買わない。迷わない。マイルールのあるごはんしたく /紫吹はるさん
3月6日(金)に新刊『台所には薬箱とスパイスがあるといい』を発売します。こちらを記念して、さまざまなライフスタイルやお仕事の方々10名に、ごはんしたくについてインタビューする連載企画をはじめました。
第1弾となる今回は、2025年note創作大賞ベストレビュアー賞受賞者である紫吹はるさんにお話をうかがいました。
紫吹はるさん プロフィール

2025年note創作大賞ベストレビュアー賞受賞。
『批評ではなく感想を。点数ではなく温度を』をモットーに色んな媒体で本を紹介しています。
言葉に温度を持たせて、他人に寄り添える人でありたいです。
凛花:
はるさんにこの企画への参加を依頼したきっかけは、フードエッセイの素晴らしさです。
私は去年、『月刊tote』という雑誌風のZINEを毎月noteに載せていました。今回の企画もそうなのだけれど「私のこと」だけを紹介すると、いろんな人が取り入れるのはむずかしいと感じていたんですよね。そこでさまざまな方から暮らしにまつわるエッセイを募集していて……
はるさんが書かれたお味噌汁のエッセイが大好きで、すごく印象に残ったんです。ひとつの料理にたくさんの工夫をしているのが伝わってきたので、以前からお話をうかがってみたいと思っていました。
▼はるさんの「お味噌汁」のエッセイはこちらで読めます。
夫婦ふたり分のお弁当や夜ご飯をつくるのが主な自炊タイム

凛花:
はるさんは、どんな環境でお料理をされていますか? お仕事や家族構成など、差支えのない範囲でお聞きしたいです。
はるさん:
在宅での執筆業。夫婦二人暮らしなので、基本的に平日のお弁当と夜ご飯を作っています。二人とも朝食は無しです。
夫婦ともにお腹が弱く、脂質控えめな食生活を心掛けています。
週に一回どこかで休むタイミングを入れています。外食やお惣菜などです。
21歳での結婚を機に、自炊をはじめる
凛花:
はるさんの自炊歴について教えてください。
はるさん:
本格的な自炊を始めたのは21歳で結婚をしてからの5年間です。
小学生の頃から実家でお手伝いはしていました。
凛花:
21歳でご結婚されたのですね。私も23歳で結婚したけれど、20代前半だとやや早いほうですよね! 周りの友人たちも結婚していなかったり。
私自身は当時、料理のことを相談できる相手がいなくて困っていたのですが……はるさんは、日々の自炊や料理本をとおして料理を覚えたのでしょうか。
それとも、料理教室などへ通われましたか?
はるさん:
料理は、実家にいたころに覚えました。
実家の方針で、小学3年生になってからは、土曜日・日曜日の夕飯を母と一緒に作るのが決まりだったんです。妹と弟も、小学3年生になってから、やっていました。
凛花:
すごい……! ご実家の方針なのですね。
はるさん:
7人家族だったので、もうとにかく作るものの量が多くて。子どもの頃って見たいテレビ番組とかも多いじゃないですか。それを見ないとクラスで話についていけないのに、その時間私は料理をさせられていて、すごい文句ばかり言っていたのを覚えています(笑)
凛花:
ふふ、たしかに……。私は逆で、自由に過ごせたけれど、料理はさせてもらえなかったです。子どもたちが「作りたい」っていうんですけど、自分でやったほうが早いんですよね(笑)
はるさん:
でも結果的に、その時間が役に立ちました。
高校を卒業するまで続いたので、色んなものを作ったし、三兄弟の長女なのですが、母の日や父の日などは、子ども3人だけで全部の料理を作るとも決めていました。
凛花:
すごい! フルコースですね。お母さんのごはんしたくスタイルと似ているなあと思うことはありますか?
はるさん:
母は、大さじ小さじなども計らない人だったので、私もそれを引き継いでいます。大さじ小さじスプーンが家にありません。
結婚して初めて作った料理がサバの味噌煮で。もちろん母のように上手くはできないんですけど、調味料の比率とかは、頭の中に叩き込まれていました。
その時初めて感謝しました(笑)
そこから自分で、生姜感を強めにしたり、自分の味にアレンジしています。
凛花:
はるさんは、すでに「自炊のベース」ができ上がっていて、本格的にはじめたご結婚後からの年数を考えるとすごい……! と思っていたのだけれど、お母さまの "仕込み” があったのですね。家庭の味がすこしずつできていく感じって、わくわくしますよね。
買い出しを減らし、迷わない工夫を大切に。
凛花:
その日つくるものは、どんなふうに決めることが多いですか?
