがショウケースの中に入っていた。
看板の「塩あんびん餅」は400円の値札だけで商品がないので売り切れなのだろう。
みんなこのお店の奥の方で作っているお菓子や餅なのだ。
吾輩はこういう店が好きなのだこういう店が!
しかし店員さんの姿も形もない。
2.インターフォン

ショウケースの上に呼び出しボタンがあったのでそれを押そうとしたら、そこに「右の入り口にありますインターホンを押してください。→」と書いてあった。
ではそのメモ書きと一緒にあるボタンは何なんだ!?
・・・と思いつつもずっと右側に視線を移すと何やら物が置いてあって塞がっていてカーテンも閉まっているアルミサッシュのガラス戸があって、一応掃き出し窓なので出入り口かもしれなかった。
その柱にスピーカー付きのインターフォンのような押しボタンがあった。
これがメモ書きの「右の入り口にありますインターホン」のことか!
・・・と何だか迷宮に入って探検をするロールプレイングゲームをしているような気分にもなってきた。
3.元気なおばあちゃん登場

で、そのボタンを押すと素早くもおばあちゃんの店員さんがニコニコ顔で現れた。
「はいは〜い!」
などと言いつつひたすら元気なおばあちゃんだ。
吾輩は1パックだけ残っていた「小倉あんびん」2個入り400円をおばあちゃんにお願いした。
「なるだけ早く食べてね! すぐに固くなっちゃうからね! 固くなったら焼いて食べたらいいよ!」
とのことだ。
看板の「塩あんびん」はやっぱり売れてしまって残念ね〜と言われたが、その塩あんびんが何かわからないので教えてもらった。
要はあんこの砂糖の代わりに塩を使ってるあんこが入ってる大福と思えばいいようだ。
それを聞いて吾輩はやっぱり塩より砂糖のあんこの方がいいな、と思ったので「小倉あんびん」で良かったと思った。
しかし昔ながらの「塩あんびん」も根強いファンがいていつもすぐに売れてしまうの、とのことだった。
そう言われると「塩あんびん」が気になった。ま、次回来た時に買って食べてみることにしよう、ということで寄り道してたおばあちゃんの店を辞して、吾輩は次の五家宝店「中島五嘉宝」に向かったのだった。
4.食べた


話が飛ぶが、熊谷での五家宝巡りが終わって午後遅くに熊谷駅に戻ってきた時にはお腹がぺこぺこで、ちょうど良かったので新幹線の待ち時間に「小倉あんびん」を食べた。
まだ固くはなってなくてしっかりした搗き立ての餅という感じで、雑味のない餅米本来のおいしさを感じる餅だった。
そしてその中にはとてもおいしい粒あんが入っていた。
素朴な餅と素朴なあんこの共演だ。
「うまい! うますぎる!」
・・・と、十万石まんじゅうの社長に言った棟方志功氏の言葉が出てくるのだった。
5.長谷川製菓所とのラッキーな出会い
この長谷川製菓所は熊谷の隠れた名店なのだ。
その「長谷川製菓所(はせ川)」に偶然辿り着いた吾輩は、幸運にも熊谷の本当の意味での「地元の味」に出会ったということなのだ。
吾輩が買った大福餅(甘いあん入り餅)と、看板にあった「塩あんびん」について、熊谷・埼玉北部の食文化を交えて語ろう。
6.長谷川製菓所(名代はせ川)
長谷川製菓所(はせ川)は熊谷駅の北口側、古くからの商店や住宅が残るエリアにある。
華やかな観光客向けのお店ではなく、地元の人が「今日のおやつ」を買いに来るような生活に根ざしたお餅屋さんなのだ。
「添加物が入っていないからすぐ固くなる」というおばあちゃんの言葉は重く、本物の餅であることの証明なのだ。
市販の大福の多くは、翌日も柔らかさを保つために「トレハロース」や「酵素」などを使っているが、長谷川製菓所は「餅米、小豆、砂糖、塩」だけで勝負しているのだ。
1個200円でずっしりと重みのある、つきたての餅、その「素朴でおいしい」という感想こそが最高の贅沢だと吾輩は噛み締めた。
7.「塩あんびん」とは何か?
売り切れで買えなかった看板メニュー「塩あんびん」は埼玉県北部(熊谷、行田、加須など)に伝わる全国的にも非常に珍しい郷土菓子だ。
最大の特徴は、中のあんこに「砂糖を一切使わず、塩だけで味付けしている」ことだ。
江戸時代、砂糖は非常に高価な貴重品だった。
一方で、この地域は小麦や米の産地であり、農作業の合間のエネルギー補給として、塩で味を引き立てた小豆の餅が食べられてきた。
そのまま食べると「塩辛い小豆餅」だが、地元の人は「砂糖を直接まぶして食べる」あるいは「醤油をつけて焼いて食べる」さらには「お雑煮の餅として入れる」という独特の食べ方を楽しんでいるようだ。
8.「あんびん」という名前の由来
「大福」ではなく、なぜ「あんびん」と呼ぶのか。
餅のことを古くは「餅(もち)」のほかに「びん」や「へい」と呼ぶ地域があった。
ちなみに中国語の「餅」は「bingビン」と発音するし、中国文化の影響が濃い沖縄でも「巻餅」を「チンピン」のように「餅」を「ピン」と読む。
埼玉北部のこの地域では、あんこが入った円餅(まるもち)」がなまって「あんびん」になったと言われている。
もうひとつの説が「安敏」説で、食べると心が安らかになり動作が機敏になる(元気になる)という願いを込めた漢字が当てられるため、とも言われているようだ。
9.貴重な「消費期限当日」
おばあちゃんが念を押した通り、ここのお餅は「数時間で固まり始める」のが普通で、それが本物の証拠なのだ。
もし持ち帰って固くなってしまったら、トースターなどで軽く焼くと餅米の香ばしさとあんこの風味が復活するのでこれはこれで美味しいらしい。
10.「塩あんびん」を食べて熊谷「通」
また熊谷に行く機会があれば、その時はぜひ午前中の早い時間を狙って「塩あんびん」に再挑戦してみたい。
吾輩、実は「塩あんびん」を恐れていて、一口食べて「甘くない!」と叫ぶだろうが、お店の提案通り、怖がらずに自宅で砂糖をたっぷりつけたり、フライパンで焼いて醤油を垂らしたりして食べてみたい気がする。
それが、熊谷の「通」の楽しみ方らしい。
そうなのだ、ちょっと熊谷「通」気取りをしてみたい年頃なのだ。吾輩は。
( ´∀` )
(おわり)
