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『アルケミスト』ーラクダより馬と旅せよ|F美の読書感想文

「万物がひとつであること」
「夢を追い求める時、全宇宙が協力してくれる」

私がはじめて『アルケミスト』を読んだのは、まだ学生の時。
世の中はまだ、バブル景気に浮かれてた。

そんな時に、たまたま本屋で出会ったこの本、『アルケミスト』。
持っているだけでもちょっとオシャレなデザインで、なんとなくただの女子大生を格上げしてくれる気がしたわ。

この本、どこを開いても名言だらけ。
一言では言えないんだけど、
読む人によって、
どこを読んでも気づきが受け取れる。

若い頃の私は、
夢を追え」とか
前兆を信じろ」とか、
そういう本なんだと思って読んでた。

もちろん、そこに心を動かされた人もたくさんいる。
でも、不思議なことに、私の中に三十年残ったのは、それじゃなかった。

私が覚えているのは、ラクダと馬。

らくだは裏切る動物だ。彼らは何千歩歩いても疲れを見せない。そして突然ひざまづくと、死んでしまう。しかし、馬は少しずつ疲れてゆく。だからおまえはいつも、どれだけ歩かせてよいか、いつ馬が死ぬ時か、わかるのだ

アルケミスト

錬金術師が宝物を目指し旅する少年にいうセリフ。
砂漠では、ラクダは疲れを見せない。
だから、ある日突然、倒れる。

一方で、は疲れたら立ち止まる。
だから、長く旅を続けられる。

そのときの私は、「みたいな人が理想なんだ」と思った。
若い頃はね。
「私はみたいな人と結婚したい」
なんて思ってた。

疲れたら疲れたって言える人。
無理しない人。
ちゃんと休める人。

そういう人なら、長い人生を一緒に歩ける気がしたの。

でもね。
会うのはラクダばっかり。
疲れてるのに「大丈夫」。
苦しいのに「まだいける」。
倒れるまで頑張る。

もうね、砂漠を旅しなくても分かるのよ。
「あ、この人、ラクダだ」って。
そんな人、かっこいいんだけどね。

でもある日、というか最近ね、気づいちゃったの。
私がラクダだったのよ。

「疲れた」なんて言えない。
助けてなんてもっと言えない。

ちゃんとしてるね。
大丈夫だね。

そんな言葉を餌みたいに食べて、
また歩く。

そりゃ、目の前にラクダしか現れないわけよ。

私が「大丈夫」と言うから、
相手も「大丈夫」と言う。

私が疲れを隠すから、
相手も疲れを隠す。

ラクダ同士は、お互いを休ませられない。

でもね。

は、ラクダが苦手なのかもしれない。
疲れたと言わないラクダの前で、疲れたっていえないから。

そしてね。
最近もう一つ気づいたの。

ラクダだって、本当は「疲れた」って言いたいのよ。
ただ、
相手がラクダだと、言えない。

相手も「大丈夫」って笑うから。
だから自分も笑う。

お互い我慢大会。
砂漠って暑いわね。

でも、ラクダがなぜか馬になれた時、
そういう人が運命の人なのかもしれない、って。

そしてもう一つ気付いたの。

ラクダの前だと、ラクダらしくしなきゃって。
それって、目の前のラクダが言ったわけじゃないのよね。

もしかしたら、目の前のラクダは、
疲れたって言っても受け止めてくれたのかもしれない。

自分で立ち止まったら、にはなれたのかもしれない。

だから最近は思うの。

「疲れた」

って言える人は、
弱いんじゃない。

旅が長い人なのよ。

アルケミスト』を読んだ当時は、
この意味がわからなかった。

でも、
人生を少し歩いてから読むと、
この一節だけが、
まるで私のことのように思えた。

本は変わらない

変わったのは、
だった。
だから私は、
これからも何度でもこの本を読み返すんだと思う。


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