破壊される洗濯物
妻が倒れてから──
家族のあらゆるものが、
崩れていきました。
──それは、
妻の服、娘の下着などの衣類。
私の洗濯によって破壊され、
傷ついていく家族の信頼。
これは、
洗濯物と格闘し続けて、
それでも諦めなかった
──私の不屈の記録です。
それは、妻がICUに運ばれてから、
まだ間もない頃の話──
妻は倒れる前。
料理と同様に、
私が洗濯をすることを
嫌がっていました。
私も自分が洗濯することで、
妻や子どもの服が、
ダメになる気はしていましたが。
妻が入院した当初は──
すべての家事を
私が担っていました。
病院では、
妻の洗濯を済ませ──
家に帰れば毎日のように、
自分を含めた家族3人分の洗濯が待っていました。
幸い、家には洗濯機とは別に、
ドラム式の"乾燥機"がありました。
洗濯が終われば、
そこに放り込むだけ。
翌朝には、
しっかり乾燥されているという。
──あとは畳んで、仕舞えば終了。
洗濯は家事の中では、
“楽な方”だと感じていました。
ただ、
それを担うのが──
"洗濯経験、ほぼゼロ"の、
私だったというだけの話で…
洗濯ネット? 柔軟剤? 漂白剤?
乾燥機にかけられない素材??
何のことやら…
私には、さっぱりでした。
それから──
私の洗濯により、
当時大学生だった長女の下着や、
ウールやシルクの衣類たちは、
見事なほどに、
原型を留めなくなっていきました。
セーターは、
Lサイズから“S寄りのMサイズ”へ。
ズボンは七分丈から“ほぼ膝丈”へ。
ブラジャーに至っては、
ワイヤーが曲がるか飛び出して。
白だった下着も、
色とりどりに染め上げられていきました。
『もう、私の洗濯しなくていいから!
マジやめて!』
と、長女がキレるのも、
いたしかたないことでした…。
──けれど、
私は諦める訳にはいきませんでした。
洗濯はいずれ、
退院した妻が帰ってきても、
やらなければならないことと
分かっていたからで。
それからも、
少しずつ、少しずつですが。
洗濯の回数を重ねていき、
私はその技術を向上させていきました。
乾燥機にかけるものと、
干すものをちゃんと分けたり。
柔軟剤や、
漂白剤を使いこなしたり。
ときには、
見つからなかった
靴下の片方が出てくれば喜んだりと。
洗濯を楽しみながらも、
失敗と発見をくり返しながら、
そのスキルを身に付けていきました。
それから間もなくすると──
私の洗濯に、
文句を言う家族はいなくなっていました。
振り返れば、
その毎日の洗濯が──
いつしか、
まるで主婦のように、
洗濯物を取り込む私にまで、
──成長させてくれていました。

破壊される洗濯物 【完】
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