はるさん:
7日間のうち、週に3日をお魚、他2日はお肉にすることが多いです。お弁当がいらない金曜日はお魚で固定しています。
1週間分の食材を購入して冷凍しています。先ほどもお話したように、週のうち1日は外食なり、お惣菜なりにしていますが、それ以外の日はあるもので作ります。なるべく買い物に行かなくて済むように。
凛花:
なるべく買い物に行かないことが、はるさんの工夫のコアなのですね。1週間分の食材は、たとえば「野菜をこれくらい」「お肉をこれくらい」といったような決め方があるのか気になりました。
はるさん:
買い出しには楽天西友ネットスーパーを使っています。日曜日の朝に届くようにしていることが多いです。
お肉は鶏ひき肉を2パック・豚ロースを1パックが基本で、たまに安くなっているものがあるとそちらに変更したりします。
お米を買ったりと、イレギュラーな出費ももちろん多いです……。
野菜は、そのとき訳ありでお買い得だったりするものを購入して、合計で8000円いかないようにしています。そのとき安いものを買いますが、野菜は基本冷凍できることを知ったので、割と多めに買って、冷凍してお味噌汁に放り込んでいるかもしれません。
凛花:
野菜の冷凍いいですよね! 私もやってます。
ちょっとネタバレになるのですが、『薬箱とスパイス』の原稿は、じつはインフルエンザに罹患したときに書いているんです。買い出しにずっと行けなくて冷蔵庫が空っぽ。でも、冷凍庫の野菜を使ってスープを作った話を書きました。
私は飽きっぽいから(笑)しっかり計画を立てるときもあれば、気分で買うときもありますが、やっぱり買い方にはマイルールを持っていて、冷凍前提で購入しています。ダメにしにくくなるのでちょっと罪悪感がなくなりますよね。
ちなみに、直近ではるさんが買った野菜もお聞きしたいです。
はるさん:
例えば今週だと、なすが安くて。規格外の不揃いなすなのですが、2キロ買いました(笑) 後は、白菜1/4カットが二つ。キャベツが二玉。水菜が二袋。
にんじん・じゃがいも・玉ねぎ・ミニトマト・小松菜・冷凍ブロッコリー・冷凍かぼちゃは常に切らさないようにしています。
凛花:
はるさんは「スタメン野菜」もしっかり固定されているのですね! ちなみにはるさんは、どんなメニューを作ることが多いのでしょうか? レシピ探しにSNSなどはご覧になりますか?
はるさん:
冬場だったら、腐りにくいのでカレーとかシチュー・お鍋も良く作ります。迷ったり探す時間がもったいないので、料理系のSNSは基本見ません。
はるさんの薬箱は、確立された迷わないマイルールだった。
凛花:
はるさんの料理における「薬箱」について教えてください。
ここでいう「薬箱」というのは料理を「ラク」にする工夫のことです。
はるさん:
コンロが一つしかないので、いかにレンジで副菜を作れるか……にかけています。
凛花:
ああ……わかります。関東に住んでいたころや、ひとり暮らしをしていたころは特に悩んでいた部分です。レンジでつくる副菜の具体例をぜひ教えてください!
はるさん:
副菜は、パターン化しています。
◆赤色が足りないとき
玉ねぎスライスとミニトマトに、かんたん酢と麺つゆ・ブラックペッパーでなんちゃって、マリネ。分量は全て適当です。
◆緑色が足りないとき
冷凍してある小松菜をレンチンして鰹節とお醤油で、5分でお浸し。
◆なんとなく色鮮やかにしたいとき
紫キャベツと人参をピーラーで剥いて、混ぜる……。
凛花:
紫キャベツ、買ったことがないかも!
