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タンゴを踊るには何人必要?

二人ですよね、普通。いくら仲良しでも、三人で踊ろう、とかはミロンガダンスパーティーではない😅。もちろん、ダンスパフォーマンスの場合はその限りではなく、三人以上のダンサーがフォーメーションを目まぐるしく変えながら踊ることもよくあります。
(タイトルイメージ:German Cornejo Dance Company

パフォーマンス、それも劇場で一般のお客さんを相手にする公演で踊るダンサーたちの世界は、ミロンガで踊る人たちの世界とかなり違います。まず身体能力が違う。ミロンガで踊る人たちは素人が大半なので、比べる方がおかしいといえばそうですが、パフォーマーたち、まあ体幹強くて、回転はぶれないわ、動きは大きいわで見てて惚れ惚れ😍。たいていのパフォーマーは、タンゴ、フォルクローレに加えてコンテンポラリー、ジャズ、バレエなども踊れ、多彩な舞踏・演劇技術を持っています。(それを支えるアルゼンチンの舞踏教育についてはこちら。)

したがって、彼らはタンゴ内のスタイルの違いなどモノともしません。ヌエボスタイルの是非をめぐって論争があった時も、彼らの反応は「(ヌエボも)踊れるよ」で、そうよね、ダンサーは踊れてなんぼよね! と論争不毛な叩き合いにうんざりしていた私も大いに共感したものです。

彼らが踊るパフォーマンスは大まかにいって二種類、観光客向けのショーとダンスカンパニー舞踏団の公演です。観光客向けのショーは、タンゴの歴史や有名な音楽(ラ・クンパルシータとか)、時にはフォルクローレなどもを織り交ぜた、誰が見ても楽しめる内容になっていて、そのバラエティー的性格のせいもあってか、どこのタンゲリアタンゴショーレストランでも構成にあまり変わりはありません。

一方、ダンスカンパニーの公演では、エンターテインメントだけでなく、タンゴの「ダンスとしての可能性の追求」も俎上にあがります。カンパニー、といっても常設のものは少なく、プロジェクトごとのダンスグループみたいなものがほとんどですが、それでもダンサーたちは、才能ある振付家・芸術監督の下で新しいことにチャレンジしたい、思いっきり踊りたい、とツテを辿ってはオーディションにもちこみ、結果に一喜一憂しています。

タンゴのダンスとしての可能性を追求する、というのはいろいろな人がいっていますが、タンゴでなくなってしまわない範囲で、という暗黙の前提条件をどうとらえるかで(神聖不可侵、更新可能、そういう前提自体をしない等)創作へのアプローチも変わってきます。

また技術面では、ハイリフト、エアリアルなど他のダンスのテクニックのみならず、ワイヤ―吊り上げなどアクロバティックス系の装置を使った動きなども使われます。タンゴのパフォーマンスはある意味ミュージカルなので、ミュージカルで使われるテクニックはほぼすべて使われると考えていいと思います。

アルゼンチンタンゴのパフォーマンスというと、今でも二十世紀末の大ヒットショー『Tango Argentino』のイメージが強いので、演出ではその「標準」イメージ(アールデコ風、メランコリック、男と女、キラキラのセクシードレス、ポマードで固めた髪型など)をどう扱うかが一つのポイントになります。全く別のイメージ世界を展開するとか(ギャングスタ風、バリオ・ノスタルジックなど)、本歌取り・パロディー化するとか。また、ダンスと音楽のバランス、ストーリー性をどこまで持たせるかなど、演出家が考慮する要素は沢山あります。

2005年タンゴ・ワールドカップのチャンピオンでもあるヘルマン・コルネホのダンスカンパニー(German Cornejo Dance Company)は、アルゼンチンタンゴのいろいろな方向性を試しているグループの一つで、来日公演もしているので、実際のパフォーマンスをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。ご参考までにいくつか映像をあげますと(少し前の映像ですが)America's Got Talent! に出演した時のビデオでは、タンゴだけどただのタンゴじゃないよ、と意気込むダンサーたちが熱い。観客は、タンゴなんか見たことないヨ、でもなんか面白いもの見せてヨ、という感じなのですが、さすがアメリカ、ノリがよくて、それに反応してダンサーたちのテンションもどんどん高くなり、脚なんかぶんぶん回って、ひゃ~、って感じです。

アルゼンチンのTVシリーズ La Hora del Tango でも(ほぼ)同じ振り付けの Barrio De Amor を見ることができますが、こちらの観客はアルゼンチン人、タンゴをよく知っているせいか、あれまあ、面白いもん見せていただきましたワ、って感じの反応で、ダンサーたちも心なしかお行儀いいです。同じ演目でも観客や場所でこんなに違うんですね~。

ちなみに La Hora del Tango はタンゴを様々な角度から紹介したTVシリーズで、他にも、不条理劇を思わせる Ollantay Rojas の Tango in Blue とか、TangoBA 2024の閉会式でも踊られた Leonardo Cuello(この人は映画『ラストタンゴ』の振付でも有名)の Domingoとか、いろいろなパフォーマンス作品が紹介されました。

劇場でのパフォーマンスはダンサー以外にも多くの人が関わる大変な作業ですが、関係者の情熱が続く限り、タンゴダンスの可能性への挑戦は続くことでしょう。見る方は(相変わらず)これはタンゴだとか違うとか、かまびすしいと思いますが、パフォーマーの方々には、めげずに頑張っていただきたいと思います🌹 そんな思いも込めて、最後にもうひとつビデオをご紹介します。……これはタンゴ🤔? タンゴじゃない😒? それとも、そんなこと関係ない?
©2024 Rico Unno, CC BY-ND


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