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♯1.2|四捨五入で170cmの男と心の身長を30cm盛った私|非常階段からのチェックリスト─ 給湯室のあいつらを、さらに裏から品評する

※昨日公開した『#1.1 給湯室漫才』の裏側で繰り広げられていた、もうひとつの会話劇です。

D子(27):地方から東京へ。理想と現実の狭間でもがく派遣社員。
E介(41):就職氷河期を生き抜いた、不器用な理系社員。
F美(55):バブルと恋愛の栄枯盛衰を知る元・恋愛勝者。

D子(27): ……なんなんですか、あの「178cmと170cmの8センチ」に対する異常なこだわり。たかが8センチで「シャングリラ」だの「178cmの尊厳」だの……

E介(41): (缶コーヒーのプルタブをチッと鳴らし、眼鏡の奥の目を細める)……8センチか。データ入力の誤差としては許容範囲外だが、

D子:こっちは手取り18万で、自分の背丈に押し潰されそうになりながら生きてるってのに。

E介:178って書いた瞬間、会う前の評価は変わります

D子:身長だけで?

E介:違います。人間は最初から数字で見られるという話です。170cmは「平均」だが、178cmは「上位15%以内」の限定領域だ。

D子:……嫌な話ですね

E介:嫌でも、そういう仕組みです

D子:ていうか、たった8センチですよ? たった8センチ盛っただけで「不法侵入」とか言って大騒ぎして。

(F美が扉を開けて、非常階段にやってくる)

D子:……私なんて、東京に出てくるとき、地元の友達には「東京で派遣だけど華やかな仕事して、洗練された都会の女になる」って、心の身長を30センチくらい盛って出てきましたよ。

F美(55):それは聞き捨てならないわね、D子。 ……30センチのサバ読みは、ただの粉飾決算よ。

D子: うぐっ……。

F美: でもね、あの給湯室の女たちが「たかが8センチ」に必死になって怒ったり笑ったりできるのは、まだ自分たちが「8センチの差」で一喜一憂できる市場の中にいると思ってるからよ。

E介: 確かに。市場における真の恐怖は、8センチサバを読んだ男と遭遇することではない。

D子:え?

E介: 自分が「178cmの男」からも「170cmの男」からも、そもそも一次スクリーニング(比較対象)すらしてもらえなくなることだ。

F美:……178cmの男に期待して、170cmだと知ってガッカリして、それでも「メジャーで測ったる」なんて笑い話にできる。……かわいらしいわね。

E介:就職氷河期で言えば、募集要項すら渡されない「サイレントお祈り」状態だな。

F美: そうよ。170cmか178cmかなんて、せいぜい「値札のつけ間違い」レベルの可愛いトラブル。本当の地獄はね、どれだけ自分を盛ろうとしても、誰もその値札(プロフィール)を見向きもしなくなることよ。

D子:ちょっと私、みぞおちが・・・

F美:……まあ、私も昔は、六本木のディスコで「180cm以下の男は人権なし」なんて冗談半分でマウントとってた側だから、あの女たちの「8センチへの執着」の浅ましさも、よく分かるけどね。

E介: F美さん、バブル期の高値を基準にするのは。あの時代の180cmはただのバブル通貨です。その後、市場価値がどう暴落したか……。

F美: (冷たい目でE介を睨む)わかってるわよ。……私が錦糸町のタワマンのベランダから近すぎるスカイツリーを眺めて赤ワインを飲んでるのは、そういうことよ。8センチどころか、人生の「見極め」を何メートルもサバ読みした代償よ。

D子:(投げやりに吐き捨てる)……あーあ。なんかもう、あの8センチに熱くなって大騒ぎできる給湯室が、バカバカしいのを通り越して羨ましくなってきました。
私なんて、自分のプロフィールを1センチ盛る勇気すらなくて、東京の市場価値の最下層で「買い叩かれてる」って怯えてばかりなのに。

E介:感情を市場に持ち込んでも無駄です。8センチの嘘に振り回されるのも、自分の価値に絶望するのも、根底にあるのは「完璧なスペックへの妄信」です。

D子:ところでE介さん、身長は?

E介:は?

D子:何センチですか?

E介:(ぼそっと)……170

D子:(にやりとしながら)あれれ?なんか、歯切れ悪いですね、さては・・・

E介:せ、正確には167.6。でも四捨五入したら170と言えます。

F美:(笑いながら)いいじゃないの、四捨五入したって。そこに何センチ違ったって、E介さんのこの性格が変わるわけじゃないんだから。

E介:なんですか、それは。そもそも、身長と性格に因果関係などありません。

D子: (スマホを取り出し、画面をタップしながら)……あ、でも。さっきB子さん、あの8センチの大騒ぎの最後に、なんか言ってたな。
8センチの隙間に・・・愛おしさがどうのこうの、とか……

F美: どうせ、8センチの嘘を許して「中身が大事」なんて「綺麗事」。嘘をついた男を『愛おしい』なんて笑って許せるのは、心が満たされてる奴らの贅沢(ポジショントーク)よ。

E介: (眼鏡をかけ直して)……定量的には同意だな。8センチの誤差を『愛おしさ』に変換するのは、論理的バイアスだ。僕が言うのもなんですが。

D子: ……そうなんですけど。そうなんですけど……。私、その「綺麗事」でもいいから、すがりたいです。東京で自分のちっぽけさに傷ついて、メジャーで正確な現在地を測られるのが怖くてたまらないから。

F美: (背を向けて階段を登り始めながら)……でもね、D子。あの二人みたいに「8センチの嘘」を笑いに変える漫才がしたいなら、ここじゃなくて給湯室に行きなさい。

D子: (スマホ画面を見つめたまま、ポツリと漏らす)……行けるわけないじゃないですか。あそこには、私の「盛った30センチ」を面白がってツッコんでくれる相方なんて、一人もいないんだから……。

E介:……僕には漫才は無理ですよ。

(遠くでカラスだけがうるさく鳴いていた)


🎤 **読者参加型企画|給湯室漫才**
コメント欄に寄せられたみなさんのリアルな言葉や想いを重ね合わせて、
A子・B子・C子が繰り広げるショート漫才を作っています。
作品を読むだけでなく、言葉を交わして一緒に笑える
もうひとつの給湯室」です。
📌 #1.1| 身長を8cm盛る男| 給湯室漫才①

『名前のないチェックリスト』
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『名前のないチェックリスト』全10話マガジン
☕ 読後の給湯室はこちら
24歳のA子、33歳のB子、43歳のC子が
本編を「女子の本音」で勝手に語っています。
給湯室のチェックリスト①はこちら
※給湯室をまとめて読む方はこちら
給湯室のチェックリスト全収録マガジン

🚬非常階段の反応はこちら
27歳・D子、41歳・E介、55歳・F美が
給湯室の会話に毒を吐いてます。
🔙♯0|非常階段からのチェックリスト
📚 非常階段シリーズまとめ
非常階段からチェックリスト全収録マガジン

✒制作ノート
📌①身長を5cm盛る人許せますか?|制作ノート①
📚制作ノート収録マガジン


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