想像しただけでぱっと鮮やかな食卓が目に浮かびました。
はるさん:
ほかにも、大根とツナのサラダ。水菜とオクラの塩昆布和え。セロリとじゃこの塩麹和え……。簡単なものしか作りません。
味が決まらないときは、とにかく鶏ガラスープ+白だし。塩昆布+めんつゆ。自分の中で、パターンを決めています。
凛花:
私、スープ作りの味つけは「鶏ガラスープ+白だし」なんですが、和え物でその組み合わせはやったことがないかも……。やってみよう。
ここまでお話をうかがっていて、はるさんはとにかく「マイルール」がしっかり決まっているように感じられました。
こういう仕組み化、私も大好きなので聞いているだけでもわくわくします。
レンジ調理はどんなふうにされていますか?
はるさん:
レンチンできるボウルを使っています。
それをそのまま食卓に出すときも。徹底的に洗い物を少なくしたいときと、盛りつけを頑張りたいときの気分で使い分けます。
凛花:
なるほど……。
話は変わりますが、はるさんが『tote』に応募してくださったお味噌汁のエッセイ。あの作品が本当に大好きなんですよ。
私は組み合わせを考えるのが苦手というか、マンネリ化しやすいです。ちょっと変わった組み合わせだと家族(子どもだけじゃないですよ)が食べないので……。
でも自分では定番ばかりだと飽きちゃうというか。はるさんは、あらかじめ固定したり、考えたりしているのでしょうか?
はるさん:
お味噌汁は基本的になにも考えず、とにかく色んな野菜を突っ込みます。汁というより温野菜になっています。
凛花:
汁物でたっぷりの野菜をとるイメージなんですね!
季節の食材を、シンプルな調理法でらくに楽しむ
凛花:
はるさんの料理の「スパイス」は何ですか?
ちなみにここでいう「スパイス」は料理を「楽しく」する工夫のことです。
はるさん:
家の近くに八百屋さんがあるので、そこで季節のものを買うとわくわくします。たとえば、むかごの炊き込みご飯。
凛花:
むかご! 見かけたことはあるけれど、買ったことがないかもしれません。
はるさん:
春だったら、アスパラガス。新たまねぎ。
季節のものは、焼いたりレンジで蒸したりして、わさび塩で食べるのが好きです。
オーブンのまま出すと、パーティー感もあって目からも楽しめます。
凛花:
旬のものってわくわくしますよね。
私も八百屋さんや産直が大好き。はじめてのものって、買ったあとでレシピを調べることが多いのだけれど、はるさんのシンプルな調理法も素敵だなあ。
わさび塩、試したことがないのでやってみたいです。
一番幸せなのは「おいしい」って食べられること
凛花:
自炊をはじめたころのはるさんご自身に伝えたいことなどはありますか?
料理について、今あらためて思うことがあればお聞きしたいです。
はるさん:
毎日毎日完璧に、一汁三菜を目指そうとしていました。
でも、大丈夫。今は一汁一彩の日もあるけれど、おいしいって食べられるのが一番幸せです。
もっと手を抜いて良い。
もっと冷凍食品に頼って良い。
母の残像を追いかけて泣いていた私に伝えたいです。
凛花:
はるさん、ありがとうございました!
若くしてご結婚されたはるさんが、自炊をするたびにどれほどの工夫を重ねてきたのだろう……。そう思うくらい、すでにしっかりとしたマイルールが確立されていました。
もちろん、ご実家で培われたベースの自炊力もあるのでしょうが……少女時代と結婚後の努力の積み重ねで「あるもので作る」「買い出しを減らす」ことが可能になっているのだと感じました。
このインタビューはできることなら、新婚当初の私自身に読ませてあげたいなと思いました。勇気をもらえます。
最後に、なにか近況やお知らせがあればぜひ教えてください!
はるさん:
Kindle『透明なことば 不透明な生活』が絶賛発売中です。ぐらぐらと揺れて、おぼつかない足元で立ちながら紡いだエッセイ本。いま、苦しい人に届きますように。
凛花:
私も発売当日に買って読みました。
一度読み終えたけれど、真夜中のねむれないときに読みたくなります。タイトルの透明なことば、がしっくりくるんです。透きとおった美しいエッセイです。
はるさん、今回はお話をお聞かせいただき、ほんとうにありがとうございました……!
第2回は、管理栄養士の松丸奨先生にお話を聞きました!
紫吹はるさんの薬箱とスパイス


▼3月6日(金)に発売する私の新刊『台所には薬箱とスパイスがあるといい』についてはこちらから。

⬇️はるさんの記事をもっと読む
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みいただき、ありがとうございます♡